『Narita Boy ナリタボーイ』レビュー: 全身タイツ勇者が救う思い出
『Narita Boy』とは、Studio Kobaが開発したアクションゲーム。
開発元はスペインのデベロッパーだけど、日本人の開発者も在籍している。更に、本作は開発者が日本にいた時に着想を得たそうだ。ということわけで、ゲーム内に日本の文化が随所に登場する。
ちなみに、タイトルの「ナリタ」は、開発者の人が日本にいた時に中山競馬上で見たナリタブライアンから来ているらしい。ゲーム内には「ナリタ市」の記載もあるんだけど、着想は馬の方らしい。
また、ゲーム中には「中」の漢字が重要なマークとして使われている。ちなみに、中山競馬場の「中」ではない。なぜ「中」なのかは、ゲーム内で明らかになる。
本作は、PS5、PS4、Nintendo Switch、Xbox、PCでプレイ可能。私はXbox版をプレイ。
本作の特徴や魅力、そして実際にプレイして感じた感想と各要素の評価をネタバレなしでレビュー。
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あらすじStory
1980年代
1980年代のどこかでパソコンでカタカタとコードを打って作業をしている男性。
彼は、人気ゲーム『Narita Boy』を開発したゲームクリエイターだ。
また新たなゲームを開発しているのか、男性が熱心に作業していたかと思ったら、画面が真っ赤に。ん?パソコンがバグった?
デジタルパンチ
と、次の瞬間、突然、パソコン画面の向こうからパンチが飛んでくる。
え!?新しいタイプの貞子?
画面の向こうのデジタル世界から飛んできた顔面パンチをまともに食らってしまい、男性クリエイターは脳震とう起こしたのか、記憶が吹っ飛んでしまう。
実はこれ、貞子でも幽霊のせいでもなく、『Narita Boy』のゲーム内に潜むHIMという悪意満々の悪いプログラムが仕組んだことだ。
ナリタボーイ
「ゲームクリエイターはどうなるの?」と気になるところで場面は変わり、どこかのお家。男の子が熱心に『Narita Boy』をプレイしている。
でも、もう夜遅い。背後にはお母さん。
そして、案の定、多くのゲーマーが経験したであろう、お母さんの「もうゲームやめなさい!」通告が下る。
仕方ない。男の子は、しぶしぶゲームをやめた。
ところが!消したはずのゲームが夜中に勝手に起動し、男の子はゲームの世界に吸い込まれ、ゲームの主人公である全身タイツに身を包んだナリタボーイになってしまう。
大抜擢
男の子、改めナリタボーイは、ゲーム内のマザーボードたちに「クリエイターの記憶を取り戻し、HIMの凶行を止めて欲しい」と言われる。
「あなたこそナリタボォオオイ!」と奮い立たされて、主人公はその気になってしまった、たぶん(主人公にはセリフがないので推測だけど)。
ナリタボーイは、プログラム内を駆け巡り、HIM軍団と戦い、クリエイターの記憶を辿っていく。
ゲームの特徴Features
ナリタボォオオイアクション
本作は2D横スクロールアクション。
ジャンプしたりダッシュしたり、壁を登ったりして進んでいく。
そして、ナリタボーイの武器はテクノソード。通常攻撃だけでなく、力を溜めて振ると「ホームラン」の強攻撃になったり、アッパーカットできる上方攻撃などもある。
また、銃も使える。近距離で強力なショットガン、遠くの敵まで貫通するレーザービームなど。
ゲームが進むごとに新たなスキルや武器を手に入れていく。
また、敵を攻撃すると溜まっていくゲージで、回復技や必殺技を発動することも出来る。
クリエイターの思い出
本作のメインは、プログラムを具現化した世界を探索して、クリエイターの記憶を集めること。
各所にあるクリエイターの記憶とシンクロできるポイントに来ると、記憶の世界に移動して一つずつクリエイターの過去を見ることが出来る。
これを繰り返していく。
プログラムを具現化した世界はひとつづきだけど、新たなスキルを手に入れるごとに進める範囲が広がっていく。
クリエイターの過去を見るパートでは、操作は出来るけれど、基本的に鑑賞するのみだ。
80年代はフロッピーディスク
上述のシンクロ出来るポイントに到達するまでには、いくつかの鍵が必要だ。鍵はテクノキーと呼ばれているけれど、フロッピーディスクのことだ。
また、正しいパスワードを入力しなければ進めない場所もある。
あっちへこっちへ行ったり来たりしながら、時にはボスを倒しつつ、フロッピーディスクを集め、パスワードを入手していく。
ちなみに、今何をすべきかは「Mission」メニューで確認することが出来る。しかし、地図機能はないので、場所や道は覚えておかなければならない。
各要素の評価と感想Rating
物語の面白さ
4.0
「ゲームの世界に入っちゃった」「デジタル世界に入ってどーたらこうたら」。はいはい、どこかで見たことあるなあ。
のはずなんだけど、面白い。
なにが面白くさせてるかというと、まず、銭湯とか突然バーが登場したりとかステージ設定が奇想天外な所ばかり。プログラムの世界と言うと単調そうだなと思うけれど、全然そんなことない。
そして、取り戻していくクリエイターの記憶が良い。
必ずしも幸せな思い出ばかりじゃないんだけど、日本が舞台ということもあってか、なんだか切なくなって心がほっこり。
デジタル世界は非現実的だけど、記憶の方は「開発者自身の自伝?」って思うくらい結構リアルで感情移入してしまう。時には泣けてしまう思い出もある。
ナリタボーイとしてのバリバリデジタルな冒険とほろ苦いクリエイターの思い出という、雰囲気が全く違うメインストーリー二本立て。
テンポがかなり良くて、気づいたらぶっ通しでプレイしてた。
キャラクターの魅力
4.0
オープニングで出てくるクリエイターはサングラスかけてて、いかにも業界人って感じ。
だけど、思い出の中の彼は第一印象とは全然違っていて、過去に何があったのか気になりすぎてゲームを進める手が止まらなくなる。
他のNPCたちはバラエティ豊かだけど、セリフにプログラミングの単語が頻出するので、話している内容は結構かたくて難しい。
プログラミングの知識がある人なら面白く味わえると思う。
操作性
4.0
本作は1980年代が舞台で、レトロさが魅力!と宣伝されている。でも、プレイして驚いたんだけど、ゲームプレイは全然レトロじゃない。
予想と全然違った、良い意味で。
なめらかに動くし、アクションの精度も高い。グラフィックのピクセルの1ドットは大きいけれど、そこから予想する操作性とは全く違って、繊細な動きができる。
特に目立ったバグもないし、日本語翻訳もしっかりされてるので、安心してプレイできる。
難易度バランス
4.0
アクションの種類は少しずつ増えていって色んな戦い方が出来る。敵の種類も豊富。
特にボス戦では相手の攻撃パターンをよく見て立ち回らないといけない。
ボス戦では、何回かゲームオーバーになることもある難易度で、アクションゲームとしてもしっかり面白い。ゴリ押し脳筋プレイでは勝てない。
ゲームシステム
4.0
アクションやゲームシステムについては特に真新しさはない。ただ、かなり多彩。
あと徐々にアクションの種類が解放されるんだけど、そのペースが良い。「お、次はこれ出来るようになったー!」と新要素が出てくるので、余計に夢中になっていく。
スキルが解放されて進める場所が広がっていく良いテンポはメトロイドヴァニアぽく楽しめる。
場面によっては、ロボット馬に騎乗してのアクションや突然巨大ロボットになったり、アクションがガラッと変わる場面もあって単調にならない。
そして、メインストーリーが単に「出てくるボスを倒しましょう」というわけではなくて、「記憶を集めましょう」というのも面白い。
実際には順番にボスを倒していくんだけど、記憶が目的であり、ボス討伐が目的ではないという新鮮な感覚が味わえる。
やりこみ要素
3.5
やり込み要素として、任意のサブミッションやおまけボスもいる。
おまけボスはしっかり強い。
でも、基本的には一本道をガンガン進んでいくことになるので、自由度はほぼない。
スキルは増えていくけれど、成長要素はないので、ただただ目の前の敵を倒して、NPCに言われるがままミッションをこなしていくのみ。
グラフィック
4.5
本作は『スキタイのムスメ』に影響を受けている部分があるそうだ。
グラフィックにその影響が出ていて、同じ系統のモダンなピクセルアート。シンプルなんだけどセンス抜群。
私は、この系統のピクセルアートが大好物なので、プレイ中に背景に見惚れてしまってた。いろんな景色が登場する。都会や砂漠、いかにもサイバーな場所も。
エリアによって風景ががっつり変わるので、見てるだけでも飽きない。次のエリアに進むのがすごく楽しみになる。
ちなみに、本作ではレトロさを演出するためにテレビ画面越しっぽく見えるフィルターをかけてプレイすることもできる(私は色鮮やかな方が好きなのでフィルターオフでプレイしていた)。
サウンド
4.0
サイバーでテクノで80年代な曲。と思いきや、風景が変わると音楽の雰囲気もがっつり変わる。
特に、クリエイターの記憶を見ている時のBGMが美しくて、切なさが200%くらい上がる。
タイトル画面や数カ所で「ナリタボォオオオオオイ!!!」と激しくシャウトされるので、ゲーム起動時には音量注意。
あと、エンディング曲が始まった途端に爆笑してしまった。
終盤の展開に感動して涙してたのに、エンディング曲で全て吹き飛んだ。涙を返せ!これからプレイする人は、ぜひエンディングまで見てほしい。
サントラはこちら
総合評価Summary
4.0
物語の魅力
ゲームプレイの快適さ
ゲームとしての面白さ
芸術性
良いところ
アクションの種類が多くて面白い
独特な世界設定
感情移入できるストーリー
残念なところ
地図がないので場所を忘れてしまうと迷子になりやすい
自由度が低い
オススメな人
アクションゲームが好き
ピクセルアートが好き
個性的なゲームを探している
レトロなサイバーの雰囲気が好き
オススメではない人
アクションゲームが苦手
自由度が高いゲームをプレイしたい
光刺激が強いと体調が悪くなる
本作と違って3Dアクションだけど、こちらもプログラムの世界を探索しながら進んでいくアクションゲーム。メトロイドヴァニアなシステムになっていて探索が楽しめる。
本作のグラフィック面で影響を受けているというのがコチラ。独特でモダンなピクセルアートと更に独創的なゲームプレイが楽しめる。
Narita Boy
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