『Bonfire Peaks』レビュー: 炎上する思い出
『Bonfire Peaks』とは、Corey Martinさんが開発したパズルゲーム。
Corey Martinさんはこれまでにもいくつかパズルゲームを手がけている。また、本作には『A Monster’s Expedition』などを手がけたDraknekも共同制作として携わっている。
本作は、PS5、PS4、Nintendo Switch、PCでプレイ可能。私はPC版をプレイ。
本作の特徴や魅力、そして実際にプレイして感じた感想と各要素の評価をネタバレなしでレビュー。本作に似たゲームも紹介する。
画像はタップもしくはクリックすると拡大して見ることが出来ます。
あらすじStory
どこかへ向かう男
ゲームが始まると、どこかの湖畔に車が停められている。
恐らくその車の持ち主である男性は足漕ぎ白鳥ボートを無心で漕ぎまくり、どこかに向かっている。
箱と焚き火と男
そして男がたどり着いたのは不思議な島。
ナレーションも主人公による自分語りも何もない。
男は、ひたすら荷物を焚き火で燃やし始める。それだけだ。1マスずつちょこちょこと動く男は黙々と荷物を燃やす。
公式ページによると、ここは不思議な遺跡の残る島で、主人公はそこで自分の所有物を燃やしたいそうだ。
なぜなのかは分からない。断捨離なのか、過去丸ごと捨てたいのか。はたまた何かの証拠隠滅でもしてるのか。それとも、何らかの儀式なのか。
訳は分からずとも、ただただ燃えさかる炎に荷物を焚べていく。
ゲームの特徴Features
島に点在する焚き火
本作は、ステージクリア型のパズルゲーム。
Overworldと呼ばれる不思議な島がステージ選択画面の役割を担っていて、焚き火となる木の塊がたくさん置かれている。
焚き火一つ一つがステージであり、ステージをクリアすると焚き火の横に木箱が1つ出現する。
Overworldには高い段差があり、この木箱を使って先に進むことができる。
ただし、先へ進むのに必要となる木箱の数は、ステージ数より少ない。つまり、全てのステージをクリアしていく必要はない。
振り返らない男
各ステージでの目的は荷物の入ったカゴを焚き火で燃やすこと。
で、本作は、いわゆる倉庫番系のパズルだ。
主人公は向いている方向に1マスずつ移動し、1段だけ上に登ることが出来る。
向きを変える時は、例えば左を向いている状態で上か下に入力すると、その場に立ったまま上下に向きを変える。
しかし、右に入力すると向きは変わらず右方向に1マス後ずさりする。180度反対方向に入力した時だけ後ろに下がる動きになるわけだ。
また、主人公は目の前にある木箱や荷物の入ったカゴを持ち上げることが出来る。
持っている箱にも当たり判定があり、その箱が壁にぶつかればそれ以上前進や方向転換は出来ないし、持っている箱が他の木箱にぶつかると押してズラすことになる。
以上が基本ルール。これを上手く組み合わせて荷物を焚き火まで持っていくことになる。
記事はさらに下に続きます
各要素の評価と感想Rating
物語の面白さ
4.0
物語の描写はほぼなし。
だけど、かなり気になる。なぜ主人公はひたすら荷物を燃やすのか。
しかも、どうやら主人公以外の人の持ち物もある。
Overworldの焚き火の周囲には様々な物が置かれていて、特定の物に近づくと「マリのピアノ」といった実績が解除される。
明確な説明はないけれど、主人公に関連のある人の物なのか、もしくは主人公よりも前にこの島で荷物を燃やしまくった人がいるのか。
そんな疑問を持たせるようなものが意味ありげにチラチラと置かれている。この島と主人公は一体何なのか。これこそが本作の1番の謎。
キャラクターの魅力
3.5
何のリアクションもセリフもない主人公だけ。
他に登場人物はいない。
主人公に表情はないけれど、絶対に楽しく荷物を燃やしているわけではない。これは間違いない。
どこか物悲しく哀愁が漂っている男だ。
この表情が読み取れない主人公によって、余計に物語を考察したくなる欲が湧いてくる。
操作性
4.0
私はゲームパッドを使ってプレイした。
意図してなかったのに後ろ向きで歩いたり、うっかり持っている荷物を振り回して他の木箱を水に落としてしまったり、本作ならではの仕様に慣れていないと「あ、やっちゃった」ということがある。
慣れてからも、悩んでいるうちに木箱同士をくっつけてしまったり(重ねた木箱は一塊となって動く)、ついつい誤操作をしてしまうことがある。
しかし、戻すボタンがあるので安心だ。無限に一手ずつ戻すことが出来る。また、一気に最初の状態に戻すことも出来る。
試行錯誤するのに完璧な機能が揃っていて、操作性は全く問題なし。
また、カメラを自由に動かすことも出来るので快適に悩むことが出来る。
難易度バランス
4.5
本作は歯ごたえしっかり。
パッと思いつきやすい解法では、必ずといっていいほど「あと1マス届かない!」で上手くいかないようになっている。
「これで解けるはず」という思いつきを、ことごとく潰してくる。
詰まってしまうと、考え方をスッパリ変えなければいけないのが難しさであり面白さ。自分の「こう解くはずだ」という固定観念が最大の敵だ。
様々なギミックが登場するけれど無理やり感は一切なくて、毎回「あー!なるほど、そういうことか!」と納得と感心が生まれる。同じような解法が続くこともない。
荷物は燃えていくけれど、私の目から落ちるウロコは積み上がっていく。
どのステージも本当によく出来ていて、常に質が高いパズルが味わえる。
ゲームシステム
4.0
3次元になった倉庫番。シンプルだ。
崩れる足場や水流などのギミックも登場するけれど、シンプルさは損なわず色んな使い方が出来る良いものばかり。
このシンプルなルールだけで、よくぞこれだけたくさんの面白いパズルを作れるなと感心しっぱなし。
また、上述もしたけれど、パッと見て思いつく解法に誘い込むのも上手い。
開発者さんはそんなつもりはないかもしれないけれど、面白いほどに誘い込まれて「え、上手くいかない!?」と困惑する。
また、物語を考察したくなる雰囲気作りも良い。
ステージクリア型パズルではあるけれど、世界に惹きつける工夫も凝らされている。これによって、パズルを攻略して先へ進みたい!というやる気が続く。
やりこみ要素
4.0
どれだけ多くのステージをクリアするか。これが1番のやり込み要素。
上述した通り、先に進むには全てのステージをクリアする必要はない。
だからこそ、全てのステージをクリアするのがやり込み要素となっている。
寄り道ステージもあって、そこに到達するためには正規ルートを進む以上に木箱が必要となる。
また追加DLCも発売されていて、更にたっぷりのステージに挑戦できる。
グラフィック
4.0
全てボクセルで描かれているグラフィック。
緻密というわけではないけれど、幻想的な雰囲気作りが上手い。クオリティも高め。
全てボクセルだけど、炎から放たれる明かりの描写は滑らかで綺麗。これによって、より一層哀愁感も増している。
ちなみに、パズル中でもフォトモードが起動できる。
ひたすら荷物を燃やす謎の男を色んな角度から写真に撮れるという意味不明な機能なんだけど。それでも写真を撮りたくなるくらい雰囲気が良い。
サウンド
4.0
アンビエントなBGMがずっと流れている。
プレイしていると、あと1マス足場が足りないとか、壁に当たって荷物を持ったまま上手く方向転換出来ないとか、もどかしい状況になることが多い。
思わず「ジャンプしたい!いっそのこと荷物を投げてしまえ!」とルールを完全無視した考えが浮かんでくるんだけど、そんな気を鎮めてくれる癒しのBGMが流れている。
ステージクリアした時にはパズルゲームでよくある「チャラララーン」みたいなポップな効果音は流れず、フワァアアーと物が燃える音が静かに流れるだけ。
ステージクリアして「やったー!」ではなく「また燃やしてしまったぜ…」と黄昏てしまう。悩むけれど癒されるゲームだ。
総合評価Summary
4.0
物語の魅力
ゲームプレイの快適さ
ゲームとしての面白さ
芸術性
良いところ
歯ごたえのある良質パズル
考察したくなる世界設定
哀愁と共に癒される雰囲気
残念なところ
ヒント機能等はないので
迷宮入りもあり得る
オススメな人
パズルが好き
落ち着いた雰囲気が好き
たっぷり悩みたい
オススメではない人
ヒントが欲しい
ダイナミックな演出を求めている
分かりやすい物語じゃないとモヤモヤする
おすすめ類似ゲーム本作に似たゲームはコチラ
本作の開発にも携わっている開発者さんが手がけた高評価パズルゲーム。丸太を転がして道を繋げていく。モンスターが人類に関する展示物を見るという設定もユニーク。
高品質で歯ごたえのあるパズルゲームなら、こちらもおすすめ。パズルのルールを変えるというシンプルながら脱帽してしまう発想の高評価作。
Bonfire Peaks
炎上する思い出
所持品を焚き火で燃やすという設定が面白い3次元の倉庫番系パズルゲーム。 シンプルなルールながらアイデア満載の良質なパズルがたっぷり楽しめる。 考察したくなる物語や癒されるボクセルグラフィックも魅力。
Bonfire Peaks
© 2021-2023 Corey Martin, Licensed to and Published by Draknek Limited.
https://bonfirepeaks.com