『SEASON A Letter to the Future』レビュー: 終末に向かってチャリをこぐ – シーズン 未来への手紙
『SEASON A Letter to the Future シーズン 未来への手紙』とは、Scavengers Studioが開発したアドベンチャーゲーム。
3Dで描かれる世界を3人称視点でプレイする。
本作は、PS5、PS4、PCでプレイ可能。私はPS版をプレイ。
本作の特徴や魅力、そして実際にプレイして感じた感想と各要素の評価をネタバレなしでレビュー。本作に似たゲームも紹介する。
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あらすじStory
旅立ちの朝
この世界には「季節」がある。
そして、もうすぐ今の季節が終わってしまう。
村の長老が、そんな訳の分からない預言を口にした時、主人公は旅に出ることにした。
…は?季節って何ですか?秋から冬に変わるってやつじゃなくて?
実際にプレイしていても、冒頭では「?」で頭の中がいっぱいだ。
とりあえず、主人公は何かの使命を感じて故郷キャロ村から旅立つそうだ。
その旅立ち朝から物語が始まる。
季節の名残
主人公は、自転車に乗って村から出発する。
キャロの村は特別な村らしく、季節の影響を受けないそうだ。主人公含め誰も村の外に出ないらしい。
そんな安心安全なキャロ村を出て、主人公は外の世界の物や風景や音を記録していく。前の季節の物があちらこちらに残されている。
彼女が見聞きしたことを書き綴っていく日記は、きっと未来の誰かに届くはずだ。
それこそが、彼女の使命だという。
ティエン谷
様々な景色を見ながら進んでいった先で、主人公はティエン谷に着く。
旅立つ前に、村の長老が危険だと教えてくれていた谷だ。
ティエンの谷では、これから老朽化したダムを壊す予定になっており、住民のほとんどが避難してしまっている。
主人公は、水に全てが流される前に谷の記録を集めていくことに。
そこかしこで、思い出を忘れられないとか時間感覚がなくなってしまうという不思議な病の存在を感じながら。
主人公は、何を見て、何を耳にして、誰と出会うのか。そして、何を記録に残すのか。
「季節」とは何なのか。なぜ終わるのか。不思議なロードトリップが始まる。
ゲームの特徴Features
チャリ旅
本作は、バトル要素は一切ないアドベンチャーゲーム。
自転車に乗って各地を旅していく。自転車を降りることも可能。
自転車は、PS版ではR2とL2ボタンを使用して、右足で漕ぐ左足で漕ぐという本当に自転車を漕ぐように操作する。
狭い場所では自動的に自転車から降りてしまうので、自転車では道なりに走り、細かな部分は歩いて探索することになる。
記録する
本作のメインは記録することと日記を書くこと。
特徴的な物や風景を写真に撮ったり、その場だけで聞こえてくる音をレコーダーで録音する。
際限なく記録をとることは出来るけれど、特定のものを記録すると、主人公がそれに関しての感想を呟く。
そして、エリアごとに見開き2ページで日記を作成する。
写真やスケッチや主人公のコメントを、ページの上に好きに配置して作成する。
一定数の記録を配置すると、そのエリアに関しての結末となる主人公の締めくくりの文章がアンロックされる。
これをエリアごとに行なっていくことになる。
情報を探し出せ
旅の最中には、特定の事柄に関してのページを作成することがある。
何かの謎について追跡調査するといった感じで、集めるべき情報が日記のページ上に提示される。
それに合致する写真や録音や資料を集めて、日記作成と同じ要領でページに貼り付ければいい。
日記と同じく、全ての情報を集めると主人公が導き出した結論の文章がアンロックされる。
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各要素の評価と感想Rating
物語の面白さ
4.0
何が何で何なんだ。誰か説明をしてくれ!
と思いながら、チャリを漕ぐ。
すると、気持ち良い。終末が近いというのに、ゆったりした時間が流れている。
「説明してくれ!」という欲求は、徐々に「不思議は不思議でいいんだ、細かいことは気にしない気にしなーい」と穏やかな空気に溶けて消えていく。
でも、ちゃんと物語を理解することはできる。
本作では詩的に表現される「人間の記憶というもの」に自分なりの考えを巡らせてみる。
そして、各所に散りばめられている世界の謎を解くヒントから、「季節ってそういうことか」と概念のように本作の世界を理解していく。
この「自分なりに考えて感じる」が必要で、「訳分からーん」とチャリで爆走して終わったら、それまでだ。
主人公と共に世界を味わって感じる物語だ。ちゃんと物語はあるけれど、いい意味で雰囲気ゲーな感覚も味わえる。
キャラクターの魅力
4.0
主人公は、ゲーム全体の雰囲気と同じく、とても穏やかで感受性豊か。
何かを見つけたら、彼女なりのちょっとした一言がナレーションで語られるんだけど、どれも素敵な一言だ。
どれだけ不思議なものを目にしても「な、な、なんじゃこりゃー!」と焦ったりはしない。彼女の語りによって更に落ち着いた時間が過ごせる。
ただ、その分、訳分からず右往左往するプレイヤーだけが置いていかれてしまう。
NPCは、それぞれ訳ありで印象的な人たちだ。
彼らのセリフも詩的なものが多いけれど、時々心にグサッとくるセリフや、思わず涙してしまうセリフもある。
セリフは一文ずつ表示されるので、バンバン飛ばして読むより、ゆっくり時間をとってセリフを味わいながらプレイするのがおすすめ。
操作性
4.5
操作は分かりやすいし、挙動も問題なし。ゲームプレイで困ることは一切ない。
本作で1番気に入ったのは、自転車の運転だ。
L2とR2ボタンを交互に押して本当に自転車を漕いでいる感覚になるし、さらにPS5版ではアダプティブトリガーとハプティックフィードバックが良い仕事をしている。
漕ぎ始めや上り坂ではボタンが重くなり、砂利の上を遠ればガタガタとコントローラーが振動する。
本当に自転車で気持ち良くロードトリップしているような感覚になる。
自転車目的で本作をプレイしてもいいくらい。特に下り坂を疾走する気持ち良さは格別。
難易度バランス
4.0
ゲーム攻略自体は全く難しくはない。
ミスなんて概念はないし(チャリでずっこけたり衝突事故を起こすこともない、主人公が自動でブレーキをかけてくれる)、各エリアの結末の文章もすぐにアンロック出来る。
ただ、全てを記録して物語をしっかり理解しようとなると、なかなか大変だ。
ロードトリップを超えて、もはや名探偵の綿密な調査のように隅々まで探索して記録をとりまくらなければならない。
ゲームシステム
4.0
ゲームとしてはシンプル。
写真を撮ったり録音して、記録を日記に並べていく。
でも、その一つ一つが楽しい。にぎやかワイワイ楽しいのとは違って、旅行記を書き続ける1人で静かに味わう楽しさだ。
日記に写真やイラストを好きに配置して(微調整ややり直しももちろん可能)、完全に自己満足で手作りスクラップブックを作っていく。
この作業が心地良い。なんだか一種のセラピーみたいな感じだ。
しかも、それが単に作業というわけではなく、世界の謎を解き、未来に遺るものとなるので、余計にこだわりたくなるし、やる気も続きやすい。
何かを作る作業が好きな人なら没頭するはず。
とんでもなく作業が嫌いというわけでなければ、飽きないボリュームとテンポで楽しめる。
やりこみ要素
4.0
どれだけの記録をとって、どれだけ日記をこだわって作るか、これがやり込み要素だ。
ちなみに、主人公によるひと言が発生しない風景や音であっても、日記に加えていくことができる。
ゲーム自体は、NPCに会ってイベントを攻略するごとに進行していく。
ゆったり楽しみたい人は、NPCに話しかけるのは後回しにした方がいい。
グラフィック
4.0
イラストが3Dになったグラフィックだ。
高精細というわけではないけれど、色づかいや描き込みの緩急が絶妙で、美しい自然の風景が楽しめる。
写真を撮りたくなる雰囲気の良い景色ばかりだ。
そこに神秘的で宗教的な物や遺跡、ポストアポカリプスっぽくも見える廃墟もあり、美しい。
サウンド
4.5
本作は、風景とあわせて、自然の音がたくさん聞こえてくる。
虫や鳥の鳴き声から、水が流れる音や風が布をはためかせる音など。
癒しだ。そのままASMR動画になりそうな勢いで癒しだ。
自転車に乗って速度が上がると、風をきるビューンビューンという音もするし、耳が幸せ。
また、本作はフルボイスで日本語吹き替えにもなっている。
字幕とボイスがちょっと違ったり、なぜか同じセリフが連続するなど、気になるところはありつつも、落ち着いたトーンのボイスなので、これまた心地良い。
総合評価Summary
4.0
物語の魅力
ゲームプレイの快適さ
ゲームとしての面白さ
芸術性
良いところ
風景も音もゲームプレイも癒し
ロードトリップを楽しめる
自転車を漕ぐリアルな感覚が味わえる
不思議で興味そそる世界設定
残念なところ
具体的に分かりやすく世界設定を説明はしてくれない
オススメな人
癒されたい
日記やスクラップブックを作るのが好き
自転車が好き
不思議な体験をしたい
オススメではない人
作業が嫌い
探索するのが面倒くさい
ゆっくりしたい気分じゃない
はっきり物語が分からないとイライラする
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SEASON A Letter to the Future
終末に向かってチャリをこぐ
不思議な世界の物語を追いながら、未来に遺すものを記録していくアドベンチャーゲーム。 美しい風景を写真に撮り、心地よい音を録音するといった癒しのゲームプレイが魅力。 自転車を漕ぐ気持ち良さも味わえるロードトリップが体験できる。
SEASON A Letter to the Future シーズン 未来への手紙
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