『LISA The Painful』レビュー: このオジサンのパンチはとびきり痛い
女性がいない世界でオジサンがオジサンと繰り広げるヘンテコで残酷な『LISA: The Painful』をネタバレなしで、攻略のコツと各要素の評価を交えてレビュー。
本作に似ているおすすめゲームや関連作も紹介する。
LISA The Painful製品情報
タイトル | LISA: The Painful |
---|---|
開発元 | Dingaling Productions |
対応機種 | PS5, PS4, Nintendo Switch, PC |
ジャンル | RPG |
シリーズ | LISA |
本作はLISAシリーズ3部作の第2部にあたる。
第1部『LISA: The First』は本作の前日譚にあたる短編アドベンチャーゲームであり、PC向けに無料配信されている(日本語版はない)。
本作は、2012年に発売された第2部のアップグレード版となっている。
本稿は、Nintendo Switch版をレビューしている。
LISA The Painfulの攻略
ストーリー
ブラッドの過酷な人生
本作の主人公はブラッド。彼は過酷な人生を歩んできた。
弱いものいじめをする近所の乱暴者に殴られ、家は最悪な父親のせいでめちゃくちゃだ。心休まる幸せな瞬間はない。
でも、ブラッドの家には赤ちゃんがいた。最低な親父に面倒を見ろと言われていた赤ちゃんだ。
そう、赤ちゃんが「いた」のだ。でも、もう、いなくなってしまったのだ(前日譚でその事情が描かれている)。
そして、月日が経ち、ブラッドは盛大に禿げ散らかっていた。目の周りには影が落ち、強面なオジサンに仕上がっていた。
バディとの出会い
ある日、表情も瞳さえ見えない劇画調のブラッドは、赤ちゃんを拾った。なんと、女の子だ。
実は、本作の舞台であるオレイサは、女性が全ていなくなってしまった世界。もちろん赤ちゃんが産まれることもない。
この赤ちゃんはどこから来たのか、親はいるのか。全て謎だけど、ブラッドは幼馴染たちと共に赤ちゃんを育てることに決めた。
赤ちゃんはバディと名付け、人目を避けて、ブラッドは不器用だけど大切に愛情たっぷり育てた。
「今回は」絶対に失敗しない。ブラッドは、そう心に決めていた。
バディを助け出せ
ところが、バディがすくすくと育っていたある日のこと、バディがいなくなってしまった。
女性がいない世界はバディにとっては危険すぎる。悪い奴に誘拐されたのだろうか。
犯人が誰であれ、絶対にバディを救い出さなければならない。
ブラッドは、治安が悪すぎるヘンテコ野郎だらけのポストアポカリプスな世界へと飛び出して行った。
待ってろ、バディ!ブラッドが、いや、父さんが助けに行くぞ!
攻略のポイント
ブラッドの奇妙な旅路
本作は2D横スクロールでプレイするRPGだ。
分かれ道が多く、片っ端から探索してバトルを攻略して、先に進める道を見つけて進む。ワールドマップなどはなく、すべて地続きで進んでいく。
ブラッドは、1マス分なら上下にジャンプして高い足場へと進むことが出来る(ゲームが進行すると乗り物も登場する)。
一方、足場の端から飛び降りると、1マスより下の足場にも移動できる。しかし、下の足場が遠すぎると着地に失敗してダメージを受けてしまうので注意。下に足場がない崖から飛び降りてしまうと落下死し、一発でゲームオーバーになる。
各地にいるカラスに触れるとセーブできるので、ゲームオーバー時は最後に触れたカラスからやり直しとなる。本作にはオートセーブ機能はないため、逐次セーブをお忘れなく。
ただし、本作には分岐要素や取り返しのつかない要素があるため、セーブどころは見極めた方がいい。
ブラッドのオジサンパーティー
道中では様々なキャラがブラッドの仲間になる。会話するだけで仲間になったり、お金やアイテムを渡したり、バトルに勝利するなど、仲間への加入方法は様々だ。
ちなみに、仲間になるのは基本的にオジサンばかりだ。
バトルはターン制のコマンドバトルで、パーティーは最大4人で編成できる。
キャラごとに攻撃方法は異なり、ブラッド含め武闘派キャラは攻撃時にボタン押して連撃できる。特定の組み合わせで連撃するとコンボ技(スキル)を発動することもできる。
また、スキル使用時にはSPを消費するけれど、SPゲージではなくTPゲージを持つ者もいる。TPは、そのキャラが攻撃したり受けたりすることで溜まっていく。
武器や防具もキャラごとに異なり、ショップで装備を整えながら進むことになる。オーソドックスなRPGだ。
オレイサの歩き方
ゲームの基本的なシステムは上述の通りだけど、その他に知っておいた方がいい事項がいくつかある。
- テリー・ヒンツのヒント
- 最初に仲間になるキャラであり、彼が書き置きした最低限のチュートリアルが各所に残されている
- とある場所に、彼が執筆したヒント本があり、本作での状態異常や攻略情報を詳しく知ることが出来る
- 宿泊
- 焚き火や宿屋が各所にあり、眠ると全員の体力が全回復して全ての状態異常が治る
- 焚き火やテントでは一定確率で襲撃イベントが発生する
- 仲間が何者かに誘拐されたり、猛毒を受けることがある
- 仲間とのイベントが発生することもある
- パーマデス
- 特定のイベント(複数ある)では仲間がパーマデスとなり離脱する
- 装備品は残していってくれるけれど、本当に呆気なくパーマデスする
- より多くのキャラを控えとして仲間にしておいた方がいい
- ジョイ
- オレイサにはびこる危ないおクスリ
- ブラッド含め何人かの仲間キャラが使用経験あり
- 一定の距離を歩いていると禁断症状が自動的に発生して全ステータスが下がる
- ジョイを服用すると禁断症状は消えて、全ステータスが上がる
- しかし一定歩数経るとまた禁断症状が発生する
- オレイサにはびこる危ないおクスリ
記事はさらに下に続きます
LISA The Painfulの評価
物語の面白さ
世界設定から独特だけど、物語の展開はもっと独特。
とにかく両極端な物語だ。思わず吹き出してしまうふざけたブラックジョークに笑った次の瞬間には、強烈に凄惨な出来事を目の当たりにしてびっくりする。。
暴力的な場面は多く、本作のポップなピクセルアートグラフィックでも十分に胸糞気分が味わえる。
一方、ブラックジョークに走っている場面では、全力でふざけている。かなりブラックなネタが多いけれど。
物語は論理的に展開するのではなく、「え、今ここで全力でふざける!?」「え、本気でやっちゃうんだ?」という唐突な展開が多い。
でも作品としてちゃんとまとまっている。ジョークと暴力の混ぜ加減が絶妙で、暴力度高めのゲームにしてはカラッとした雰囲気だ。センスが良い。
常に次の瞬間に何が起こるか予想できず、怖いもの見たさで先に進む手が止められなくなってしまう。
ただ、前作含めセンシティブなエピソードも描かれているので、残虐な描写が苦手な方は心を強く持ってプレイを始めた方がいい。
キャラクターの魅力
本作のNPCにまともな人は誰1人いない。まともだったら逆に浮いてしまい、まともだという個性に変わるくらい全員しっかり変だ。
女性も子供もいなくなっているため、他のゲームでは類を見ないほどのおじさん度の高さも楽しめる。しかも、おじさん達は、それぞれ個性を1000倍濃縮して癖の強さを見せつけてくる。
どのおじさんも現実世界なら絡みたくないヤバいおじさんばかりだけど、共に旅するうちに愛着が湧いてくるから不思議だ。
野宿して仲間が誘拐されてしまった時、お金をかき集めて助けようとしている自分に驚いてしまった(助けなくても進行可能)。それくらいオジサンたちには妙な魅力がある。
そして、主人公のブラッドはほぼ無口で、何を考えているのか分からない無表情ぶりだ。
しかし、このブラッドの無表情さが、ヘンテコNPCへの無言のツッコミになっており、余計に笑える場面も多い。
ただし、過激な部分に目がいきがちではあるけれど、ブラッドの感情面は痛々しい。暴力度高めだからこそグッとくるブラッドの物語が味わえる。
操作の快適さ
操作自体は移動とコマンド選択だけなので分かりやすいし、特に操作性に問題はない。
しかし、ブラッドが躊躇なく身投げするので、崖の近くでは慎重に移動を操作しなければならない。
本当にスーッと身投げしてしまうので、これで何度かゲームオーバーになった。
少し気を抜けば身投げしてしまうというブラッドの精神状態を表しているのだろう。そういう仕様であり、これも本作の面白さの一部だ。ストレスに感じることはない。
難易度バランス
難易度は3段階から選択できる。私はノーマル難易度でプレイ。
本作は昔ながらのRPGなので、サポートは現代ゲームほど手厚くない。敵はちゃんと強くて、消費アイテムやお金(本作ではマグと呼ばれる)は溜まりにくい。
更に極め付けは、ジョイの禁断症状。これがどんな敵よりも厄介だったりする。
また、イベントで仲間がパーマデスすると、きつい状況に陥ることがある。しかし、助けようとしたらブラッドが代償を受けることもある。
誰かの命を天秤にかける時に、攻略のしやすさを求めるかどうかはプレイヤー次第だ。ゲーム攻略上でプレイヤーのモラルを試してくる恐ろしいゲームだ。
ゲームシステムの面白さ
2D横スクロールというのは少し珍しいけれど、基本部分はオーソドックスなRPGだ。
しかし、本作は物語の展開が突拍子もなく、そのとんでもない展開がゲームプレイにもしっかり影響するのが面白いところ。
予想の斜め上をいく展開ばかりだし、前触れもなく突然重大事件が起こって物語が分岐する。
しかも、ジョークのような展開でもキャラがポロッと死んだり、強敵に襲われる。野宿したらパーティーが壊滅することもある。
どれも笑えるけれど笑えない冗談でもあり、本気でヤバいゲームだ。ゲーム攻略でも物語上でも全く気が抜けない。
やり込み要素の楽しさ
どれだけ様々な展開を見るかが本作の面白いやり込み要素。
寄り道は意外と豊富にあり、たくさんのNPCが仲間になってくれる。それぞれ強烈なエピソードと共に登場するので、仲間を増やすのが攻略にも役立つ楽しいやり込み要素だ。
また、本作では難易度や選択肢によって違った展開が見れる。1回プレイするだけでも濃いゲームではあるけれど、周回プレイもおすすめだ。
グラフィックの芸術性
レトロなピクセルアートで描かれる。世紀末な雰囲気のポップさだ。
しかし、主人公の顔はゲームの主人公とは思えないほど険しいし、出血量も多いゲームで、暴力的な場面はちゃんと痛々しい。
また、登場人物たちはおじさんばかりだけど、その大量のおじさんの描き分けっぷりも本作の見どころ。
退廃的なおじさんが多く、色んなダメなおじさんの姿を堪能することが出来る。
サウンドの魅力
BGMもかなり独特。楽しい曲にも不協和音が混ぜ込まれていて、プレイしていると奇妙なメロディが耳に残る。
また、効果音がかなり大きめに鳴るので、大きな音が苦手な人は要注意(効果音も不穏な音が多い)。
ちなみに本作のゲームデザインやシナリオもアートワークもサウンドも、オースティン・ジョーゲンセンさんが全て担当している。
そのおかげでヘンテコさの方向性が一貫しており、完成度が高まっている。
サントラはこちら
本作と似ているゲームや関連作は更に下へ
LISA The Painfulレビューのまとめ
おすすめな人
- ブラックジョークが好き
- 分岐要素が好き
- 仲間と旅するRPGが好き
おすすめではない人
- 暴力的な演出やモラルを欠く表現が苦手
- 助言やガイドがしっかり欲しい
- 取り返しのつかない要素が好きではない
総合評価良いところ&残念なところ
- ブラックジョークと衝撃展開が上手く混在している
- 戦い方も性格もクセ強めな仲間たちと旅出来る
- 独創的な世界設定
- 前触れなく物語が分岐する(面白さでもある)
- 現代ゲームの便利さはない
LISA The Painfulが好きならおすすめなゲーム
関連ゲーム
LISA: THE FIRST
本作の前日譚が描かれる短編アドベンチャーゲーム。
本作とはゲーム性が異なり、バトルなどはない。
ブラッドの回想に出て来る赤ちゃんや父親との関係を知ることが出来る。
LISA: The Joyful
本作のその後の物語が描かれるRPG。
ゲームシステムは本作と近く、本作よりもボリュームは少なめで、三部作の結末が描かれる。
本作と合わせてパッケージ版『LISA Definitive Edition』に同梱されている。
似ているゲーム
MOTHER 2
少年少女が世界を救う名作RPG。
本作をプレイしたら、確実に『MOTHER 2』が頭に浮かぶはず。というくらい、強く影響を受けていると思う。
ただし、こちらは過激描写はなく、明るく元気で泣ける物語やセリフが魅力。
OMORI
感情の暗い部分も描く物語が好きなら、こちらもおすすめ。
引きこもりの少年が精神世界と現実を行き来して、自身の過去に向き合うRPG。
LISA: The Painful
© 2023 Dingaling Productions LLC
© 2023 Serenity Forge LLC
Published in Japan and Asia by Beep Japan Inc.
https://serenityforge.com/games/lisa-definitive-edition
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