『Against the Storm』レビュー: 転勤続きの現場監督
『Against the Storm』とは、Eremite Gamesが開発したローグライクゲームであり開拓シミュレーションゲーム。
本作はPCでプレイ可能。なお、ゲームパッドでは完全な操作は出来ない。マウスとキーボードが必須だ。
本作がどんなゲームか、そして実際にプレイして感じた感想と各要素の評価をネタバレなしでレビュー。本作に似たゲームも紹介する。
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あらすじStory
悪天候
雨も雷も降り注ぎまくる大地。
お日柄が悪いこの世界は、どこもかしこも生き物にとって危険な地に成り果ててしまった。
そして、生存者たちはスモルダリングシティに身を寄せて暮らしていた。
しかし、ブライトストームと呼ばれる嵐は容赦がなく全てを破壊してしまう。
生存者たちは、このまま自然に屈していくしかないのだろうか。
生き残るために
いや、そんなことは女王が許さない。
おっかないスコーチ・クイーンだ。下手したら、ブライトストームより怖いって噂だ。
主人公は、そんな女王から遠征を命じられた総督。
なんと、スモルダリングシティから遠く離れた地にある古代の封印が眠る地に行けと命じられる。
古代の封印を起動したら、ブライトストームに打ち勝てるかもしれないというのだ。
しかし、主人公は何かやらかしたのだろうか。こんな嵐の中で遠征させられるなんて、もはや刑では。
総督の道のり
ところが、総督は単に古代の封印へ向かって進むわけではない。
封印は目的の一つであって、総督の最大の任務は各地に集落を築いていくこと。
そう、スモルダリングシティに皆んなで閉じ籠っているのではなく、シティ外に住み、そこで採れる資源をシティに持ち帰れと言うのだ。
これはかなり大変な仕事になりそうだ。
しかも、女王様は短気みたいなのでグズグズしている暇はなさそうだ。
ゲームの特徴Features
全てを破壊する嵐
ゲームは、世界の中心にあるスモルダリングシティから始まる。
シティから近い場所にまず集落を作り、出来上がったら、またその近くに集落を作る。突然シティから遠く離れた地に集落を作ることはできない。
しかし、この世界では一定周期でブライトストームが起こり、作った集落もろとも世界が一新する。そして、また始めから遠征が始まる。
それでも、集落を作るごとにスモルダリングシティに資源を持ち帰り、永続効果を獲得していくことができる。
また、集落をいくつか経てワールドマップに表示されている古代の封印まで到達できれば、ブライトストームが起こる周期を永続的に長くしていくこともできる。
開拓の手順
開拓は焚火と貯蔵庫から始まる。本作では住民たちは焚火で食事をとったり休憩したりする。生活の要だ。
そして、住民が住めるシェルターを作り、次にフィールド上で見つかる資源を採取できるキャンプを建て、資源を加工する施設も作っていく。
木を切って土地を拓いていく「木こりのキャンプ」や素材から食事を作る「調理場」など様々な設備が登場する。
本作の住民たちは、人間以外に、ビーバーやハーピーなど複数の種族がいて、みんなで協力して生活する。
種族によって得意分野や好みが異なり、各設備の作業員にはその作業が得意な種族を割り当てると生産性が上がる。
また、各種族には士気があり、好物など各種族の要求が満たされると士気が上がっていく。
女王様の指令
本作の開拓は充実した街を作り込むことではない。
画面下に表示される青い名声ゲージが溜まりきればクリアとなり、次の入植地へ向かうことになる。
しかし、赤いゲージもあり、これは「女王の怒り」だ。溜まりきると開拓失敗となる。
女王は刻一刻とキレていく。モタモタしている暇はない。
女王からは定期的にランダムな指令が届くので、指定の資源を送るなど司令内容を達成する。また各住民の士気を高め、古代の施設を探索して報告するなど女王の信頼を得る行動を行う。
そうすると名声は上がり、女王の怒りは下がる。
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各要素の評価と感想Rating
物語の面白さ
4.0
主人公の姿は見えず、ひたすら開拓の指示を行う。特に住民や女王からの伝達係と交流する場面もない。
というわけで、物語要素は軽めだ。
しかし、開拓の合間に自宅に戻ることができて、そこでは叔母と会話したりなど、ちょっとした物語を楽しむことができる。
でも、物語の描写は少なめでも、世界設定が面白い。
全てを破壊する嵐、うんうん、ゲームでよくありそうな設定だ。
古代の封印を求めよ、うんうん、勇者っぽいぞ。
じゃ、各地を開拓して来い。え!?
開拓シムといえば、お金持ちになろうとか理想の街の築こうというゲームが多いなか、かなり珍しい設定だ。そして、この設定が本作の面白さに直結している。
キャラクターの魅力
4.0
上述した通り、物語要素は軽く、主人公の描写もあまりないので、特定のキャラに愛着が湧くというわけではない。
しかし、ふと考えると、主人公に同情してしまう。
矢継ぎ早に届く短気な女王の指令をこなしながら、危険な労働環境で住民達の士気を高めつつ開拓プロジェクトを指揮し、軌道に乗ったかと思えば別の地へ赴任させられる。
集落の中に主人公がくつろげる場所を作ってあげたくなるくらい大変な板挟み状態の中間管理職だ。
そして、何よりもスコーチ・クイーンだ。本作プレイ中に嵐より怖いのは女王様。
女王の怒りはゲームプレイの刺激になっているけれど、本当にこんな女王様がいたら恐ろしすぎる。
操作性
4.0
キーボードとマウスを使うけれど、キーボードはカメラ操作くらいで、ほぼマウスで快適に操作できる。
本作はローグライトであり、登場する建物や効果はランダムだし、永続要素によるアンロックで徐々に増えてもいく。
でも、各建物や資源は右クリックすれば、その詳細がすぐに確認できるし、何が不足しているかなども分かりやすい。
また、施設の周囲にある資源が枯渇した際や、女王からの指令の進捗状況なども画面上に「お知らせ」として表示されるので把握しやすい。
しかも、その「お知らせ」をクリックすれば該当する施設などに自動でカメラが移動するので快適だ。
一見複雑そうに見えるゲームだけど、操作やUIが便利なので、実際にプレイしてみるとかなりとっつきやすい。
難易度バランス
4.5
開拓は、スモルダリングシティから離れるほど難しくなる。
それでも入植地を選択する画面では難易度を変更することが出来る。
ローグライクゲームなので、もちろんゲームオーバーありきの難易度になっている。
女王の怒りは時間経過で自動で増えていくし、森の敵意(木を伐採し開拓していると徐々に森が怒る、怒られてばっかりだ)によって住民の士気は下がりやすい。
それでも、指令をこなせばスッと名声が上がる。これによって難易度バランスが保たれている。
未知の空き地(木を伐採して新たに開けた場所へ到達する)でのランダムイベントを通して、女王や森の敵意を下げることも出来る。もちろんリスクもあるけれど。
歯ごたえはあるものの、本当に絶妙な難易度になっている。
ゲームシステム
5.0
開拓の序盤は楽しい。資源がカツカツななかで工夫し、どう街を作るかワクワクしつつも悩む。開拓シムにハマっていく瞬間の一つだ。
それを繰り返す、しかもローグライクで、というコンセプトがまず面白い。
そのコンセプトを活かすシステムも万全に揃っている。
種族による違いで適材適所を考えたり、女王の怒りというハラハラする要素、そして、木を伐採しながら先が見えない空き地へと進んでいくワクワクドキドキ感によって開拓中も常に新鮮さが続く。
そして、設備や資源も女王からの指令もランダムなので、常に今出来る範囲でどう応えるか最善を尽くすことになるので、やりがいも感じやすい。
各要素が本当に上手く組み上げられていて、絶対に熱中してしまうはず。プレイを始めると軽く廃人になりかけるので注意。
やりこみ要素
4.5
開拓を成功させると資源をスモルダリングシティに持ち帰り、永続要素をアンロックしていくことが出来る。
これによって出現する建物が増えたり、住民の移動が速くなるなど、より多彩に長くプレイ出来るようになっていく。
また、ワールドマップ上には、周囲の土地に特定の効果を及ぼす修正器が置かれている地もある。ハイリスクハイリターンな場所もあり、様々な地形でプレイしてみるのもやり込み要素だ。
また本作では開拓に成功したり、特定の条件を満たして実績解除すると経験値を獲得してレベルアップしていく。
レベルアップ時には新たな建物や効果がアンロックされるので、プレイを続けてレベルを上げていくのもやり込み要素だ。
グラフィック
4.0
本作の世界はダークファンタジーだ。そのため明るい絶景みたいな場面はない。
あと、よく悪天候に見舞われるので、美しくて見惚れる瞬間も特にない。
装飾品もある(効果付き)けれど、カツカツな暮らしなので見た目にこだわった街づくりとはいかない。
でも、カメラをズームするとそれぞれの建物はファンタジーな雰囲気溢れているし、焚火の周りで異なる種族が一緒に休憩している光景は微笑ましい。
ダークファンタジーとはいえ、意外と派手な色が使われているので、にぎやかな画面でプレイできる。
嵐で壊滅していく世界という雰囲気がしっかり味わえる。
サウンド
4.0
BGMも暗くてダークファンタジー、と思いきや、意外と穏やかなBGMが流れている。
雨季と乾季があり、特に晴れた時には癒しのBGMが流れる。
また、特定の建物を選択するとそこで作業している音が聞こえてくる。カメラをズームすると話し声も聞こえてくる。みんな仕事を命じられまくるけれど、意外と楽しく暮らしてくれているのかもしれない。
住民を各設備に配置すると「了解!」みたいな返事をしてくれるので、指揮官やってる気分も高まる。
総合評価Summary
4.5
物語の魅力
ゲームプレイの快適さ
ゲームとしての面白さ
芸術性
良いところ
開拓序盤の新鮮さを味わい続けられる
各要素が上手く噛み合っている奥深いシステム
操作しやすい
残念なところ
最初に覚えるルールが多め
街の作り込みは楽しめない
オススメな人
開拓シミュレーションゲームが好き
歯ごたえのあるゲームを求めている
ローグライトゲームが好き
オススメではない人
1つの街を拡充していきたい
時間制限など急かされるゲームが苦手
ランダム要素が好きではない
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Against the Storm
転勤続きの現場監督
集落が軌道に乗るまでの開拓序盤を繰り返すという新鮮さと面白さが続くローグライク要素のあるシミュレーションゲーム。
ランダムな指令や建物と資源、種族によって異なる特性など悩み甲斐のある要素が上手く噛み合っていて、繰り返しプレイしても全く飽きずに時間を忘れて熱中してしまう面白さ。
Against the Storm
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