『Golf Club Nostalgia』レビュー: ボールの先に見えるもの『ゴルフクラブ ノスタルジア』(旧 Golf Club Wasteland)
『Golf Club Nostalgia ゴルフクラブ ノスタルジア』とは、Demagog Studioが開発したパズルアドベンチャーゲーム。
発売当初の『Golf Club Wasteland ゴルフクラブ ウェイストランド』からタイトル名が変更されている。
本作と同じ世界が舞台の次回作『The Cub』も発表されている。
本作は、PS4、Nintendo Switch、Xbox、PC、iOS、Androidでプレイ可能。私はPC版をプレイ。
本作がどんなゲームか、そして実際にプレイして感じた感想と各要素の評価をネタバレなしでレビュー。本作に似たゲームも紹介する。
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あらすじStory
地球
本作の舞台は未来の地球。
しかし、地球では大きな災害が起こってしまったそうで、人間が住める環境ではなくなった。
そのため、人間、というか、富裕層の人間たちは火星へ移住したようだ。
富裕層ではなかった人はどうなったかというと、地球に取り残されて全滅してしまった。
ゴルフ
物語は主人公の男性が地球に降り立ったところから始まる。
彼は、廃墟と化した地球をコースにしてゴルフを行うという、お金持ちの道楽の極みのようなゴルフクラブに所属して、火星から地球にやって来たようだ。
しかし、彼は1人だ。他のクラブ会員やキャディさんもいない。
そして、彼は立ち入り禁止区域に向かってボールを打ち飛ばし始める。
彼は一体何者なのか。彼が地球に来た本当の目的とは?
ゲームの特徴Features
ボールを打ち続ける
本作はコースクリア型でゲームが進行する。クリア済みのコースはリプレイも可能。
スタート地点からゴルフクラブでボールを打ち、カップインすればクリアだ。
主人公の移動は操作せず、左スティックで打つ方向と力強さを決めて決定ボタンを押せばゴルフボールが打ち出される。
ボールが止まった地点に主人公が自動的に移動するので、また狙いを定めて打つ。これの繰り返しだ。
もし手詰まりになってしまった場合でも、いつでもスタート時点からやり直すことができる(一打ずつ戻るといったことは出来ない)。
パーと日誌
各コースには一定打数でクリアする目標が設定されている。ゴルフのパーだ。
ゲームスタート時に、目標打数以下で攻略しないと次に進めないモードか、打数関係なくカップインさえすればいいモードかを選択できる。
どちらでプレイしたとしても、各コースの目標打数以下でクリアすると個人日誌がアンロックされていく。
日誌には、主人公の思いが綴られており、これによって本作の物語を知ることができる。
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各要素の評価と感想Rating
物語の面白さ
4.0
新たなコースに進むごとに、主人公ではない誰かの語りが表示される。
そう、実は誰かがいるのだ。
主人公の過去と、地球での誰かと主人公の出来事、この2つが少しずつ明らかになっていく。
また、本作では常にラジオが流れている。火星に移住した人たちが聞いているラジオらしく、音楽と共にリスナーからのコメントもあり、この世界の事情がどんどん分かってくる。
カットシーンなどの描写ではなく、周囲に目や耳を傾けることで少しずつ物語が分かってくる仕掛けが面白い。
廃墟ゴルフを気ままに楽しむゲームかと思いきや、とびきり切ない結末へと向かっていく物語を辿ることが出来る。
タイトルに違わず、ノスタルジーな気分になる。雰囲気も最高。
キャラクターの魅力
4.0
基本的に主人公のみ。
上述した「誰か」の気配はあるけれど、ゲームプレイでは主人公が黙々と1人でゴルフを続ける。
主人公にセリフはないけれど、ボールがあと少しでカップインしなかった!という惜しい場面では、画面の前の私と同じく主人公も悔しそうなリアクションをしてくれるし、徐々に主人公に愛着が湧き始める。
そして、終盤からの展開は切なさで胸がキュッとなり、いつしか主人公の人生に思いを馳せて涙ぐんでいたほど、彼に感情移入していた。
物語やキャラクターの描写は少ないけれど、様々な感情が湧き起こる。
過不足なく綺麗にまとまった物語だ。
操作性
4.0
スティック操作のみでボールを操る。操作自体は簡単。
でも、本気のゴルフゲームのように風向きを読んだり、地面をチェックしたりということはないし、クラブの持ち替えも出来ない。
実は、本作ではゴルフをしているけれど、スポーツのゴルフゲームではない。
ピンボールゲームとも言えるけれど、ボールをどう飛ばすかというパズル要素のあるプラットフォームゲームだ。
そのため、繊細なショットの調整は難しいし、思った通りの飛距離や軌跡に出来ないことも多い。
操作性は良好だけど、ゴルフゲームのような細かさを求めることは出来ない。
難易度バランス
4.0
まず、ゴルフに適したコースは一切ない。
思わず「ここでゴルフする必要ある?」と言いたくなる。
廃墟なので、狭い足場や崩れた壁や穴ボコだらけだ。
上述した通り、本作はプラットフォームゲームであり、ボールを上の足場に上手く乗せたり、障害物を避けるショットが必要だ。
勢いよく打ってしまうとボールが転がりすぎて足場の端から落ちてしまい、かなり前の地点からやり直しになるなんてことも多い。
ギミックのあるコースもあるので、ゲーム後半のコースになると初見からパー達成は難しい。
そのため、コース数は少なめだけど、あっさり終わりとはならない。
でも、打数無制限のモードもあるし、何度も失敗しているとコース自体をスキップすることも出来るので、詰んでしまうことはない。
ゲームシステム
3.5
ゲームとしては、ただただボールを打つだけ。
コースを経るごとに難しくなるしギミックも登場するけれど、ゲームプレイに変化はほぼなく、コース構成のバラエティも少なめ。
本作はポストアポカリプスな廃墟でゴルフをするという設定が面白く、雰囲気や物語を楽しむ方がメイン。
飽きないうちに物語を堪能して終わるコンパクトにまとまったゲームだ。
やりこみ要素
4.0
各コースを目標打数以下で攻略し個人日誌をアンロックするのが、1番分かりやすいやり込み要素。
主人公の身の上をより知ることが出来る。
また、コース上にはちょっとした何かが隠れていることがある。隠し部屋もあったりする。
カメラの位置は好きに動かすことが出来るので、隅々まで見渡してから攻略するのがおすすめ。
グラフィック
4.0
手描きイラスト調のグラフィック。
全体的に青白い色が使われていて、そこにネオンの淡いピンクと、何らかの汚染物質と思われる鮮やかな緑とピンク色が効いている。色づかいが綺麗。
描き込みすぎず、でも、高度な文明の名残がちゃんとあって、ノスタルジックな雰囲気を高めている。
通電したままで動き続けている機械もあり、全滅していく人々の最期の日々を連想させる風景もあり、切なく寂しい。
それでいて、人間が住むことが出来ない状態とはいえ、なんだか美しい。
物語と同じく、グラフィックでも過不足なく世界が語られている。
サウンド
4.0
本作で1番記憶に残るのはラジオだ。
ゲーム最初からずっと流れ続けている。
うるさくない雰囲気のいい曲を挟みながら、ラジオのリスナーのメッセージやCMまでも流れてくる。本当にラジオを聴いている気分だ。
ただただ静かで崩壊した地球を眺めながら、火星での人間たちの生活ぶり聞こえてきて、その対比が皮肉めいているし、火星の様子が想像できる。
人間っていうのは、火星に行っても不平不満だらけだ。たくましいんだか、欲深いんだか。
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総合評価Summary
4.0
物語の魅力
ゲームプレイの快適さ
ゲームとしての面白さ
芸術性
良いところ
切なく美しい物語と世界
廃墟でゴルフという設定
残念なところ
ショットの繊細な調整は難しい
オススメな人
雰囲気を味わうゲームが好き
物語を楽しみたい
ラジオを聴くのが好き
オススメではない人
本気のゴルフを求めている
細かなコントロールが出来ないとイライラする
長時間遊べるゲームを探している
おすすめ類似ゲーム本作に似ているゲームはコチラ
The Cub
本作と同じ世界が舞台となる2D横スクロールアクションゲーム。こちらはゴルフではなく、パルクールアクションが楽しめる。
Yoku’s Island Express
打ってプラットフォームアクションを攻略するなら、こちらもおすすめ。ピンボールのように主人公(フンコロガシ)を打ち飛ばしながら探索する高評価メトロイドヴァニアゲーム。
Golf Club Nostalgia
ボールの先に見えるもの
ポストアポカリプスな地球を舞台にゴルフをしながら思い出を辿るパズルアドベンチャーゲーム。 ゴルフというより、ボールを足場に乗せていくプラットフォームゲームとして楽しめる。 切なくも美しい雰囲気や物語が魅力。
Golf Club Nostalgia ゴルフクラブ ノスタルジア
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