『Steelrising』レビュー: お上品オートマタのフランス革命 スチールライジング
フランス革命の主役はオートマタだった!意外な世界設定と優雅にメカが戦うソウルライクなアクションRPG『Steelrising スチールライジング』をネタバレなしで要素ごとに詳しい評価を交えてレビュー。
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ゲーム製品情報Game Info
- タイトル
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Steelrising スチールライジング
- 開発元
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Spider
- ジャンル
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アクションRPG, ソウルライク
- 対応機種
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PS5, Xbox, PC
本稿では、PS5版のレビューを行っている。
Steelrisingの内容Features
あらすじ
フランス革命
本作の舞台は1789年パリ。フランス革命に揺れている激動の時代だ。
民衆が決起し争いまみれになったパリ。そこから少し離れた場所でマリー・アントワネットは暮らしていた。彼女は夫であるルイ16世のことが心配でならない毎日をおくっている。
しかし、実のところ、彼女は夫の身を案じているというわけではない。
夫の様子がおかしいのだ。
ルイ16世はオートマタ兵士を多用し始めており、妻マリーを警護すると称して、半ば監禁するようにパリ郊外の屋敷に閉じ込めているのだ。
パリへ向かうアイギス
夫とパリが気がかりで仕方ないマリー・アントワネットは、彼女専属の警護を務めている特別なオートマタに様子を探ってくるように命じることにした。
このオートマタが、アイギスという名の本作の主人公だ。
アイギスは主人からの特命を負って、ルイ16世配下のオートマタだらけのパリへと向かうことになる。
オートマタの謎
パリに向かう道中で、アイギスは他の警護オートマタから攻撃を受けるし、暴走しているオートマタにも襲われる。ルイ16世のオートマタが、アイギスを攻撃するってプログラム設定ミスじゃないですか?
しかし、パリでは更に恐ろしいことが起こっていた。街ではオートマタは民衆までも襲っており、花の都パリはもはや見る影もないほどに荒れている。
アイギスは、街に残る数少ない協力者からの情報をもとに、まずはオートマタ製作者であるヴォーカンソンの行方を探すことになる。
彼なら暴走しているオートマタの謎を知っているかもしれない。
そして、ルイ16世が優勢ということは、肝心のフランス革命は一体どうなってしまうのだろうか。
ゲームプレイの特徴
アイギスのパリ探訪
アイギスが探索するパリの街は地続きではない。エリアごとにマップが分かれている。
キャリッジ(馬車)に乗ると、アンロック済みのエリアを選択して移動できる。いくつかのエリアでクエストが同時発生することもあり、進める順番はある程度自由だ。
また、特定のボスを倒すと、アイギスは新たな移動スキルを習得することがある。
各エリアは最初から一気に全てを探索出来ないようになっており、新たな移動スキルを手に入れてから再訪すると、探索範囲が広がり、新たな物語が展開していく。
ソウルライクなオートマタ
本作は、ソウルライクそのものなバトルシステムだ。
体力とスタミナゲージがあり、敵を倒すと経験値であり通貨となるアニマエッセンスが手に入る。
ゲームーオーバーになると所持していたアニマエッセンスを全て失うけれど、前回倒れた場所に戻れば回収できる。
一定の経験値が溜まったら、好きなステータスを上げてレベルアップできる。
ウェスタと呼ばれる鳥カゴに包まれた椅子のような機械がセーブポイントであり、ここで休息すると回復薬である油差しの補充やレベルアップとショップでの売買ができる。しかし、同時に雑魚敵が全復活する。
本作ならではの要素としては、スタミナゲージを消費しきったタイミングで△ボタン(PS版)を押すと、アイギスは自身を冷却してスタミナを一気に回復できる。
ただ、冷却すると氷雪属性ダメージが蓄積されるので乱用することにならないよう、スタミナ管理が大事だ。
モジュールでアイギスを改造する
アイギスはレベルアップの他に、装備品やモジュールでも強化が出来る。
武器では近接攻撃と強攻撃が出来て、武器種によって射程や挙動が変わる。
各武器には特定の特殊攻撃が備わっており、炎など属性付きの攻撃や銃弾で遠距離攻撃できるいったものがある。
銃弾などを使う特殊攻撃は、秘術丸薬を消費する。秘術丸薬は、敵がドロップしたりショップで購入可能な消耗品だ。
そして、モジュールとは、アイギスの背中の穴に装着することで様々なステータスボーナスを発動してくれる装備品だ。
モジュールは好き勝手に装着できるわけではなく、モジュールの鍵という貴重アイテムを使って装着穴をレベルアップさせないと、より高品質なモジュールを装備することができない。
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スチールライジングの評価Review
物語の面白さ
ルイ16世がオートマタ軍団を手に入れてご乱心。フランス革命は鎮圧されてしまうかも。
そんな歴史の「もしかして?」が楽しめる物語。設定から既に興味そそられる。
ただ、物語の描き方はやや荒めで、各エピソードがぶつ切りで展開する。
重要人物に会う。会話少し。次に行くべき場所を指示される。出発。それだけで物語は進んでしまう。アイギスはオートマタなので無駄なく任務を遂行すべきなのだろうけれど、盛り上がりには欠ける。
それでも、オートマタが暴走した謎やルイ16世の真意など、設定が面白いので物語自体に興味を持ってプレイすることができる。
キャラクターの魅力
上述した通り物語描写が荒めなので、残念ながら感情移入は出来ない。
主人公のアイギスもオートマトンなので淡々としてるし、ボスも淡々と攻めてくる。黙々と戦うのみだ。
もちろん協力者となるNPC達は人間だけど、フランス革命に邁進しているため人間ドラマなどは楽しめない。
操作の快適さ
本作をプレイして最初に思ったことは「なんだか、もっさりしてる!」だ。
回避やジャンプ、ダッシュ時はキビキビ動くけれど、通常の動きがややもっさり。
たぶん、アイギスの手足の動きに比べて実際の移動速度が遅いからだと思う。「めちゃくちゃ動いてるはずなのに遅いぞ」という違和感が「もっさり」の原因かと。
また、武器種によって挙動が変わるけれど、もちろん重い武器は攻撃速度が遅くなる。
ただ、それが重たさを感じる遅さではなく、単にモーション全体を0.5倍速にしたみたいな感じで「重たい一撃」感を感じれず気持ち良くない。特に連撃している時に強く感じる。
ソウルライクゲームは、やはり本家のフロムゲーや他のソウルライクゲームと比較してしまうので、挙動が余計に気になってしまう。当たり判定などの精度は特に問題なし。
あと、たまに画面がカクつくのが気になるところ。フレームレート優先設定でもたまに起こる。
難易度バランス
本作はソウルライクということで高難易度アクションだ。
でも、死にゲーというわけではない。
もちろん簡単というわけではなく、ボスに何回か負けることもあるし、雑魚敵に取り囲まれて大変な目に遭うこともある。
でも、アイギスと同じく敵の動きもゆったりめなので、基本的にヒット&アウェイで地道に戦えば勝ててしまう。敵の攻撃パターンの種類が少なくて分かりやすく、どの敵相手でも立ち回りがほぼ同じになりがち。
「この攻撃はなんだ!?避けれるのか?」「ギリギリの攻防だ!」という死にゲーの難しさと面白さを感じづらい。
ボス戦では「殴って、はい退いてー、殴って、はい退いてー」という一定のリズムが念仏のように頭の中に流れ始める。
ゲームシステムの面白さ
本作は、ゆっくりペースでソウルライクやってみようというゲーム。
オートマタとはいえ、王や王女の配下ともなれば、やはり優雅にお上品に戦わなければならないのだろう。せかせかと熾烈に戦うのは、はしたないのかもしれない。
システム自体はソウルライクだけど、その「お上品さ」が仇となり、死んで覚えるほど面白くなっていく死にゲーにはなりきれていない。
一方で、移動スキルが少しずつアンロックされることによって、前に行ったエリアの探索できる場所が広がるというのは探索欲をくすぐってきて楽しい。
物語や世界設定、扇子が武器だったりモジュール強化など本作ならではの面白さもありつつ、「荒削りだな」と感じる部分が多い。
本作はソウルライクを意識して作られているとは思うけれど、オートマタだらけのパリを探検するゲームと捉えた方が楽しめる。
やりこみ要素の楽しさ
新たな移動スキルを手に入れて、攻略済みエリアを改めて探索する。
各地に散らばっているテキスト情報を集めて物語を補完する。
様々なモジュールや装備品を手に入れて組み合わせを考えて、アイギスを強化する。
ここら辺がやり込み要素だ。
また、特定の場所では、その場所での過去の出来事を見たり、ドア越しに住人と会話することができる。
フランス革命がなぜ思わぬ方向に進んだのか。アイギスの自身の過去も分かってくるので、寄り道するほど物語がより楽しめる。
グラフィックの芸術性
フォトリアルな3DCGグラフィックで描かれる。
高解像度というわけではなく、特に人間キャラの表情には荒さも目立つ。
でも、本作のメインはオートマタたちだ。主人公アイギスも敵も金属が光るカッコ良く気品溢れるデザインだ。
アイギスは、装備品によって見た目も変わる。どれも貴族な見た目で上品だ。
そして、宮殿はぶっ壊されていることも多いけれど、炎に包まれ荒れていても、パリは荘厳で美しい。
サウンドの魅力
敵に見つかるとバトルBGMが流れ始めるけれど、全体的に控えめな印象だ。
そして、本作のオートマタは喋れないという設定だけど、アイギスだけは特別に喋ることができる。
そのため、敵は襲ってくる時に雄叫びをあげることはないし、攻撃しても敵はギャーとも言わない。ただ金属がぶつかる鈍い音が響くのみ。
そのせいで、余計にヒットアンドアウェイなバトルが単調に感じやすい。
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Lies of P
こちらも機械仕掛けの人形同士が戦うソウルライクなアクションRPG。
『ピノキオの冒険』がベースになっているものの、主人公ピノキオが嘘をついて物語が分岐するなど独創的な世界設定が魅力。
本作よりも死にゲー度が高めで、武器のカスタマイズができるのも特徴。
仁王2
こちらも史実の「もしも?」が描かれたソウルライクなアクションRPG。
日本の戦国時代が舞台であり、妖怪の力やハクスラ要素が魅力。
ボリュームたっぷりで、キャラビルドや多種多様な敵と戦える高評価作。
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まとめSummary
おすすめな人
- 史実の「もしも?」を描くフィクションが好き
- 探索が好き
- ソウルライクなシステムが好き
おすすめではない人
- ハイペースで気持ち良いバトルを求めている
- 死にゲーをプレイしたい
- ドラマティックな演出を楽しみたい
総合評価
- オートマタによるフランス革命という世界設定が面白い
- 行動範囲が広がっていく探索が楽しめる
- 挙動がもっさり
- 荒削りな部分が散見され、ソウルライクな死にゲーにはなりきれていない
Steelrising スチールライジング
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