『The Medium 霊』レビュー: 1人だけど画面分割
『The Medium 霊』とは、Bloober Teamが開発したアドベンチャーゲーム。
Bloober Teamは、『Layers of Fear』や『Blair Witch』など、ホラーゲームで知られるポーランドのデベロッパーだ。
本作の舞台もポーランドで、過去のポーランドの社会情勢を知っていると本作のストーリーを理解しやすい。プレイ前にサラッとでも予備知識をつけておくのがオススメ。
本作は、PS5、Nintendo Switch、Xbox、PCでプレイ可能。私はXbox版をプレイ。
本作はどんなゲームか、その特徴や魅力と共に実際にプレイした感想と各要素の評価をネタバレなしでレビューする。また、本作に似ているゲームも紹介する。
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あらすじStory
霊能力
主人公はマリアンという女性。
彼女は霊能力がハンパじゃなく強くて、死者の魂と対話したり、あの世が見えたり、普通じゃない人生をおくってきている。
ちなみにタイトルの『The Medium』は霊媒師という意味をもつ。
とはいっても、別に彼女はそれを生業にしているわけではない。「私、霊が見えちゃうのよね、仕方ないわ」という感じで、自分の特異体質と折り合いをつけて暮らしている。
きっかけ
物語は、気味悪く思われがちな彼女の能力も知ったうえで愛し育ててくれた養父が亡くなったところから始まる。
養父の魂にお別れを言いながらしみじみしたいところだけど、間の悪いことに電話が鳴る。
一方的に「ニワ保養所に来てくれ」と謎の男に電話口で告げられる。
いや、めちゃくちゃ怪しい、絶対行かない方がいい。
と誰もが思うハズだけど。マリアンは「なんか気になる」と、ノコノコと出かけて行ってしまう。
絶対何か起こる
ホラー映画にありがちな「首突っ込まなきゃいいのに、何で行くんだ」というお約束通り、ニワ保養所跡にたどり着いたマリアンは、グイグイと奥へと入っていく。
マリアンは、あっちやこっち、あの世にまでも行き来して、ニワ保養所で起きた凄惨な事件、そしてマリアン自身の真実を知ることになる。
ゲームの特徴Features
そこで謎解きしてください
本作は、謎解きで攻略する場面が多い。
謎解きといってもパズルというわけではなく、鍵を見つけてドアを開く、何かが足りない場所に合う物を探してくるといった探索して解く謎解きだ。
舞台となるニワ保養所跡の各所を行ったり来たりしまくって大きな謎解きに挑むというより、ストーリー進行とともに訪れていく部屋などの限られた空間内で謎解きを行う。
ストーリーが進むと、前の場所には戻れなくなるし、関係ない場所には行けないようになっている。
限られた空間内で2つ3つの謎解きをすると次に進めるという流れ。
あの世?この世?どこの世?
何かを見つける謎解きとはいっても、ただ単純に歩き回るだけじゃない。
マリアンはあの世とこの世を行ったり来たり出来る。
あの世とは精神世界で、死者たちと交流することができる現世とよく似ているけれど違う世界だ。
現世では通れない場所も、鏡を通ってあの世に行けば通れることがある。
あの世でフラグを立てないと、現世で取ることができないアイテムなどもあるので、あの世とこの世で順序よく探索していかなければならない。
マリアンの奥義
上述の通り、二つの世界を探索するわけだけど、マリアンが本領発揮するのが、奥義・画面分割。
あの世とこの世で同時進行する謎解きだ。
本当に画面が左右や上下に分割されるんだけど、これは決してローカルマルチプレイではない。
マリアンを操作すると、あの世とこの世で同じ動作をする。これで謎解きをする場面もある。
でも、場所によっては、あの世でしか通れない場所があるんだけど、現世のマリアンが引っかかって進めない。
その時は、更なる奥義・幽体離脱。
あの世のマリアンのみを操作することができる。しかし、一定時間のみ。その間に用事を済ませなければならない。
スーパー霊力
基本は謎解きなゲームプレイだけど、ところどころで戦闘というか、襲ってくる何かがいる。
そんな時は、霊力で応戦する。
ステルスが必要な時は、屈んでゆっくり、時には息を止めながら、「何か」に見つからないように隠れながら進む。
また、霊力シールドを張ることも出来て、蛾の大群がいる場所や、攻撃してくる雑魚の「何か」は、これでやり過ごすことが出来る。
霊力を使う際には霊力ゲージを消費するけれど、魂の力が集まる光っている場所で補給することが出来る。
マリアンの左腕の袖に付いているヒラヒラの光り具合で、どのくらいのパワーが残っているか確認することが出来る。
また、この霊力は謎解きにも必要で、壊れた電子機器を通電させることなども出来る。霊力って発電機能もあるらしい。
各要素の評価と感想Rating
物語の面白さ
4.0
先が気になる。それが、更に次の気になるに続く。
物語もゲームプレイもほぼ一本道で、ズイズイと物語が進んでいく。
「訳ありな女性が、とあるきっかけで自身の過去を知って…」という、ゲームに限らず、映画や小説でもありがちな設定。
ありがちなくらい多いのには訳がある。本作もそうだけど、絶対に結末が気になる筋書きになるからだ。
ちなみに結末を見た感想は「お!?おおう…」。考察好きな人にとって面白い展開だと思う。
キャラクターの魅力
4.0
さまざまなあの世の魂と出会うことになる。
「平凡な人はいないのか!?」と叫びたくなるくらい、トラウマや精神的な問題を抱えた登場人物ばかり。
陰鬱、憂鬱。不気味。気持ち悪い描写もたくさん。
それは、この保養所が抱える秘密のせいだ。
操作性
3.5
複雑な操作はないし、押さなきゃいけないボタンは全て画面上に表示される。
ただただ怪しそうな場所に近寄って行ってボタンを押す。これだけだ。
でも、結構近寄らないとボタン入力を受け付けてくれないので、ちょっともたつく時はある。すぐ目の前まで来てるのに!
特に物の一部を霊視して、その物にまつわる記憶を呼び起こすという謎解きが結構面倒くさい。
霊視する物を特定の方向を回すことになるけれど、正解の方向にスティックを倒してからもしばらくホールドしなければならない。
「これは、一体どういうパズルなんだ」と不思議になる行程。考えるわけでも何でもなく、ただスティックを倒す。
難易度バランス
3.5
謎解きは探索が基本なので難しくはない。
物語を楽しむのを邪魔しないテンポで進めるけど、歯ごたえが少なくて残念。
「何か」から隠れながら進む時にミスすることがあるくらいだけど、迫真のステルスじゃなくて、「何か」の警備は結構ガバガバ。
なのに、突然「何か」が有能になって、よく分からない位置から捕まってしまう時があって、「え、今のでダメなの?」となる時がある。あの世は理不尽だ。
ゲームシステム
4.0
ドラマを見るように楽しむ。そんなゲーム。
人間の精神とか霊とか、その手の話が好きなら「ふむふむ、ふむふむふむ」とテンポよく楽しめる。プレイしていて、ぐいぐい引きこまれる!
画面分割での同時謎解きのシステムも面白い。
でも、ポーランドの歴史を知らないと理解しにくい部分があるし、「精神世界とか嘘でしょ」と興味が薄い人にとっては「うーん」となるかもしれない。
物語自体に面白さを感じられないと、本作は楽しめない。
それくらい謎解きやゲームプレイは単純だ。
やりこみ要素
3.5
やり込み要素としては、そこらじゅうに散らばっている読み物やアイテムを調べたりといった、物語の背景を探るもの。
量はそこまで多くはない。
でも、世界設定や人間関係がより良く分かる情報ばかりなので、化け物に襲われそうでも探したくなる。
グラフィック
4.0
高解像度で美しいグラフィック。美しい絶景が舞台じゃないのが残念になるくらい。
廃墟とか気持ち悪いウネウネとかばっかりで、高クオリティの気持ち悪さ。
本稿ではあまり載せていないけど、ナメクジや蛾など昆虫嫌いな人にとってはキツいと思う場面もある。
サウンド
3.5
音楽は終始不穏だ。本作はホラーゲームに分類されてるので、そりゃそうだ。
怖がらせる演出やグラフィック、突然ドーンと鳴る効果音など。ちょいちょい、おどかそうとしてくる。
ただ、終盤で突然歌付きのBGMが流れてきた時は、唐突すぎてチグハグな感じが残念だった。
本作のサウンドには『サイレントヒル』シリーズなどの山岡さんが参加している。
\\試聴できます//
ちなみに、私は、ホラー演出であまり怯えないタイプなので参考にならないかもしれないけど、本作で心拍数が上がることはなかった。
「来る!」瞬間が分かりやすい。
そんなことよりストーリーの先を早く知りたいので、バケモノが出てきても「あの、そこどいて下さい、先が気になるんで」みたいな感じだった。
恐怖で絶叫!ではないゲームだ。しみじみと「なんか嫌だなあ」と感じるタイプのホラー。
総合評価Summary
4.0
物語の魅力
ゲームプレイの快適さ
ゲームとしての面白さ
芸術性
良いところ
ストーリーに引き込まれる
画面分割で同時進行が面白い
残念なところ
謎解きが単純
ストーリーに入り込めなければ単調になってしまう
オススメな人
人間の精神や霊などの話が好き
ストーリーを楽しみたい
ホラーゲームが好き
オススメではない人
ホラーゲームが苦手
虫が苦手
陰鬱な雰囲気が苦手
歯応えのある謎解きを楽しみたい
Call of the Sea
行方不明になった夫を探すため謎の島へ捜索に来た女性が、自身の病の謎と島の秘密に迫っていく謎解き要素のあるアドベンチャーゲーム。ホラーというわけではないけれど、奇妙な現象に襲われる。
INMOST インモスト
3人の物語を辿るアドベンチャーゲーム。はじめは全く分からないけれど、徐々に3人の物語のつながりが見えてきて、本作と同じく結末が気になって仕方なくなる。陰鬱な雰囲気と彩度をおさえたピクセルアートも魅力。
The Medium 霊
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