『チコリー 色とりどりの物語』レビュー: 自分は勇者じゃないと気づく時 – Chicory: A Colorful Tale
塗り絵をするように世界に色をつけ、穏やかながら心に響く物語を体験する『Chicory: A Colorful Tale チコリー 色とりどりの物語』をネタバレなしで、攻略のコツと各要素の評価を交えてレビュー。
本作に似ているおすすめゲームや関連作も紹介する。
チコリー色とりどりの物語製品情報
タイトル | Chicory: A Colorful Tale チコリー 色とりどりの物語 |
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開発元 | Wishes Ultd., Greg Lobanov, Alexis Dean-Jones, Lena Raine, Madeline Berger, A Shell in the Pit |
対応機種 | PS5, PS4, Nintendo Switch, Xbox, PC |
ジャンル | パズルアドベンチャー |
本稿では、PCの英語版をゲームパッド(マウス+キーボードを使用した部分も一部あり)を使用してプレイした際のレビューを行なっているためゲーム画像は英語版のものとなっている。現在は日本語版が配信されている。
チコリー色とりどりの物語の攻略
ストーリー
チコリーの助手
世界は、たくさんの色に溢れている。
それはWielderという不思議な筆の使い手のおかげだ。(wieldとは振り回すという意味で、本作でのWielderは才能溢れる画家という意味合いで使われている)
そんなWielderになれるのは世界でたった1人だけ。Wielderは引退する際に、自身が認めた後継者へと世界に欠かせない筆使いとしての役目を受け継ぐという。
そして、現在Wielderを務めているのはChicory チコリーだ。
本作のタイトルにもなってる名前をもつ選ばれし者だから、チコリーが主人公かと思うけれど、実は違う。
主人公はチコリーの助手、というか彼女の家を掃除する下働きに過ぎない(名前はプレイヤーが好きに付けることができる)。
世界を覆う黒い異変
ある日、主人公がいつものようにチコリーの家を掃除していると、突然全てが白黒になってしまう。
しかも、Wielderしか手にできない不思議な絵筆が投げ捨てられたように廊下に落ちていた。
「チコリーの身に何かが!?」と不安になるけれど、主人公はというと筆を手に取って憧れのチコリーの真似をしてご満悦の様子だ。
チコリーが自分の部屋から出てこないのをいいことに、主人公は勝手に筆を持ち出して世界から色が消えた理由を探りに出発してしまう。
主人公が外に出てみると、あたりには見たことのない禍々しい黒い木が溢れている。さらに、主人公はその木の内側で得体の知れない怪物を目撃した。
引きこもるチコリー
どうやらこの黒い木が世界から色が消えた原因のようだ。でも、これはもう主人公の手に負える事態ではない。
チコリーに絵筆を返さなくては!遂に選ばれし者であるチコリーの出番だ。
しかし、チコリーは憂鬱そうな顔で絶賛引きこもり中だ。更には「絵筆なんかいらない、あなたがWielderをやればいい」と言い出す始末。
え!いやいや、そんな。ここは「チコリー、どうしたの?」と心配するべき時だ。
ところが、主人公は「任せといて!」と超自信満々に二つ返事でWielderになってしまう。
こうして正式に任命されたとはいえない素人Wielderは、チコリーの代わりを務めようと色を失った世界を旅していく。
しかし、主人公が憧れていた天才チコリーは一体どうしてしまったのだろうか。
攻略のポイント
塗って解決、描いて解決
本作では、物語の進行に伴って各地を旅していく。
時々ボス戦を挟みつつ、新たな筆の能力を得ることで探索できる場所が広がっていく。これが本作の大きな流れ。
主人公の操作は、移動と色塗りがメイン。ゲームが進むとジャンプなども出来るようになる。
ゲームパッドでの操作では、左スティックで主人公の移動、そして右スティックで筆を操作して、画面上に色を塗ることが出来る。
筆は、主人公の近くだけではなく画面上どこでも好きな場所に移動させて色を塗ることできる。
探索中は謎解きする場面も多く、色を塗ってギミックを作動させたり、地面や壁を塗ることで主人公が通れる道を作ることもある。
また、NPCからの依頼で何かに色を塗ったり絵を描くこともある。
着替えたり、装飾したり
基本的には物語に沿って進んでいくけれど、各所にある宝箱やサブクエストであるNPCの問題を解決した報酬として衣装を手に入れることがある。
主人公は、この衣装によて頭部と身体部分のファッションを自由にコーディネート出来る。
また、家具や置物を手に入れることがあり、主人公の自宅内だけでなく、屋外でも好きな場所に置いて装飾を楽しむことも出来る。
更に、アカデミーと呼ばれる美術学校では自由に絵を描くことが出来て(テーマは出されるけれど)、完成した作品は世界各地の額縁に飾られることになる。
筆を操作する際には、色、筆の太さ、ブラシスタイルの選択ができる。画面をズームして細かく描き込むことも出来るのようお絵描き機能が備わっている。
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チコリー色とりどりの物語の評価と感想
物語の面白さ
一見、可愛いカジュアルなゲームに見える。確かにほのぼのした会話や笑えるエピソードなど、気軽に楽しめる場面が多い。
そんな軽い気持ちでプレイしていたら、突然どかーんと重い話に変わってびっくりした。
でも、これは良い意味での裏切りだ。理想と実際の自分の能力の差に落胆するなど、胸にズキッとくる物語がしっかり味わえる。
「人生って思い通りにはならない、でもそれが当たり前」という誰もが経験する苦さを優しく包んでくれる素敵な物語だ。
ちなみに、私はラスボス戦では泣きながら戦うという忙しい状態になっていた。終盤の熱い展開は必見!
キャラクターの魅力
そこはかとない自信とチコリーへの憧れで突き進む主人公は、見ていて微笑ましい。
が、徐々に主人公やチコリーの心情が分かってきて、自然と主人公たちに感情移入していく。
愛してくれる家族や友達もいるけれど、自分に才能があるとは決して思われてはいない。でも、本当は野心もあるし、他人をギャフンと言わせてやりたいプライドもある。主人公の姿はすごく人間臭い。犬だけど、見た目は。
NPCはほのぼのとしていて優しく可愛いけれど、それぞれコンプレックスを抱えている。プレイヤーごとに自分を重ねて見てしまうNPCがいると思う。
めちゃくちゃ可愛い世界だけど、人生を生きる教訓をもらえる寓話だ。
操作の快適さ
私は基本的にはゲームパッドを使用してプレイした。しかし、一部ゲームパッドでは操作しにくい場面がある。
それは、絵を描く時と素早いアクションが求められる時。
匠のゲームパッド使いの人なら問題ないのかもしれないけれど、絵を描く繊細な動きは難しい。
また、ボス戦や主に寄り道での謎解きでは素早い操作が求められる時もある。ボスは超高速のギョロ目で睨み攻撃を仕掛けてきたりするのだ。
主人公を動かしつつ同時に絵筆の操作をする際に、ゲームパッドでは画面上の狙った場所に素早く絵筆カーソルを動かすのが大変。
だからといって、右スティックの感度を高くすると挙動が荒ぶるので、圧倒的にマウスの方がプレイしやすい時がある。
難易度バランス
ゲーム進行は分かりやすく、謎解きも難しくない。
Phone Booth(公衆電話)が各地にあり、主人公の実家に電話すると、お母さんがヒントを教えてくれる。
で、更には「お父さんに換わる?」と提案される。お父さんは超早口でほぼ答えそのものをベラベラ喋ってくれる。
でも、実際には、実家に電話しようとは一度もならない難易度だ。出番待ちしてたお父さんお母さん、ごめん。
しかし、簡単すぎるということはなく、ゲームが進むごとに複雑になっていき、謎解き好きも満足できる。
また、絵を描く場面では失敗はない。批評はされるけれど「下手すぎるのでやり直し」なんて言われないし、適当に描いても「センスあるわ!」と褒めてくれる優しい世界だ。
謎解きが苦手な人も、絵心がない人も安心。
ボス戦になると別のゲームかと思うくらい雰囲気が変わって意外とハイペースバトルになるけれど、ゲームオーバーになってもすぐやり直しが出来るので詰むことはない。
ゲームシステムの面白さ
塗り絵をして攻略するという珍しいゲーム。
描いたり塗ったりできるゲームは他にもあるけれど、本作は特定の場所だけではなく、画面全てを塗りまくれるのが魅力。
攻略に全く関係なくても塗りたくれる。文字通り世界を好きに彩れるってわけだ。
色を塗ることで新たな道を見つけたり隠れていたものを探し出せる謎解きはアイデア豊富で面白い。
ただ、塗ったかどうかだけが解法になっており、特定の図形を描くとか、どのくらいの範囲を塗るとか色の違いを使った謎解きがほぼないのは少し残念。
クオリティが高く満足できるだけに、「描く」「塗る」がもっと組み込まれた謎解きがあるといいなと思う欲が出てきてしまう。
やりこみ要素の楽しさ
メインストーリーだけでもボリュームがしっかりある。
探索できる場所も多く、サブクエストや収集要素も豊富だ。
お店の看板商品のデザインやアートアカデミーの課題など絵を描くやり込み要素も多く、上手い下手は関係なく、絵を描くことが好きなら没頭してしまうはず。
また、好きな場所に色を塗れるので道中を好きに塗ったり、家具や植物を置いて自分好みの景観に変えてしまうのも楽しい。
道端に家具や植物を置いておくとNPCが利用してくれるのも嬉しいところ。
本作では一見背景に見える場所まで探索できることが多いので、色を塗りながら歩いていると寄り道が見つかることもある。とにかく塗りまくるのがおすすめ。
グラフィックの芸術性
頭身低めの可愛い獣人たちばかりのほのぼのした世界。
物語冒頭で全て白黒になるので、ほとんどはシンプルな線画で描かれる。まさに塗り絵をしたくなるグラフィックだ。でも、「白黒のままでもオシャレでは」と思うこともあるくらい線画だけでも魅力的だ。
また、絵を描く際には、荒めの筆致になる。
ところが、チコリーやNPCが描いた絵は細くて綺麗な線で描かれていて驚愕する。そんな絵と比べられるなんて、こ、公開処刑なんですけど。これが素人とプロの違いか。
そんなところで主人公は素人なんだ(描いてるのは自分自身なので主人公に罪はない)と痛感させられることになる。
サウンドの魅力
本作の見た目や雰囲気から想像できる通りの癒される楽しいBGMばかりだ。
不気味な演出の時は突然大きな音が鳴ることもあるけれど、リラックスできる曲が多い。
また、色を塗ったり絵を描く場面では、たっぷり絵の具に浸した筆が滑る気持ち良い効果音が鳴る。
本当に「描いてるぜ、塗ってるぜ」という気分になるのが余計に楽しい。
サントラはこちら
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チコリー色とりどりの物語レビューのまとめ
おすすめな人
- 描いたり塗ったり美術が好き
- 物語を楽しみたい
- 謎解きが好き
おすすめではない人
- 絵描くことに全く興味がなく面倒臭い
- アクション要素は求めていない
総合評価良いところ&残念なところ
- 人生の教訓になる深い物語
- 色塗りで攻略する謎解きや探索要素が豊富
- 可愛く癒される雰囲気
- 塗る動作だけが解法になっていて、少し物足りない
- ゲームパッドだけでは操作しにくい場面がある
チコリー色とりどりの物語が好きならおすすめのゲーム
似ているゲーム
Behind the Frame とっておきの景色を
絵を描くことが好きなら、こちらのゲームもおすすめ。
自由に描くことは出来ないけれど、絵を描くことを通して切ない物語が楽しめる。
ジブリ映画風のグラフィックも魅力。
TOEM
癒されるアドベンチャーゲームなら、こちらもおすすめ。
写真を撮ることで攻略する穏やかやゲーム。
彩色する要素はないけれど、こちらも線画を活かしたグラフィックが魅力的。
Chicory A Colorful Tale チコリー 色とりどりの物語
Chicory: A Colorful Tale™ © 2021 Greg Lobanov. All rights reserved. Finji® and regal weasel and crown logo are trademarks of Finji, LLC.
https://chicorygame.com
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