『A Highland Song』レビュー: 北欧少女のアグレッシブ家出
美しい北欧の世界とケルト音楽に包まれながら、海を目指して疾走する『A Highland Song』をネタバレなしで要素ごとに詳しい評価を交えてレビュー。
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A Highland Song
製品情報Game Info
タイトル | A Highland Song |
---|---|
開発元 | inkle Ltd |
対応機種 | PC |
ジャンル | アクションアドベンチャー, 2D横スクロール, リズムアクション |
本作には、今のところ日本語版がない。
分かりやすい内容で長々としたセリフもないので高度な英語力は必要なく、全て英語だけど字幕が表示される。
ただし、本作ではスコティッシュイングリッシュ(スコットランドのハイランド地方で使われる英語)が使われているので、アメリカ英語とは使われる単語やスペルが異なっている。また、セリフは自動で流れていく(スピードは調整可能)。
文脈から知らない単語の意味を推測できる英語力があれば、物語を理解するのには問題ないと思う。
A Highland Songの内容Features
あらすじ
走り出した少女モイラ
スコットランドの田舎に建つ一軒家の2階の窓から身を乗り出した少女が遠くを眺めている。
お母さんのお小言が1階から聞こえてくる。
「モイラ、窓を閉めなさい!」
少女の名前はモイラだ。彼女は、この辺境の家から見える景色よりももっと先を見てみたいとずっと願っている。
特に、モイラは一度も見たことがない海に興味津々だ。
でも、過保護気味なお母さんが許してくれるはずはないだろう。
灯台を目指せ
世界に興味津々のモイラには楽しみなことがある。
それは灯台に1人で住んで暮らしているヘイミッシュおじさんとの文通だ。
いつもとりとめもない話題が多いけれど、今回の手紙には「モイラ、灯台にくるんだ、出来るだけ早く」と書かれていた。
これは、チャンスかもしれない!これをきっかけにするんだ!
モイラは、1階から聞こえてくる母親の声を背に、家を飛び出した。
灯台へ行こう!海を見るんだ!
山を越え谷を越え
走り出したモイラが進むのは、スコットランドのハイランド地方だ。
山や谷、そして崖が多く、灯台への道のりはとても平坦なものではない。
そんな厳しい自然のなかを走りながら、モイラはこの地に伝わる歴史と彼女自身の過去に思いを馳せながら、ヘイミッ主おじさんが待つ灯台へ急ぐ。
灯台では、いや海では何がモイラを待っているんだろうか。
ゲームプレイの特徴
体力勝負のハイキング
本作の目標は、家を飛び出してから7日後のBeltane(夏の始まりを祝うスコットランドのお祭り)までに灯台に辿り着くこと。
常にゲーム内時間が進んでおり、休憩したり、他エリアへと進む際には一気に数時間が経過する。
道中は山や谷だらけで、モイラはジャンプしたり崖を登ったり滑り降りたりプラットフォームアクションで進んでいく。
モイラには体力ゲージがあり、険しい崖を登ったり、ジャンプして着地に失敗したりすると体力が減っていく。
しかし、座って休憩すれば回復することが出来る。
また、地形だけではなく、天候にも注意しなければならない。雨が降ったり悪天候の間には、休憩しても体力が回復しない。
そして、夜になって快適な場所で眠ると体力を全回復できる。しかし、雨や風に晒される場所で寝ることになってしまうと体力ゲージの上限が減ってしまう(安全な場所で眠れば体力ゲージ上限も回復する)。
地図を探して、道を見つける
灯台へはいくつかの山を越えて行くことになるけれど、道のりは一本ではないし、正解の道が決まっているわけでもない。
本作のプレイは2D横スクロールだけど、画面奥にある山へと移動していく(最奥に灯台がある)。各山には次の山に移動できる場所が複数ある。どこから進むかによって次の山が変わるので、道のりはプレイヤー次第だ。
次の山への道は、歩きながら見つけることも出来るけれど、地図から発見できるものもある。
道中では地図(地形のスケッチが描かれた紙切れ)を手に入れることができる。
山や崖の頂上(Peak)で遠くを見渡すと、手持ちの地図の情報をもとに次の山へ移れる場所をマーキングしておくことができる。
また、各地ではアイテムを拾ったりNPCに遭遇することがあり、アイテムを使って箱をこじ開けたり、NPCに特定のアイテム渡すことで新たな道が開けることもある。
ケルト音楽音ゲーで爆走
特定の場所では、モイラ爆走モードをプレイすることになる。
通常の探索時とは異なるケルト音楽が流れてきたら、音ゲーが始まる。
音ゲー区間に入ると、モイラは自動的に走り始めるので、操作はBGMに合わせてボタンを押してジャンプするだけになる。
こうしてタイミング良くジャンプしながら音ゲー区間を走り終えると、報酬として、モイラがより長く走れたり、より高く崖を登ったり出来るようになる。
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A Hightland Songの評価Review
物語の面白さ
モイラは「海へ向かってモリモリ進むぞ!」と意気込んでいるけれど、全体的に穏やかで癒される雰囲気だ。
スコットランドの雄大な自然と歴史に想いを馳せながらハイキングするゲームだ。
しかひ、実は物語がゲームの需要な要素になっている。辿る道によって明らかになる物語が変わるからだ。
道中の特定のスポットやアイテムを調べると、モイラやヘイミッシュおじさんがエピソードを喋ってくれる(おじさんはナレーションで登場)。これによってハイランド地方の歴史だけでなくモイラの家庭事情も少しずつ明らかになってくる。
特にモイラの家族のことは気になるので、先を急がねばと思いつつ、あちこち調べ回ってしまう。
で、この辿る道によって明らかになる物語が変わるというのが、本作最大の魅力である周回プレイの楽しさに直結している。
ちなみに、私は初見プレイ時でも終盤あたりで泣いてしまった。そんな心ほっこり物語が味わえる。
キャラクターの魅力
モイラは、現状に満足せず広い世界へ飛び出したいティーンエイジャーならではのエネルギーに満ち溢れている。
基本的にモイラ1人だけの時間ばかりだけど、母親への不満や何かを見つけた際にジョークを言ってみたりなど、よく何かしら呟いているので、にぎやかな旅路が楽しめる。
一方で、モイラは自分は何者なのかを模索もしており、怖いもの知らずであるものの現実の厳しさも感じ始めている。思春期を経験した誰もが共感できる魅力的な主人公だ。
しかし、岩肌を素手で登り、崖から転落しても「捻挫しちゃったな」と言った次の瞬間に走り始めるし、野宿も厭わぬ驚異的なタフさを見せつけてくる少女でもある。
NPCたちは強烈な個性派揃いだ。辿る道によって会えるキャラも変わるので、この点でも周回プレイが楽しみになる。
操作の快適さ
上述した通り、モイラはめちゃくちゃタフなので常にキビキビ軽快に動く。
でも、坂道を登り続けると息切れしたり、滑り落ちることもあるので、リアルさも感じる操作性になっている。
というわけで、モイラを動かすことに関しては快適で気持ちいい。
ただ、セリフ表示中には調べられる場所がハイライトされなくなってしまい、調べる動作も出来なくなるので、セリフを聴きながら歩いていると調べられるものを気づかず通り過ぎてしまうのが気になったところ。
また、身動きがとれなくなってしまったバグが一回あったけれど、他は特にトラブルなくプレイできた。
難易度バランス
難易度選択はできないけれど、悪天候になる頻度や音ゲーになる爆走区間での操作の簡単さなどは設定でいじることができる。
私はデフォルト設定でプレイしたけれど、初見プレイで目標の7日より前に灯台に着くのは、なかなか大変だ。
地図を見つけられていない場所だと迷うこともあるし、あちこちに調べられる場所があって探索したい気持ちも無視できない。
頂上からよーく見渡して地図と同じ地形を探し出すのは間違い探しのような感覚で楽しいけれど、眺めている間にも時間は進んでいってしまう。
座って体力回復は出来るとはいえ、悪天候になることが多くてそんなに回復ばかりできないし、休みまくっているとすぐに時間が経ってしまう。
また、音ゲー区間での操作やリズムはそんなに難しくはないけれど、ミスをすると挽回できないので(転んでしまうと爆走が強制終了になる)集中力も試される。
ゲームシステムの面白さ
たくさんの分かれ道があり、その道のりによって明かされる物語が変わるというのが本作最大の特徴。
分岐要素のあるゲームは多いけれど、本作では、物語は同じでありつつ明らかになる事実が変わるというのが面白いところ。
しかも、あちこち調べずにゴールしてしまうと「灯台に走って行ってみた」だけの物語になる。
だからといって、しらみつぶしに探索する時間的余裕はないし、後戻りも出来ないので「あっちの道に行ったら何がわかったんだろう」という楽しみが残る。
また、ステージは2Dだけど3Dでもあるというのも面白いところ。
地面や崖の輪郭部分がモイラの進む道であり、輪郭が繋がっていれば前景の山から背景の山にもジャンプして進んで行ける。この感覚は単純に2D横スクロールとして走っているだけでも面白い。
やりこみ要素の楽しさ
やり込み要素こそ本作の醍醐味だ。
分かれ道を全て見つける、あらゆる道のりを辿ってみる、アイテムを見つけて回る、NPCへの受け答えを変えてみるなどなど、様々なやり込み要素がある。
ゲーム内でカウントされる項目としては、頂上(Peak)をいくつ見つけたか、頂上の正しい名前をどれだけ明らかにしたか(頂上に着く度に地図情報をもとに名前を推測する)、いくつの地図を見つけて場所を特定したかがエンディング後に表示される。
グラフィックの芸術性
モイラやNPCはイラスト調だけど、ステージや背景など風景は絵画調のグラフィックで描かれる。
プレイしていると絵の中を走っているような感覚になる。
ハイランド地方の雄大な自然が美しく描かれていて、頂上に立った時の眺めはどこもかしこも抜群だ。
サウンドの魅力
常に環境音とBGMが流れている。
探索中は癒しのメロディなBGMで、美しい景色を眺めてBGMを聴いているだけでも涙が出そうになる。
一方で、音ゲーな爆走区間に入るとアップテンポのケルト音楽が流れる。これがまた良い曲揃い。
実際にスコットランドミュージックバンドの曲が使用されており、本作プレイ後にはサントラと参加バンドのアルバムを絶対聴きたくなるはず。
サントラはこちら
\\本作BGMに使用されているバンドはこちら//
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A Highland Songが
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こちらもプラットフォームアクションを攻略しながら物語を辿るパズルアクションアドベンチャーゲーム。
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A Highland SongレビューのまとめSummary
おすすめな人
- 癒される雰囲気のゲームが好き
- 周回プレイが好き
- 個性的なゲームに興味がある
おすすめではない人
- 一回のプレイで全てを見たい
- 時間に急かされるゲームが苦手
- ヒントはしっかり欲しい
総合評価
- 軽快でリアルさもあるハイキングが味わえる
- 周回プレイが楽しみになる仕掛け
- 2Dと3Dが融合したステージとゲームプレイ
- 美しい景色と音楽
- 一回のプレイで全て明らかに出来ない(面白さでもある)
- 今のところ日本語版がない
A Highland Song
(c) inkle Ltd
https://www.inklestudios.com/a-highland-song/