『おじいちゃんの記憶を巡る旅』レビュー: 次元を超えるおじいちゃん – Old Man’s Journey
『OLD MAN’S JOURNEY おじいちゃんの記憶を巡る旅』とは、Broken Ruluesが開発したパズルアドベンチャーゲーム。
あたたかみのある手描き調グラフィックが魅力的で、2D横スクロールでプレイする。
本作は、PS4、Nintendo Switch、Xbox、PC、Apple Arcade、iOS、Androidでプレイ可能。私は、PS4版をプレイ。
本作の特徴や魅力、そして実際にプレイして感じた感想と各要素の評価をネタバレなしでレビュー。本作に似たゲームも紹介する。
画像はタップもしくはクリックすると拡大して見ることが出来ます。
あらすじStory
おじいちゃん
海辺の崖上にある一軒の家。その家の傍で佇むおじいちゃん。既に何とも言えない切なさを感じさせる。
そんなおじいちゃんの元に一通の手紙が届く。
それを読んだおじちゃんは、いそいそと用意を始め、突然旅立つ。
手紙には何が書いてあったのか、どこに向かって旅立つのか、プレイヤー側は気になることばかり。
思い出を辿る旅
しかし、本作にはセリフも物語を説明するテキストも登場しない。
「見て感じる、手探りで謎を解く」というパズルアドベンチャーゲームだ。
プレイヤーは、おじいちゃんの進む道を切り拓きながら、おじいちゃんの頭に蘇ってくる思い出を垣間見つつ、どこかへ向かって旅を続けていくことになる。
ゲームの特徴Features
指で触る
主人公はおじいちゃんだけど、プレイヤーはおじいちゃんを直接操作するわけではない。
画面上には手のアイコンが表示されており、PS4版では、その手の形をしたカーソルをコントローラーで動かす。◯ボタンを押すと、手のアイコンがある場所を指でツンツンと突くことができる。
地面のどこかをツンツンッと触ると、おじいちゃんはそこに向かって黙々と歩く。
また、道中にいる人や物など「何か起こりそう?」という場所をツンツンとすると、何かしらのリアクションが起こることもある。
3次元を2次元で扱う
おじいちゃんは、2次元方向にしか動けない。上下左右の移動のみ。山などを描いている輪郭の上を歩いていく。
しかし、本作は2Dグラフィックではあるものの、背景は奥行きがあるように描かれている。手前の丘と、遠くにある丘と、更に遠くにある高い山など。
ところが、おじいちゃんは遠近感を完全に無視して歩く。
どんなに遠くにある山だろうと、輪郭線が繋がっていれば歩いて行ってしまう。
というわけで、丘や山の輪郭を動かして道を繋げていくのが本作のパズルとなっている。
丘や山の輪郭は、上述した手のカーソルで摘むことが出来て、摘んだまま上下に動かすことが出来る。
そうして、手前や奥にある丘の輪郭線同士を繋げ、おじいちゃんの歩ける道を繋いでいく。
思い出す
主人公はおじいちゃんだし、ずっと歩いているとやはり疲れてきてしまう。
で、特定の場所に来ると、おじいちゃんはベンチに座る。
それは、おじいちゃんの休憩時間であり記憶を巡る時間が始まる合図。
おじいちゃんは、座った場所から見える光景から記憶を思い起こしていく。
プレイヤーはそれを見ながら、おじいちゃんに何があったのか、どんな人生を歩んできたのかを少しずつ知ることになる。
記事はさらに下に続きます
評価と感想Impressions
ゲームのようでゲームじゃない、だけどゲーム。
アート作品に触れているのか、ゲームを遊んでいるのか分からないほどゲームと芸術が融合している。
そして、心にストレートに響く物語も魅力。「良い体験をした」という感動が色濃く残るゲームだ。
でも、1番感動したのは、2次元の表現の限界を逆手にとったゲームシステム。
今もたくさんの2Dゲームが発売されているけれど、大作とか最先端ゲームになると3DCG。やっぱり2Dでは描き切れないものがある。
しかし、本作では、そんな限界を逆手にとっている。遠近感という2Dのゲームプレイでは体験できない部分を逆に利用してしまうのだ。
どんなに奥にある山でも丘でも、「輪郭が繋がってたら道は繋がってる」と言わんばかりにおじいちゃんは輪郭をテクテク歩いて行く。
「なるほどな、そういう捉え方があるのか」と目からウロコがこぼれる。
次の道はどことどう繋がるか?と考えるのが面白い。
ただ、逆に言うと、このシステムに尽きる。
この「輪郭繋げシステム」に慣れてくると、そのうち「はいはい、また道繋げね」になってくる。
しかし、そのくらいのところでゲームが終わる。長々と続いたり、雰囲気を壊してしまうようなギミックに発展する前に、「いいところ」で終わる。
まさにショートアニメのようなゲームで、「あともうちょっと見たい」と思うくらいでコンパクトに終わるのが素晴らしい。
それでもラストシーンに差し掛かる頃には、もはやおじいちゃんに完全に感情移入してしまっていて、結末には「うわぁあ」と涙してしまった。
操作は簡単で詰まるようなこともなく、めちゃくちゃ癒されつつ現実逃避できる時間が過ごせる。
誰の人生にも色んな思い出や大なり小なりドラマがあり、何もない人生なんて無い。そして、きっかけは何であれ、何歳でもいつでも新しい旅に出ることが出来る。
しんみりとそんな感慨にふけってしまうような良いゲームだった。
総合評価Summary
4.0
物語の魅力
ゲームプレイの快適さ
ゲームとしての面白さ
芸術性
良いところ
2次元と遠近感をうまく使ったシステム
感情移入する物語
美しいグラフィック
過不足ないボリューム
残念なところ
システムに慣れてくるとやや単調になる
オススメな人
独創的なシステムに興味がある
癒されたい
短時間で攻略できるゲームを探している
芸術性高いゲームが好き
オススメではない人
長時間遊べるゲームを探している
難しい謎解きを求めている
おすすめ類似ゲーム本作に似たゲームはコチラ
Gibbon Beyond the Tress
本作開発元のゲーム。テナガザルとなって木から木へと飛びながら進むアドベンチャーゲーム。こちらも芸術性高く、簡単な操作で気軽に楽しめる。
Unpacking アンパッキング
主人公の人生の節目での引っ越しの荷解きをしていくという個性的なアドベンチャーゲーム。片付けながら、主人公の人生を垣間見ていくことができる癒される人気作。
おじいちゃんの記憶を巡る旅
2Dと3Dを超越するおじいちゃん
山や丘の輪郭を繋げれば、遠近法を無視して歩いていけるというシステムが面白いアドベンチャーゲーム。
各所で思い出していく主人公の過去を辿っていく物語に感動し、あたたみのある手描き調グラフィックなど雰囲気に癒され、ショートアニメのように楽しめる。
Old Man’s Journey おじいちゃんの記憶を巡る旅
© Broken Rules Interactive Media GmbH 2017.
http://www.oldmansjourney.com