『FAR CHANGING TIDES』レビュー: 静寂のワンオペ航海 – ファー チェンジングタイド
『FAR: CHANGING TIDES ファー チェンジング タイド』とは、Okomotiveが開発した謎解き要素のあるアドベンチャーゲーム。
本作は、『FAR Lone Sails』から続くFARシリーズ第2弾。でも、前作をプレイしていなくても本作のゲームプレイに支障はない。
『FAR: CHANGING TIDES ファー チェンジング タイド』とはどんなゲームか、その特徴や魅力と共に実際にプレイした感想と各要素の評価をネタバレなしでレビューする。また、本作に似ているゲームも紹介する。
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あらすじStory
水中の謎少年
ゲームが始まると、水中にザブンッと少年が落っこちてくる。
彼が本作の主人公Toe。
主人公は水中に落ちてきたものの息が出来ないなど苦しがる様子はなく、泳ぐのも上手。
人間…だよね?
大洪水と謎スーツ
とりあえず泳いで水面に出てみると、そこは水没した街。
どうやら大洪水が起きて全てが壊れてしまった後の世界のようだ。
動物の姿は見えるけれど、人間の姿はない。もしかして、主人公が最後の人間なのか!?
でも、主人公がこの光景にうなだれることはない。黙々とあたりを探索し始める。
そして、主人公がふと見つけた不思議な装置をしげしげと観察していると、突然ガチャッとスーツを着せられてしまう。
どうしよう、脱げない!
船で右へ
仕方なくスーツを着たまま更に探索を続けてみると、このスーツに反応して扉が開いていく。
そして、巨大な潜水艦のような船まで稼働する。
謎少年は大型船(と謎スーツ)を手に入れた!
といっても、見せびらかす相手もいないので、船を操縦しながら画面右へと黙々と航海していく。
この先には一体何があるんだろう。
そもそも、この世界には何が起きたんだろうか。
ゲームの特徴Features
謎解きと船
本作では、船を操縦しながら、右へ右へと進んでいくのが大きな流れ。
ところどころで、障害物によって先に進めなくなるので、謎解きをして障害物を取り除き、道を切り開く。
本作にはセリフやテキスト情報はなく、状況を把握して自力で謎解きするしかない。
謎解きを攻略すると、船の新たな機能がアンロックされることもある。
その際に攻略した謎解き自体がアンロックされる新機能のチュートリアルになっているので、どうやってパズルを解いたかは記憶に留めておいた方がいい。
また、主人公はいつでも船を乗り降りできる。
地上は歩くことができるし、水中では謎スーツの首部分がエリマキトカゲのように回転して素早く泳ぐことができる。
船の操縦
上述した謎解き以外に、船の操縦も本作のメイン。船を乗り捨てて主人公だけ先に進むワイルドな旅はできない。
船を動かすには、風が強く吹いている時は帆を張って風力で進むことができる。また、無風の時などは燃料を燃やしてエンジンの力で進むことも出来る。
また、ゲームが進むと、船ごと水中に潜水して進むことも可能。潜水艦になるってわけだ。
船には、帆を張るフックや、燃料を燃やすスイッチや空気を送る装置などが各所に付いている。
船上を行ったり来たりして、それらを上手く操作して進んでいく。道すがら燃料(燃やせるもの)を拾うことも忘れずに。
各要素の評価と感想Rating
物語の面白さ
4.0
本作では、世界設定や少年についてのはっきりした説明はない。そもそも少年の名前さえ公式の情報見なければ知り得なかったほど。
しかし、それでも、、もう、雰囲気が凄すぎる。
静かなポストアポカリプス。
背景をよく見ていると、自分なりの仮説がムクムクと渦巻いてくる。
分かりそうで全然分からない。でも、なんだか想像できる。
感情移入するドラマなんてないのに、先が気になって世界の隅々まで見たくなる。自然と感情を刺激する最強の雰囲気ゲー(良い意味で)だ。
前作をプレイしていなくても問題はないけれど、前作をプレイしていると物語をより楽しめるので、あわせてプレイするのもおすすめ。
キャラクターの魅力
4.0
主人公は、一体何者なのか。
世界設定よりも何よりも、主人公が1番の謎かもしれない。
主人公が船内をちょこまかと走り回る姿は可愛い。
一方で、結構な高所からうっかり落ちても、「ドッカーン。ふぅ。落ちたね。」といった感じで何もなかったように起き上がる。
そもそも、こんな世界に1人取り残されて何か思うところはないのか。
「考えてることを少しくらい教えてよ。さあさあ、何でもいいから。」とプレイしながら思っていた。プレイヤーの私自身が1番主人公と喋りたい。
黙々と先へ先へと航海を続ける主人公に、いつの間にか夢中になっていた。
操作性
4.0
ポストアポカリプスな海を黄昏ながらザザーン…と航海する。
と思いきや、船の操縦はめちゃくちゃ忙しい。
でも、操作性は良好。
少年は小さくて見失ってしまいそうになるけれど、いつでもカメラのズームインとズームアウトがすぐに出来る。
持てる物やスイッチもスイスイ操作できるので快適。
難易度バランス
4.0
船の操縦は徐々に複雑になっていく。これが本作の1番の面白さ。
風を最大限受けるように帆を調整しつつ、燃料を足して、オーバーヒートしないように注意しながらエンジンをかける。
障害物が前方に見えたら、帆を畳み、速やかに潜水する。潜水中も周りにぶつからないように注意。
あっちへこっちへと忙しいのが本作の魅力。
また、ところどころで障害物を取り除く謎解きが登場するけれど、謎解き自体は難しくない。
物や装置の操作できる部分が青色になっているので、それを見逃さなければ、何をどうするのかは分かりやすい。
ゲームシステム
4.0
上述した通り、忙しく船を操縦し、静けさを感じる荒れ果てた風景を眺める。
静と動が同時並行。このギャップが最高。
謎解きの密度は濃くなく、濃密なドラマというわけじゃなく、下手すれば退屈で眠たくなりそう。
船の操縦法などのチュートリアルは全くなく、自分で試してみて少しずつ気づいていく。
「不親切!」となりそうだけど、そうはならない。適度に試行錯誤しつつ解っていくのが心地良い。
雰囲気の作り方や操作方法の気づかせ方が上手すぎて、気づいたら航海に没頭していた。
やりこみ要素
3.5
基本的にひたすら航海が続き、寄り道もほぼ無い。
たまに見つかるアポカリプス前のオモチャや植物などを集めるのがやり込み要素ではある。それで何か報酬があるわけではないけれど。
また、水上で風を利用して進むのか、水中でガシガシエンジンを燃やすのか。航海の仕方はプレイヤー次第。
グラフィック
4.5
絵画のようなグラフィック。
道中の背景には、物語を考察したくなる意味ありげなものがいっぱいある。
そして、クジラや発光クラゲなど、水中にも美しい風景が広がっている。
静かさが美しい。
サウンド
4.0
ほとんど環境音だけ。
ザブー…ンという波の音、そこにゴウゥッと響くエンジンに点火した音、風が帆に当たるピュオオオという音。
ゲーム丸ごとASMR。癒される。
ただ、ところどころでBGMが流れる時がある。謎解きポイントや景色が変わった時だ。
これまた良い曲ばかりで、船の操縦は忙しいものの存分に癒される。
サントラはこちら
総合評価Summary
4.0
物語の魅力
ゲームプレイの快適さ
ゲームとしての面白さ
芸術性
良いところ
抜群の雰囲気
プレイヤーに気づかせるゲームデザイン
忙しいのが楽しいゲームプレイ
残念なところ
謎解きは少なめで軽め
オススメな人
ポストアポカリプスな雰囲気が好き
独創的なゲームを探している
物語を考察するのが好き
オススメではない人
丁寧なチュートリアルが欲しい
はっきり物語を理解したい
疑似体験でも船酔いしやすい
FAR Lone Sails ファー ローンセイルズ
本作の前にリリースされたFARシリーズ第1弾。こちらは広大な砂漠を巨大な車を操縦しながら進む。こちらも雰囲気抜群。本作の物語をより楽しめるので、あわせてプレイするのがオススメ。
リトルナイトメア2 Little Nightmares II
謎の少年が不気味な世界で謎解きしていく高評価パズルアドベンチャー。本作と雰囲気は違うけれど、こちらでもセリフやテキストはなく試行錯誤する謎解きが楽しめる。謎解き度とアクション度は本作より高め。
FAR: CHANGING TIDES ファー: チェンジングタイド
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