『深世海 Into the Depths』レビュー: 空気のありがたさを思い知る
『深世海 Into the Depths』とは、カプコンが開発したサバイバル要素のあるメトロイドヴァニアゲーム。
カプコンで2Dアクションというと『ロックマン』のイメージが強い。しかし、本作は『ロックマン』どころか、カプコンの他のメジャータイトルとは全く違った異色作だ。
本作は、Nintendo Switchでプレイ可能。私はApple Arcade版をプレイ(現在はApple Arcadeでの配信は終了)。
本作はどんなゲームか、その特徴や魅力と共に実際にプレイした感想と各要素の評価をネタバレなしでレビューする。また、本作に似ているゲームも紹介する。
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あらすじStory
潜海者
海中で何かの作業をしている潜水士(公式には潜海者と表現されている)1人。この人が主人公だ。
海洋調査の人かな?
そんなことを思いながら作業を見守っていると、主人公は空気が残っている隙間に置かれたベッドで休憩し始める。
どうやら、ここで生活しているようだ。え、どういうこと?
マイホームの終焉
海中という異色のマイホームでゆったりしていた主人公だったけれど、突然氷がバリバリバリー!と広がってくる。
主人公はレンチを片手に間一髪逃げ出せたものの、ささやかな隙間ハウスは氷に包まれてしまう。
分厚い氷に対抗する術もなく、潜水士は海に放り出されてしまった。
海底へ
水面の方へ向かおうとしても、頭上は氷だらけ。仕方ない、下に進むしかない。
片手に持ったレンチのようなものしか頼れるものはない。
しかし、海中を探索してると、怪しげな機械やら装置が見つかる。どうやら使うことができそうだ。
こうして見つけた道具や鉱石で武装しつつ、なにかの文明の跡を追うように海深く潜っていく主人公。
なぜ海は氷に覆われていくのか。海から脱出は出来ないのか。そして1番の謎、主人公は一体何者なのか。その答えを求めて海底へと潜っていく。
ゲームの特徴Features
何より大事なのは空気
主人公は人間(ずっと潜水スーツ姿なので正体は不明だけど)だ。海中を意気揚々と探検出来るわけではない。
空気が一番大切。
単にジッと立っているだけでも、潜水スーツと酸素ボンベに溜めた空気が消費されていく。酸素がなくなれば、もちろんゲームオーバー。
というわけで、酸素残量が本作の体力だ。
しかも、水中なので、のっそりのっそりとしか歩けない。
でも、潜水スーツから空気を噴出することでブースト移動が出来る。上方にシューーッ、横方向にプッシューー。素早く移動できる。
ただし、体力でもある酸素をハンパなくの消費することになるので、使い所には気を遣わなければならない。
敵がいっぱい
海中には危険がいっぱいだ。
主人公は気持ちよく泳いでいるだけなのに、海中生物たちは主人公が視界に入った途端襲ってくる。
更には、上方から崩れ落ちてくる岩石。どんどん迫ってくる氷。上述のブースト移動がうまくいかず海底に勢いよくぶつかってしまった時。全てが主人公にとってダメージとなる。
ダメージを受けると画面左上の酸素ボンベにヒビが入り一定量の酸素を失う。酸素がなくなって潜水スーツも壊れてしまうと溺死だ。海は怖い。
でも、新たな酸素ボンベは各地で拾うことができる。これで体力回復したり体力上限を増やすことができる。
海中サバイバル
本作は、メトロイドヴァニアゲームだ。
岩や遺跡の壁などで入り組んだ地形になっている海中を探索する。
各地で新たな装置を手に入れて、武器やスキルが増えると進める場所が広がっていく。
また、本作にはサバイバル要素もある。
近接攻撃できるレンチはいつでも使えるけれど、遠距離攻撃ができる銛などは素材を手に入れてクラフトしなければならない。ちなみに酸素もクラフトすることができる。回復アイテムだ。
地面をレンチでカァンッと叩くと、音の反響によって一定範囲内のアイテムの位置が分かるので、これをヒントにして素材を集めていく。
特定の素材を集めれば武器のアップグレードも可能。
水圧への挑戦
本作のメインストーリーは、深く潜るごとに進んでいく。
舞台は海中なので海水で満たされているわけだけど、一定の深さ以下は赤色の海水になっている。
どこかで大量の血が流れて…!?
というわけではなく、海水が赤色になっている地点以下の深さは「今の潜水スーツでは潜れませんよ」というサインだ。果敢に赤い海水へと潜っていくと潜水スーツが壊れてダメージを受けてしまう。
特別な鉱石を集めると潜水スーツ自体の強化ができて、更に深く潜ることができるようになる。
また、ゲームが進むと乗船中は酸素残量が減らない潜水艇やお供としてついてきてくれる潜水ロボット「潜導」も登場する。
各要素の評価と感想Rating
物語の面白さ
4.5
オープニングから謎だらけ。興味をひく謎がポンポンと登場してきて、テンポが良い。
各地で見つかる昔の記録と思しき情報を見ると、なんとなくこの世界のことが分かってくる。
なぜ主人公は1人だけ海中にいたのか。はっきりとテキストやセリフで語られるわけではないけれど、ヒントはたくさんあって、あれこれ想像するのが面白い。
意外な結末と美しいエンディングを迎える最後まで、考察しながら進むのが楽しい。
キャラクターの魅力
4.5
主人公は、潜水スーツをずっと着ているので表情は見えないしセリフもない。
でも、武器を取った時の「よっしゃあ!」な仕草やお供の潜水ロボとである潜導とのコミカルなジェスチャー合戦は見ていて面白い。
かなり愛着が湧く。
操作性
5.0
フワァンと浮かんだり、方向転換する時も水中ならではのラグがあったり。
プレイしていて、もどかしさを感じることが多い。それが良い。そういう仕様だ。
水中だとキビキビ上手く動けない!それがしっかり再現されてる。
独特な操作感に慣れたら、この水中感に病みつきになる。他のゲームではあまり味わったことのない新鮮なプレイ体験ができる。
メトロイドヴァニアというと、ジャンプしてもあと少し届かない場所(ゲームが進行すると到達できる)が名物だけど、本作は水中なので縦横無尽に泳げてしまう。
そういった点でも、他の多くのメトロイドヴァニアとは違ったプレイ感覚が味わえる。
難易度バランス
4.5
素材を集めて武器やアイテムをクラフトするので、やりくりにハラハラする。これが面白い。
そして、最大のハラハラを生み出す面白さは酸素残量だ。ダラダラしているだけでも命が削れていく緊張感が良い刺激になっている。
でも、素材が枯渇してしまって詰むようなことはないし、セーブポイントも小刻みに配置されている。良いバランス。
ゲームシステム
5.0
上述もしたけれど酸素残量のシステムが良い緊張感を生み出している。マップ構造も面白くて、隠れているアイテムも多いし、探索が面白い。
メトロイドヴァニアとして面白さに、酸素や資源のやりくりというサバイバル要素が上手く組み込まれている。
遠距離武器の種類が多いのでどの武器を作るか、またどのパラメーターを強化していくかという成長要素や、こっちはキビキビ動けないのに素早く攻撃してくる敵とのバトルも楽しい。
サバイバルなので、時には逃げて資源を温存するのも大切だし。
本作ならではのシステムがしっかり活きている面白いメトロイドヴァニアだ。
やりこみ要素
4.0
やり込み要素としては、オブジェクトを探し出したり、様々な海洋生物に遭遇して図鑑を埋めていくといったものがある。
オブジェクトはクスッと笑える物が多いけれど分かりにくく隠されていたり、特定の場所で一度しか遭遇できない海洋生物もいる。
しかし、マップは広大なわけではなくて、隅々まで探索しながらでも10〜15時間くらいでクリアできる。
グラフィック
4.0
不思議な海中風景。海中の自然は美しくて、そこに沈む文明の跡とのコントラストも良い。
一体何があったんだろうと妄想が膨らむ背景が続く。考察好きなら背景に注目しながらプレイするのがオススメ。
サウンド
4.5
本作への没入感を高めてくれるのがサウンド。
本当に水中にいる気分になる。それもそのはず。本作のサウンドは、実際に水中で録音されているそうだ。
海の中ということもあってか、癒される曲調が多い。
道中で水中から出る場面が何箇所かあるけれど、そこではちゃんと効果音含めての音の鳴り方が変わる。細かいところだけど、そういうこだわりのおかげで余計に水中にいる気分が高まる。
サントラはこちら
総合評価Summary
4.5
物語の魅力
ゲームプレイの快適さ
ゲームとしての面白さ
芸術性
良いところ
水中にいる感覚になる
サバイバルが楽しくて緊張感が続く
謎多きストーリー
探索が楽しい
残念なところ
無駄に壁にしがみついてしまう時がある
オススメな人
メトロイドヴァニアが好き
ハラハラドキドキしたい
個性的なゲームを探している
オススメではない人
極度の海洋恐怖症
機敏なアクションを楽しみたい
急かされるゲームが苦手
棄海 忘れられた深海都市
海中が舞台のメトロイドヴァニアなら、こちらもおすすめ。相棒のメカジキロボットで攻撃するという独特なバトルが特徴で、探索も物語も楽しめる高評価作。
ABZU
海洋探索が好きならコチラもオススメ。バトル要素はなく、探索がメインのめちゃくちゃ癒されるアドベンチャーゲーム。
深世海 Into the Depths
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