『Moonscars』レビュー: 泥人形と泥試合
『Moonscars』とは、Black Mermaidが開発したメトロイドヴァニアゲーム。
2D横スクロールアクションでプレイする。
本作は、PS5、PS4、Nintendo Switch、Xbox、PCでプレイ可能。私はXbox版をプレイ。
『Moonscars』とはどんなゲームか、その特徴や魅力と共に実際にプレイした感想と各要素の評価をネタバレなしでレビューする。また、本作に似ているゲームも紹介する。
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あらすじStory
造形主おじいちゃん
ゲームが始まると、造形主と呼ばれる男性が猫に話しかけている。
色んな物を使って人形を作ってみたら人間のようになってしまい、「なんだか思ってたようにはいかなくなっちゃった」みたいなことを喋っている。
何を言ってるのかほぼ意味不明だけど、どうやら人間に似せた戦士を作ったら、性格も人間っぽくなったらしい。
しかも、そのなかでも穢れなき戦士と呼ばれる8人の精鋭部隊には特に期待していたのに行方知れずになってしまったようだ。
イルマの旅
そこから場面は変わり、戦いに敗れた風の戦士が1人映し出される。
彼女が本作の主人公、灰色のイルマ。上述の精鋭部隊の1人だ。
恐らくこれからゲーム中で会うことになりそうな人々の幻影を見つつ立ち上がった彼女は、とにかく全身が痛い。
仲間たちがどうなったのかも気がかりだ。
イルマは記憶も不確かな様子だけど、「造形主ゾランに会わねば」と駆け出す。
泥人形に変身
全然事態を把握できないまま進んでいくと、冒頭で造形主に可愛がられていた猫のエタラグに出会う。
そいつのセリフも意味不明だけど、その猫に導かれるままイルマは闇黒鏡を通り泥人形工房へ辿り着く。
工房の謎装置を使って、彼女は彼女自身の泥人形を作り出し、謎技術によって精神も泥人形に受け継ぐ。
イルマは、泥人形になることで痛みから解放されたようだ。
そして、道中で集めた情報をつなぎ合わせていくと、どうやらここは造形主が作り出したクレイボーンという化け物だらけになってしまった王国のようだ。
本来は王国がとある戦に勝つために、泥人形戦士としてクレイボーンを大量生産したらしいけれど。どうして敵意剥き出しの化け物になってしまったのかなど、まだまだ分からないことだらけだ。
全ての謎を解き明かすために、灰色のイルマは造形主も残酷な女王もいるという天城へと向かっていく。
ゲームの特徴Features
ソウルライクなメトロイドヴァニア
本作はメトロイドヴァニア。探索し、各地でボスを倒しつつ進んでいく。
また、本作はソウルライクであり、ゲームオーバーになると本作の経験値であり通貨である骨粉を全てを失う。が、前回死んだ場所に戻れば回収可能。
本作ではレベルアップで強くなるわけではなく、各地にある強化アイテムを手に入れると、体力上限や攻撃力などを上げることが出来る。
骨粉は、魔法を習得できるスキルツリーをアンロックするために使うことが出来る。
イルマの戦い
イルマは剣で近接攻撃し、習得した魔法を2種類装備して使用できる。
ダッシュ回避とパリィも可能。
本作では、敵を攻撃するたびにイコルが溜まっていく(画面左下の赤い体力ゲージの上の白ゲージ)。
溜まっているイコルを消費すれば体力回復がいつでもできる。
また、魔法発動にもイコルを使う。が、その際にはイコルが消費されるのではなく、その魔法に必要なコスト分だけゲージが紫色になる。
紫色は穢れたイコルであり、体力回復には使えるけれど魔法には使えない。敵を攻撃して白ゲージに戻さなければ魔法発動できなくなってしまう。魔法は連続発動しまくれないというわけだ。
また、敵を一定数倒すごとに怨念ボーナスが発生する。
「回復力が上がる」「クリティカル確率が上がる」などの提示される3種類から好きなボーナスを選択する。
しかし、怨念ボーナスは死ぬまでの一時的なバフであり、ゲームオーバーになると全て失われしまう。
分身との戦い
イルマは、通常攻撃だけではなく特殊武器を使った必殺技を放つことが出来る。これにはイコル消費はなく発動しまくれる。
敵を気絶させるハンマーや敵の魔法防御を下げる槍など、1種類だけ装備できる。
しかし、この特殊武器を装備するにはちょっと面倒な手順を踏まなければならない。
まず、新たに訪れたセーブポイントである魔鏡に触れると拠点の泥人形工房(独立した空間)にワープする。
その際、既に装備していた特殊武器は失う。
そして、工房からワープ元(探索していた場所)に戻るとイルマの分身が出現しバトルになる。
そいつを無事に倒せたら、次に装備したい特殊武器を3種類から選ぶことが出来る。
つまり、特殊武器は新たなセーブポイントに触れる度にバトルを経て更新していくというわけだ。
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各要素の評価と感想Rating
物語の面白さ
4.0
全然意味が分からない。
正直なところ、冒頭ではもはや「もう好きにしてくれ」と理解することを諦めようとしたほど、意味が分からない。
でも、その後もくっきりはっきり分かるわけではないけれど、徐々に事態が飲み込めてくる。
ゲームプレイ上でも鍵を握っている泥人形の謎や残酷な女王、そしてイルマの過去が少しずつ明らかになってくる。
ボスを倒したりNPCに会う度に、イルマがとんでもないことをしてしまったことが薄々分かってくる。
「やばいぞ、マズイことをやらかしたらしい。でも、一体何をやってしまったんだ!?」という追い詰められるような感覚で物語が楽しめる。
最初は煙に巻かれまくるかと思いきや、しっかり物語を楽しむことができる。
キャラクターの魅力
4.0
NPC達は、ほぼ訳の分からないことを言っている。
「シンプルに言ってくれれば、イルマもプレイヤーも助かるんだが!」と思うのに、NPCたちはそんなことお構いなしに周りくどい言い方ばかり。
一癖も二癖もあるヤツばかりで、特に猫はキャラのクセが強い。『ふしぎの国のアリス』のチシャ猫のようなヤツだ。
ゲームの進行と共にNPCのセリフも変化するので、訳分からなくとも話しかけるのは楽しい。
そして、主人公のイルマ。
記憶がないので、訳分からない世界で右往左往するプレイヤーが感情移入しやすくなっている。
が、徐々に真実が明らかになってくると、主人公のことが1番恐ろしくなるヒヤヒヤ感が味わえる。
操作性
4.0
操作性は良好。キビキビ動いてハイペースなバトルが楽しめる。
パリィのタイミングも見極めやすい。
が、本作はやや荒めのピクセルアートグラフィックで、腕や持っている武器が細いサイズの敵だとパリィのタイミングが見づらい。
魔法と必殺技の発動時には溜め動作が入るけれど、動作中にキャンセルもできるので扱いやすい。
ただ、本作では、部屋の全敵を倒さないと扉が開かない場所がいくつかあり、たまに敵が消えることがある。
これはラッキーではなくて完全にバグで、他の敵を倒し切っても消えた敵は倒せないので全敵を討伐した判定にならない。セーブポイントに触れてやり直しするしかないので、結構困る。
難易度バランス
4.5
間違いなく死にゲー。
敵を攻撃して溜まるゲージで回復できるなんて永久機関じゃん、楽勝では?
と、なめたことを考えてしまったけれど、ひたすら敵の攻撃が重くて痛い。
回復する際は主人公は硬直状態になるし、複数の敵に囲まれることも多く回復が追いつかない。トゲの地形トラップはグサグサ痛い。
魔法でしかまともなダメージを与えられない敵もいるので、イコルゲージを回復に使うか魔法に使うかやりくりも大変。
新たなセーブポイントは分身泥人形とのバトル付きだし全然気が抜けない。
それでいて、怨念ボーナスや特殊武器にバフが付いてるなど、有利になる要素で難易度バランスがとられているのが良いところ。
さらには、グランドという貴重アイテムを使って月の儀式を行うと難易度を下げることができる(1回でも死んだら「飢えた月」状態に戻って難易度は上がってしまう)。
ゲームシステム
4.5
本作はソウルライクだけど、怨念ボーナスや分身など本作ならではの独特なシステムが特徴。
最初は戸惑うけれど、慣れてしまうとそれぞれが良い味出してて面白さを発揮する。
メトロイドヴァニアとしては、到達出来そうで出来ない足場や宝箱が見える探索のワクワク感は少なめ。
でも、ちゃんと探索しないと主人公の永続強化ができなかったり、隠し部屋やショートカットも多いので、探索の面白さはちゃんと味わえる。
やりこみ要素
4.0
魔法のアンロックや探索して強化アイテムを見つけてイルマを永続強化するあたりが分かりやすいやり込み要素。
高度な魔法アンロックには骨粉がしっかり必要なので、ソウルライクならではの「経験値を何が何でも死守するんだ!」の緊張感が楽しめる。
スキルツリーをアンロックしていくと、死体や各所にある泥人形の抜け殻から味方を作ることが出来るなど、かなり便利な魔法が登場する。
また、装備品のアミュレットストーン集めもやり込み要素。普通に便利な物から、代償付きだけど強力な物もあり、組み合わせを考えるのも面白い。
その他、各地に落ちている耳飾りを集めて、とある少女に報酬をもらったりなど、NPCイベントも楽しめる。
グラフィック
4.0
ほぼ月明かりだけというモノトーンなピクセルアートグラフィック。そこにイルマの赤色ドレスと血がよく映える。
残酷でありつつ荘厳でもあり、物語や世界設定と相まって雰囲気が素晴らしい。
上述した通り、ちょっと荒めなピクセルアートなので、混戦になると見にくくはなるけれど。
サウンド
4.0
グラフィックだけ見ると、ドラキュラ伯爵でも登場しそうな不気味なピアノ曲とかオルガンの音がが流れそう。
ところが、本作のBGMは派手だ。力強く勇ましい曲調が多い。
特にボス戦では曲も盛り上がって戦う気満々になる。
敵の雄叫びなどが攻撃タイミングのヒントになることもあるけれど、BGMが鳴りすぎてて聞こえにくい時はちょっと困る。
総合評価Summary
4.0
物語の魅力
ゲームプレイの快適さ
ゲームとしての面白さ
芸術性
良いところ
一時的なバフなど独特なシステム
死にゲーな高難易度
探索が楽しめる
残念なところ
敵の攻撃が重いだけで難易度が上がっている部分がある
物語が分かりにくい
オススメな人
高難易度アクションが好き
個性的な死にゲーに興味がある
探索が好き
オススメではない人
経験値で主人公を強化したい
ハイペースなバトルが苦手
ソウルライクそのものなゲームを求めている
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Blasphemous
高難易度なメトロイドヴァニアが好きなら、こちらもおすすめ。デスペナルティが蓄積するというソウルライクとは少し違った死にゲーが味わえる高評価作。残虐表現が多め。
Death’s Gambit
『ダークソウル』を彷彿とさせる高難易度メトロイドヴァニアゲーム。経験値によって各パラメータをレベルアップできるので、高難易度とはいっても攻略しやすい。物語も面白い人気作。
Moonscars
泥人形と泥試合
一時的なバフや分身から必殺技を取り返すなど独特なシステムが面白いソウルライクなメトロイドヴァニアゲーム。 残酷で荘厳な雰囲気も魅力で、探索と高難易度アクションが楽しめる。
Moonscars
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