『NUTS』レビュー: 社会派リスパパラッチ
『NUTS』とは、Joon, Pol, Muutsch, Char & Torfiが開発したアドベンチャーゲーム。
シンプルだけど独特な色づかいのグラフィックが特徴で、主観視点でプレイする。
本作は、Nintendo Switch、Apple Arcade、PCでプレイ可能。私は、Apple Arcade版をプレイ。
本作の特徴や魅力、そして実際にプレイして感じた感想と各要素の評価をネタバレなしでレビュー。本作に似ているゲームも紹介する。
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あらすじStory
リス観察
本作は、ひたすらリスをカメラで録画して見るゲームだ。
森にやってきた主人公が、夜な夜なリスを見守る。
そんなほのぼのとした夜を過ごすところから物語は始まっていく。
環境調査
しかし、主人公はリス愛好家とか、リスの研究者というわけではない。
実は、主人公は、ニーナという教授から仕事としてリス観察を請け負って、舞台となる森にやってきた。
ところが、これは単なるリスの生態調査というわけではない。
実は、この森一帯をパノラマ社がダムに変えてしまおうと計画しているそうだ。
教授は自然保護派学者として、現地のリスの生態系を調べ、それを根拠にダム建設に反対するつもりらしい。
木の実
というわけで、リスを見守るという平和な仕事に見えて、実は熱い社会派ドラマの一端を担うことになる。
とはいっても、主人公は単にリスの観察を任されただけの身。
ひたすらリスの隠れ場所や木の実を隠している場所を観察する。
タイトル通り木の実(ナッツ Nuts)を追え。
ゲームの特徴Features
昼も夜も働く
ゲームは昼パートと夜パートを交互に繰り返しながら進む。
キャラバンと呼ばれるトレーラーが拠点だ。
昼は、トレーラーから出て、カメラを各地に設置していく。
夜は、設置したカメラに録画された映像を見て、リスを見つけるという作業を行う。
トレーラーのドアを開けて外に出ると昼パートに切り替わり、録画を見るモニター前に座ると夜パートに切り替わる。
自動的に時間が流れていっているわけではないので、思う存分カメラ設置や映像確認が出来る。
リスは一体どこから?
ゲームはいくつかの章に分かれている。
章ごとにターゲットとなるリスがいて、そのリスの行き先や、逆にどこから来たかなどを探るよう教授から指示される。
章の最初に教授から指示書がファックスされてくるので、よく読んでおくことが大事。
指示を確認したら、数カ所にカメラを設置してリスの観察スタート。
録画した映像を見てリスの出現場所を割り出し、そこからカメラの設置場所を変えたり映像を早送りや早戻ししながらリスが移動する経路を探っていく(リスは毎晩同じルートで動いてくれる)。
で、例えば、リスの行き先を明らかにすることが目的の場合は、リスが目的地に着いた瞬間の映像をスクリーンショットしてプリントアウトする。
その写真を教授にファックスすれば章クリアだ。
各要素の評価と感想Rating
物語の面白さ
4.0
意外。予想外な物語。
森でリスを見守るお仕事。ああ、なんて穏やかな癒しゲームなんだ。
と思ってたら、そんな雰囲気は序盤くらい。
徐々に雲行きが怪しくなって、ストーリーの先が気になり始める。
ダム建設を巡って敵対関係になっている、依頼主のニーナ教授とパノラマ社。
依頼の写真をFAXするたびに教授から電話がかかってくるんだけど、電話口の向こうで熾烈なバトルが勃発している。
あれ、このゲーム思ってたのと違う。
自然を感じてリスを愛でるつもりでゲームを始めたら、いつのまにかハラハラしてた。いい意味で予想を裏切られた。
決して「うふふ、リス可愛いねえ」というだけのゲームではない。
キャラクターの魅力
3.0
主観視点だし、電話で教授と話すぐらいなので、本作の1番のキャラはリスたち。
とっても可愛い。ちょこまかちょこまか動いているのが微笑ましい。
しかし、最後まで物語を終えると、リスたちが頼もしく逞しく見えてくるはずだ。
操作性
2.5
操作はかなりもたつく。
私はゲームパッドでプレイしたけれど、たぶんマウス操作でも面倒くさいと思う。
というのも、映像確認をする際には、早送りとか再生ボタンとか押すんだけど、画面上のそれぞれのボタンにカーソル合わせてから押さなくてはいけない。
そのボタンのサイズ自体がそんなに大きくないし、カーソルがマウスポインタ形式なので、ボタンの位置に合わせるのだけでモタモタしてしまう。
「一時停止、はい、ちょっと戻して、あ、また再生して」てディレクターみたいにパッパッパッと操作して映像を検証したいのに!
映像検証する時は完全に機器操作のみになるので、ゲームパッドの各ボタンに早送りとか一時停止とかを割り当てて欲しかった。
難易度バランス
3.0
やることはシンプル。
リスが通る道を推測しながらカメラを置いて、あとは映像見るだけ。難しいゲームではない。
はじめは広範囲にカメラを設置して、そこからリスが現れるエリアを絞っていくと攻略しやすい。何回か繰り返せばコツが分かってくるはず。
カメラの画角に特徴的なものが映るようにしておくと、位置関係が推測しやすくなる。
ゲームシステム
4.0
操作は面倒だけど、自分でカメラの位置を工夫しながらリスの通る道を辿っていくのは面白い。
探偵になった気分。他のゲームではあまり体験したことがない感覚だ。
やることは変わらないけれど、教授からのお題が徐々に難しくなっていくし、リスも複雑な動きをし始めるので、作業っぽさは感じにくい。
やりこみ要素
3.0
やり込み要素としては、章ごとに、とあるカセットテープを見つける。
ただの収集要素ではなくて、教授の思いをより理解できる内容になっている。
「なんでこの森?なんでリス?」という、教授がなぜこの森のリスにこだわっているのかが分かってくる。
見つけるのはそんなに難しくないし、教授の事情が分かると物語をより楽しめる。
グラフィック
4.0
このゲーム、まず目を引くのは2色が目立つグラフィックだ。
配色は変わっていくけど、基本的にずっと2色。
自然豊かな森だけど、サイケデリックな雰囲気でおしゃれ。
でも、オシャレすぎて困る時もある。
カメラどこに置こうかなあってウロウロしてたら、あ!壁にドーン。
こうなると、なかなか大変。壁が均一な1色なので、画面いっぱい同じ色になってしまい上下左右を見失って衝突した壁から抜け出せなくなりがち。
芸術性と便利さは紙一重。でも、私はこのグラフィックが好きだ。
色鮮やかだと目がチカチカしてきやすい人は注意が必要かも。
サウンド
3.5
サウンドは、基本的に環境音のみ。鳥が鳴く音とか、水が流れる音とか。
ああ、癒される。と思ってたら、物語の雰囲気が変わって来るあたりから不穏なBGMに。
終盤はもはや癒しには程遠い状態で、BGMが不気味。
総合評価Summary
3.5
物語の魅力
ゲームプレイの快適さ
ゲームとしての面白さ
芸術性
良いところ
意外な方向に進んでいく物語
映像からリスの行動を割り出す独特なシステム
個性的なアートスタイル
残念なところ
操作が面倒くさい
グラフィックのせいで見づらい場所がある
オススメな人
個性的なゲームに興味がある
数時間で攻略できるゲームを探している
リスが好き
オススメではない人
快適な操作性じゃないと我慢できない
目がチカチカしやすい
3D酔いしやすい人
ミニマルなアートスタイルな配色が好きならコチラもおすすめ。オシャレで不思議な世界のパズルアドベンチャーゲーム。
行方不明になった夫を探すため、痕跡を辿って不思議な島を探索していくパズルアドベンチャーゲーム。本作と同じく意外な方向に物語が展開していくのがミステリーな雰囲気が魅力。
NUTS
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