『Beacon Pines』レビュー: バットエンディングは終わりじゃない
『Beacon Pines』とは、Hiding Spotが開発したアドベンチャーゲーム。
本作は、Xbox、PCでプレイ可能。私はXbox版をプレイ。
今のところ日本語版はないので、本稿のゲーム画像は英語版のものになっている。
かなり分かりやすい英語で、セリフや文章は自動で流れていかないため、日常会話程度の英語力でプレイ出来る。
本作の特徴や魅力、そして実際にプレイして感じた感想と各要素の評価をネタバレなしでレビュー。本作に似たゲームも紹介する。
画像はタップもしくはクリックすると拡大して見ることが出来ます。
あらすじStory
夏休みの初日
Beacon Pinesという町にあるお墓。
その前に佇む鹿の少年Luka。本作の主人公だ。
このお墓に眠るのは、彼の父親。残念ながら、6年前に亡くなったそうだ。
そこに、Lukaの大親友Roloが現れる。
今日は夏休みの初日だ。
Roloは、「俺、面白いこと思いついたんだぜ!」と夏休みを満喫する気満々だ。
Roloは、うっかりLukaの母親が行方不明である事実を口にしてしまうけれど、彼なりに励ましたいようだ。
そう、実は両親ともにいないLukaは、今はおばあちゃんに面倒をみてもらっている状態だ。
面白い計画
Roloの夏休み初日の計画は、町はずれにある倉庫を調べに行くこと。
今は廃れてしまったValentine家の会社の倉庫だ。
Sharper Valentine氏が起業した肥料製造業はBeacon Pinesの街が栄えるきっかけになったものの、とある事故が起こった後廃れてしまい、今はPerennial Harvestという会社が街で幅を利かせている。
そんな古い倉庫に何しにいくかというと、Roloは昨晩その倉庫の方で何か光るものを目撃したらしい。
LukaとRoloば探偵気どりで倉庫に忍び込もうとたくらむ。
とんでもない結末
ワクワクドキドキしながら倉庫に向かう2人だったけれど、Roloは道中でお姉ちゃんに「家の手伝いをしろ」と連れて帰られてしまう。
1人になってしまったけれど、LukaはRoloのために情報を得てきてあげようと1人で倉庫へ。
着いてみると、確かに倉庫では何か行われているようだ。
ところが、倉庫を嗅ぎ回っていたLukaは、うっかり黄色の防護服を着た何者かに捕まってしまい、2度と町に戻ることはなかった。
完。
え!ゲームが終わってしまった。
ではない。
ここから過去のターニングポイントを辿り、彼の別の未来をプレイヤーの手で紡いでいくことになる。
一見穏やかなに見えるBeacon Pinesに隠れた全く穏やかではない真実とは!?
ゲームの特徴Features
単語を集める
本作はNPCと会話したり、物を調べることで進行していくアドベンチャーゲーム。
特定の会話やイベントでCharmと呼ばれる単語が描かれたバッジを収集できる。
これをたくさん集めることが後述する本作の攻略の鍵を握っている。
できる限り色んな人に話しかけ、歩き回って怪しそうな物を調べていく。
別の未来を辿る
プレイ中には好きな時に物語を左右する分岐点に戻ることが出来る。
本作は、本に書かれた物語を読んでいるというスタイルで、その分岐点となる文章の空欄を上述したCharmの中から選んで埋める。
これによって文章の意味が変わり、Lukaの未来も変わっていく。
分岐は木の絵で描かれており、新たな未来が生まれる度に枝分かれしていく。
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各要素の評価と感想Rating
物語の面白さ
4.5
なんて可愛い獣人たちだ。
と思ってプレイし始めたら、突然のバッドエンディング。
しかも、かなり不気味な結末で「え、思ってたゲームと違う!」とびっくり(ホラーというわけではなく、奇妙な不気味さ)。
そこから分岐点に戻って物語を軌道修正していくんだけど、他のバッドエンディングも見ることになる(バッドエンディングで得られるCharmもある)。大体、どのエンディングもかなり不気味。
ネタバレになるので詳細は伏せるけれど、可愛く癒しの物語かと思いきや、なかなかのミステリーだ。
良い意味で裏切られた。
キャラクターの魅力
4.0
みんな可愛い。
見た目が可愛すぎる。きゅるーんとした瞳のモフモフ獣人たち。
でも、性格はそういうわけではなく、見た目が可愛いだけというヤツもいる。
本作は少年が主人公で町の秘密を暴くというあらすじで、1980年代の少年少女が主人公の映画のような雰囲気。
いじめっ子、いかにも怪しい大人、風変わりな転校生。
ドラマが盛り上がる個性豊かな面々が登場し、魅力的でありつつ全員怪しく見えてくる。
操作性
4.5
ほぼ移動と会話くらいなので、複雑な操作は一切なし。
主人公はダッシュ出来ないので、全体的にゆっくりした操作感。
でも、本作は急いで数秒を争うようなゲームではないので、気にならない。
テキストを読む場面が多く、ノベルゲームの感覚に近い。
難易度バランス
3.5
分岐によって悲劇の結末になっても、すぐに分岐点からやり直せる。
バッドエンディングになっても、ナレーションが「あらあら、これじゃダメね。では前の分岐に戻って他の未来を試してみましょ。」と言われるだけ。
何のペナルティもないし、バッドエンディングを経なければ進まないので、何も気にせず総当たりで結末を見るつもりでプレイすればいい。
逆に分岐で選択を間違えて手詰まりになるヒヤヒヤ感を楽しみたい人にとっては、物足りないと思う。
ゲームシステム
4.0
文章の1つの単語を変えるだけで、物語が激変するのが面白い。
しかも、まずはバッドエンディング続きにさせることで、真相を知りたくなる気持ちをくすぐるのが上手い。
突然突拍子もない展開になり、「え、なんでそうなるの?」と疑問がふくらむようになっている。
バッドエンディングによって疑うべき人物が少しずつ分かってくるので、分岐そのものが推理のヒントになっているという面白い仕掛けだ。
よくゲームでの分岐要素は後戻りできない選択として使われることが多いので、新鮮な感覚だ。
ちなみに、色んな結末を見た記憶はプレイヤーにしかない。
時間を巻き戻すと、Luka自身には一度見た結末に関する記憶は一切ないので、プレイヤーが上手く誘導していくことになる。
やりこみ要素
4.0
ゲーム攻略に必須ではないCharmも存在する。
色んなところを調べまわって様々なCharmを手に入れ、ちょっとしたリアクションの変化を楽しむのがやり込み要素だ。
引き出しや冷蔵庫など意外と細かなところまで調べられるし、分岐によってNPC一人一人のセリフもしっかり変わるので、あちこち歩き回ってみると面白い。
グラフィック
4.0
まるで絵本。可愛すぎ。
このグラフィックだけ見ると、『どうぶつの森』のようなほのぼのゲームだと勘違いする人もいるかもしれない。
細かく描き込まれていて、キャラデザインも1人ずつ凝っているし表情も豊か。
絵本ぽくもあるけれど、私は本作のグラフィックを見た時に「なんだか高級紅茶のラベルに描かれてそう」と思った。
なんというか、上品さも感じる可愛さってことだ。
サウンド
4.0
BGMは癒される曲調で、穏やかなBeacon Pinesの街並みに合っている。
ところが、上述したように本作は不気味な急展開も多い。
そんな時は、不穏な音楽が大きく鳴り響くので、脅かされる演出が苦手な方はご注意。
サントラはこちら
総合評価Summary
4.0
物語の魅力
ゲームプレイの快適さ
ゲームとしての面白さ
芸術性
良いところ
惹き込まれる物語展開
単語一つで大きく変わる分岐
可愛くクオリティの高いグラフィック
残念なところ
日本語版がない
(単語を使うゲームなので日本語化は難しそう?)
選択肢で迷うヒヤヒヤ感は少なめ
オススメな人
物語を楽しみたい
ゆったりプレイできるゲームを探している
芸術性高いゲームが好き
オススメではない人
英語の文章を読むのがかなり苦手
謎解きやバトル要素が欲しい
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とある少女の日記のページ上を歩んでいくアドベンチャーゲーム。こちらも言葉がゲームの中で効果的に使われている。プレイした際には、途中から泣き続けてしまった感動の物語。
Beacon Pines
バットエンディングは終わりじゃない
可愛いグラフィックが魅力だけど、不気味さもあるミステリーな物語が楽しめるアドベンチャーゲーム。 バッドエンディングを経ることでゲームを攻略していく仕掛けが面白く、とにかく物語に夢中になる。
Beacon Pines
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