レビュー【エリクスホルム 奪われた夢】北欧の緊迫かくれんぼ | 物語に没頭するステルスゲーム | Eriksholm: The Stolen Dream

美しくも裏では良からぬことが起こっている北欧の街をステルスで進むアクションアドベンチャーゲーム『エリクスホルム: 奪われた夢 Eriksholm: The Stolen Dream』のネタバレなしレビューも攻略情報も詳しく掲載。
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- ストーリー
- 主人公ハンナが警察や警備の目を盗み、行方不明になった弟を探すうち街の裏事情にも迫っていく物語
- 攻略
- キャラごとに異なるアクションを使い分け、環境も利用しながら進むステルスゲーム
- 評価
- キャラの特技や環境を組み合わせて進むパズルのようなステルスが面白く、物語にも没頭できる良作
エリクスホルムの概要
タイトル | Eriksholm: The Stolen Dream エリクスホルム: 奪われた夢 |
---|---|
開発元 | River End Games |
販売元 | Nordcurrent Labs |
発売日 | 2025年7月15日 |
対応機種 | PS5, Xbox, PC |
ジャンル | アクションアドベンチャー |
シリーズ | 新規IP |
プレイ機種 | PC(ゲームパッド使用) |
エリクスホルムのストーリー
ハンナとハーマン姉弟

本作の舞台は、1900年代初頭の北欧をベースにしたエリクスホルムという街。
エリクスホルムには港や工場や鉱山もあり、巨大都市とまではいかないけれど長い歴史を持つ美しい街だ。
それなりに栄えている、と思われる。
というのも、1900年代初頭のヨーロッパといえば産業革命の後半あたりだ。
元気いっぱい勢いづいている産業もあれば廃れていく産業もあり、新しい企業が台頭したり、成金もいれば仕事を失う人もいる。
そんな時代の煽りを受け、エリクスホルムの街にも華やかな面もあれば貧しい面もある。
そして、そんなエリクスホルムの街で暮らしているのが、本作の主人公ハンナと重要人物となるハーマンの2人姉弟。
残念ながら2人はエリクスホルムの華やかな面とは無縁な生活をおくっていたけれど、2人仲良く逞しく生きていた。
美しい街に隠された秘密

本作の物語は、ハンナが心臓痘という最近エリクスホルムで流行っている病から回復したところから始まり、自宅で休んでいたハンナのもとに突然警察が訪ねてきた瞬間から大きく動きだす。
やたらと偉そうな警察は弟ハーマンを捜しているという。
しかし、肝心のハーマンはというと、なぜか仕事から帰ってきていない。
いつもならとっくに帰っているはずの時間なのに。
「弟が何か良くないことに巻き込まれている」姉ならではの弟守らなきゃセンサーが発動したハンナは、ハンナをも取り調べようとする警察を出し抜き街へと飛び出した。
この街の警察は貧しい子供の味方ではないこと、そして信用もできないことを訳ありハンナは知っている。
警察よりも先にハーマンを見つけなければならない。
病み上がりとは思えないほどパワフルなハンナお姉ちゃんの弟大捜索が始まった。
エリクスホルムの攻略情報
物語主導型ゲーム

本作は章立ての物語に沿って進行する物語主導型のアクションアドベンチャーゲームだ。
各章内では様々な場所を訪れ、画面上にも表示される目的地を目指して進んでいく。
目的地に到達するとまた次の場所に移動し、物語もゲームも進行する。
後戻りはできないけれど、攻略済みの章はリプレイができる。
目的地までの道中には脇道もあり、メモ書きや収集品を拾うことができる。
こうしたアイテムを手に入れると、その内容に対しての感想や思い出などが語られ、本作の世界や人物背景をより知ることができる。
そして、各章の最後にはその章のクリアまでにかかった時間や回収できた収集品の数が表示される。
これはやり込み要素であり、収集品全てを手に入れていないからといってゲーム進行に支障が生じることはない。
ステルスプレイで進む

本作のゲームプレイのメインは、ステルス。
敵に真正面から攻撃を仕掛けるような大胆アクションはない。
ただし、ステルスキルはできる(正確には気絶させている)。
ゲームが進行すると仲間も加わり、ハンナ含め各キャラの特技を活かして警察など敵の目を掻い潜って進んでいくことになる。
例えば、ハンナは麻酔薬を吹き矢で打って敵を眠らせることができたり(ものすごい特技だ)、狭い通気口などを進むことができる。
しかし、矢が敵に当たっても麻酔が効くまでには一定時間かかり、麻酔でウトウトしつつも振り返った敵に見つかってしまえば敵を総動員されてゲームオーバーとなる。
このようにキャラごとにできることも進める通路も異なり、長所も短所も異なる。
操作キャラはパッパッと十字キーで切り替えることができるので、適材適所でキャラを使い分けたり互いに協力させ合って進んでいくことになる。
ちなみに操作していないキャラはキャラ切り替え時にいた場所でじっと待機することになる。
待機中のキャラが敵に見つかってしまうことももちろんあるので、どこで待機させるか注意しておかなければならない。
一方で、敵はハンナ達を目視したり物音を聞くと警戒状態になり、怪しい方へ目を向ける。
これを利用して敵を誘導することもできるけれど、敵に見つかってしまえばゲームオーバーとなる。
見つかった後に大爆走して敵を撒くといったプレイは本作ではできない(目視されてから「見つかった」になるまでは一定時間の猶予はある)。
さらに、麻酔薬などで倒れた敵が他の敵に見つかった場合も即時ゲームオーバーとなる(敵が総動員されて逃亡不可能になるということらしい)。
しかし、倒れた敵は運ぶことができるので、物陰に隠せば大丈夫だ。
ちなみにゲームオーバーになると直前のチェックポイントからやり直しとなる。
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エリクスホルムのレビュー
物語: テンポ良く展開し、惹き込まれていく

本作は物語主導型ゲームであり、それも納得なくらい物語がしっかり描かれている。
細かい自己紹介や状況説明をしてくれる人はおらず、キャラ同士の会話から「この2人は過去に仲違いしたんだな」とか「この会社が街を仕切っているんだな」など察しながらプレイする。
そもそもハンナは追われている身で事態はどんどん変化するので、各キャラがご丁寧に自己紹介している暇などない。
語られすぎず、しかしあれこれ推察できる情報が自然に流れてくるので物語に入り込みやすく、最初から一気に夢中になった。
カットシーンではキャラの表情も豊かで感情移入もしやすく、物語が展開していくテンポも良い。
現代にも通じる歪な社会構造への人々の不平不満も描かれており、あちこちから聞こえてくる会話の内容が面白い。
モブキャラ同士の会話であろうと「今日はいい天気だね」といった当たり障りない会話で終わることはない。
そこかしこで大なり小なりドラマが展開しており、盗み聞きするのが楽しい。
そして、肝心の主軸であるハーマン失踪の謎も常に興味を引き続けてくれ、「え!」と驚く場面も心温まる場面も「うわ、どどどどうしよう」と緊迫する場面もある。
ステルスゲームなので常に「静かに、静かに…」と思っているけれど、物語は感情豊かだ。
操作性: 分かりやすく良好、やや視認しにくい場面あり

キャラの切り替えはスムーズで各キャラの操作も分かりやすく、操作性は良好。
敵視線の当たり判定(?)も精度高く、影からちょびっと足がはみ出ただけでも目ざとく見つけてくる。
カメラのズームインもズームアウトも180度自由な回転もでき、さらにキャラから離れた地点へも視点を動かすことができる。
この充実したカメラ機能が「どう進もうか」と考える際にかなり役に立ち、ステルスプレイがより一層面白くなっている。
高低差に富んだマップが多く、キャラ同士が立体的にも離れていることが多くなるけれど、位置関係を把握しやすくプレイしやすい。
敵が何に警戒しているかといったアイコンやUIも無駄なく分かりやすい。
気になったところはというと、暗いマップで敵の服装も暗めなことがあり、初見だと敵がどっちを向いているかが分かりにくい場面があった。
かといって、警察の制服がピカピカのネオンカラーというのもおかしな話なので、できればカメラでもう少し近くまでズームインできると良かった。
難易度: 見逃してはくれない、パズルのようなステルス

本作に難易度設定はない。
しかし、チェックポイントがかなり小刻みに用意されており、失敗してもすぐに直前から再挑戦できる。
本作のステルスはアクションの上手さではなく、「こっちの敵をあっちへ誘導して、その隙にこのキャラを移動させて」といったアクションと順番を組み合わせて攻略する考えるステルスゲームだ。
もちろんタイミング良く動くことも求められるけれど、ギリギリでカツカツなタイミングではない。「間に合わなさそう」と感じる時は攻略方法を間違えていると思った方がいいくらい、タイミングにはちゃんと余裕がある。
一方で、本作の敵たちは視力がかなり良く、ちゃんと警備しているので、常に丁寧なプレイが求められる。
成功する道筋を立ててから動くのが鉄則で、「とりあえず動きながら考えてみよう」が通用する相手ではない。
攻略に詰まるような難しさではないけれど、味方がベラベラとヒントを喋り倒すこともなく、謎解きや環境を利用したステルスも多い。
章が進むにつれ着実に攻略方法は複雑になり、悩み考えることを楽しめる難易度バランスになっている。
システム: 純粋にステルスを楽しむ

本作は隠れるという純粋なステルスだけで物語に没頭する、物語主導型ステルスゲームという表現そのものなゲームだ。
正解の攻略方法はほぼ決まっており、成長要素もスキル強化などもなく、またハンナの吹き矢は無限だったりと物資を管理する必要もない。
しかし、物足りなく感じることはない。
マップ構造の面白さが本作の大きな魅力であり、味方それぞれが別々の場所から互いをサポートするなどマップを大きく使ったパズルのようなステルスが面白い。
大きな音が鳴る機械があったり暗闇を作ったり場所によってギミックも地形も明確に変化するので、考える面白さが途切れない。
また、本作では敵やNPCがあちこちで会話している。
会話はオマケではなく、その内容が敵の動きにちゃんと反映されて状況が変化するので、会話を聞いている間も緊張感が保たれ攻略法を考える時間になっているのが面白い。
会話中や会話後に敵の向きや位置が変わることが多く、「あっち向け、あっち向け、しめしめ」「なに!?こっちに向かってくるだと!?」とハラハラしながら盗み聞きすることになる。
芸術性: 多彩な光景を楽しめる美しい3DCG

アクションを起こせるものは金色に光る
本作の影の主役はエリクスホルムの街。
海辺の景色や風情ある建物に陽の光が当たったり街並みが美しい。
雑多だけど生活感がありあたたかみのある下町から、産業革命を感じる工場や不気味な鉱山、煌びやかな富裕層の邸宅など章によってガラッと風景が変わるのも、どんどん先へとプレイしたくなるポイント。
大通りを大手を振って歩けるわけではないけれど、この美しい風景も本作の大きな魅力の一つだ。
そして、音の要素もあるステルスゲームなので、当たり前だけどBGMは控えめだ。
しかし、上述もした通り本作は会話が豊富なので「静かだな」と感じることはほぼない。
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エリクスホルムの総合評価
Eriksholm: The Stolen Dream

総合評価
マップをうまく使った考えるステルスを楽しみつつ、先が気になる物語に没頭する良質アクションアドベンチャーゲーム。敵の会話や環境を使ったパズルのような面白いステルスを味わえる。
長所と短所
良いところ | 考えるステルスプレイを楽しめる マップ構造が面白い | 物語への没入度が高い
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残念なところ | 敵を視認しにくい場面が一部ある |
こんな人におすすめ!
おすすめな人
- ステルスプレイが好き
- 物語を楽しみたい
- 謎解きが好き
おすすめではない人
- アクションゲーム寄りのステルスを期待している
- 自由度高いゲームを探している
- どんどん強くなりたい
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The Stone of Madness
- それぞれ特性の異なる5人のキャラを使い分け修道院からの脱出を目指すリアルタイムストラテジーゲーム
- 敵に見つかるとゲームオーバーではなくトラウマが蓄積していくシステムが特徴
- 成長要素や物資管理もあり、歯ごたえしっかりめ

シリアルクリーナーズ
- キャラによってできることが異なる殺人現場の掃除屋さんとなるステルスアクションゲーム
- 犯人側のために証拠隠滅や血痕を綺麗にするといったユニークな設定が魅力
- こちらでは敵に見つかっても隠れて逃げきることができ、大胆なプレイもできる