『Mosaic』レビュー: 毎日同じことを繰り返すことの狂気
『Mosaic』とは、Krillbiteが開発したアドベンチャーゲーム。
ミニマルイラストとポリゴンが組み合わさったような独特なグラフィックが特徴。
本作は、PS5、PS4、Nintendo Switch、Xbox、PC、Apple Arcadeでプレイ可能。私はApple Arcade版をプレイ。
本作の特徴や魅力、そして実際にプレイして感じた感想と各要素の評価をネタバレなしでレビュー。本作に似たゲームも紹介する。
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あらすじStory
単調な毎日
ほぼ色のないモノクロなアパートの一室で目覚めるビジネスマン風の男。彼が主人公。
ダラリと起き上がり、ボサボサの髪を撫でつけ、機械のように歯を磨いて、ただただ仕事へ出かけていく。
通勤中には、彼と同じような会社に向かう人たちが大勢いる。みんな同じだ。
同じようなスーツを着て、同じように脇目もふらずゾロゾロと仕事へ向かう。
単調すぎる
男は会社に着き、仕事を始める。
仕事も単調だ。何をしてるのか、何のためになのか全然分からない。
スマホを見てみると、ただタップするだけのゲームアプリ、会社からの成績上げろという無機質なメールくらいしか入っていない。
何かに目を向ける
同じ毎日が続く。朝から晩まで同じ。そして、会社と自宅の間を往復するだけ。
ところが、ある日、通勤途中に美しい景色に足を止めた。
朝、歯ブラシをして唾を吐き出したら、口から金魚が飛び出てきた。
何だろう、これは。この感覚は。主人公は何かを感じ始める。
同じ毎日を繰り返して、このままでいいんだろうか。男の心の中に何かが芽生えてくる。
ゲームの特徴Features
何をするか、何もしないのか
操作は、ほぼ主人公の移動のみ。特に難しい操作やアクションはない。
ただ、手探りで、同じ毎日を繰り返したくない!と願って行動すればいい。
自宅では、「テレビを見る」「歯ブラシをする」など選択も登場するけれど、全てはプレイヤー次第。選択しなくてもいい。出勤前に身だしなみを整えなくてもいい。
ところが、移動していると、ほぼモノクロで静寂に包まれた世界の中に色鮮やかな光が見えたり、明るい音楽が聞こえてくることがある。
そんな時は、そっちへ向かって歩いて行けばいい。日常生活が変わる何かに出会えるはず。
訳の分からない仕事
主人公の仕事もゲームプレイの一部になっている。
蜂の巣状に広がる六角形をひたすら繋いでいく作業だ。
ルールがあるようで無いような。効率のいいやり方があるようで無いような。
とにかく、画面下部にある動く点が、画面上部の目標地点に到達するように、点が動く道となる六角形をつないでいく。
なんだかよく分からないミニゲームだ。しかし、実はこれがタイトルの『Mosaic』を理解する仕掛けになっている。
各要素の評価と感想Rating
物語の面白さ
4.0
ゲームの序盤は、全然意味が分からない。
さっきと全く同じことしてる?うまくプレイ出来てなくてフラグ立ってないから先に進めない?
しかし、こうした疑問を持つことが、このゲームの真髄だ。
これが、日常。現実の日常って、こんなもんだ。
それをゲームとしてプレイすることで、同じ毎日を繰り返すのって狂気じみていると気づく。そして、それを当たり前のように繰り返している他の人さえも恐ろしく見えてくる。
そんな日常を変える美しい景色に出会うと、「ああ、何かが起きてくれた!」とホッとする。
こうした現実にも通じる感覚を、セリフやテキストに頼らずじわじわと気づかせてくれる演出が上手い。。
キャラクターの魅力
3.5
主人公のなんともいえない表情。これが魅力。
単調でつまらない毎日なんだけど、具体的に不満や怒りの感情を抱えているわけでもなく、感情まで単調になってしまっている。
気持ちが読み取れない表情だ。
操作性
3.5
ゲームプレイは簡単操作なんだけど、操作感は必ずしも良くはない。
主人公はキビキビ動いたりしないし、走ったりもしない。
選択肢も少ないし、口から飛び出た金魚との会話で選択肢を選ぶくらいしか自由度もない。
つまらない!そう、本作のプレイ感覚は、つまらない!
もちろん、仕様だ。単調な日常生活のつまらない感がゲームプレイからも体感できるようになっている。
難易度バランス
3.5
謎解きも少し登場する。
難しくはないけれど、ストーリーが反映された謎解きになっていて面白い。
文字通り「視点を変える」のが鍵。進めそうになかった道が、違う視点から見ると通れるようになる。
そして、1番謎なのが、仕事の六角形繋ぎ。
物語の先を見たいんだけど、このお仕事ミニゲームがなかなかすんなり攻略できない。なかなかモヤモヤする仕事で、これがまた本作に感情移入する良い仕掛けになっている。
ゲームシステム
4.0
単調に主人公を動かすのみ。しかし時々色鮮やかな現実逃避ポイントが見つかると「やった!」と嬉しくなる。
その現実逃避だけが希望であり、もはや、そこしか面白味はない。
といった感じで、全てが本作のテーマを理解する舞台装置になっている。
ゲームとしては眠たくなるほど単調だけど、作品としては日常生活の狂気に気づかせてくれる余韻の残るゲームだ。
やりこみ要素
3.5
自宅で何をするかくらいしか選択肢はなく、一本道。
ゲーム全体のボリュームもコンパクトで、特にやり込み要素はない。
グラフィック
4.0
日常生活はモノクロで描かれ、主人公が現実逃避する瞬間は色とりどりになり音楽も流れる。このコントラストがすごく美しい。
みんなが同じように見える都会のビジネスマンたちを皮肉ったアート作品のようなゲームだ。
サウンド
3.5
単調な毎日の場面は、ほぼ無音。
それによって、美しい音楽が聞こえてくる現実逃避の瞬間が引き立つ。
総合評価Summary
3.5
物語の魅力
ゲームプレイの快適さ
ゲームとしての面白さ
芸術性
良いところ
考えさせられる物語
操作感や謎解き全てがテーマを反映している
残念なところ
わざとではあるけれど、単調なパートが多い
オススメな人
ストーリーを楽しみたい
芸術的なゲームが好き
短時間で攻略できるゲームを探している
オススメではない人
ゆっくりしたペースが苦手
分かりやすい物語が好き
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水泳のスター選手が、母との思い出を思い起こす不思議な体験を通して、自身の問題に向き合っていくアドベンチャーゲーム。本作のように物語を辿るのがメインであり、短時間で攻略できる。
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Mosaic
毎日同じことを繰り返すことの狂気
単調な毎日の恐ろしさや変化を求めていく物語を楽しむ物語。
現代社会の問題への皮肉も感じるアート作品のようなゲーム。
Mosaic
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