『Harold Halibut』レビュー: 優しくて不器用で圧倒的な芸術作品 – ハロルドハリバット
ストップモーションアニメーションの中に入ってしまったかと錯覚するほど芸術性高いアドベンチャー『Harold Halibut ハロルド ハリバット』をネタバレなしで、攻略のコツと各要素の評価を交えてレビュー。
本作に似ているおすすめゲームや関連作も紹介する。
Harold Halibut製品情報
タイトル | Harold Halibut ハロルドハリバット |
---|---|
開発元 | Slow Bros. |
対応機種 | PS5, Xbox, PC, |
ジャンル | アドベンチャー |
本稿では、Xbox版のレビューを行なっている。
Harold Halibutの攻略
ストーリー
墜落したフェドラ
本作の舞台は、とある惑星の海に墜落した巨大な宇宙船フェドラ。
フェドラがそんな状態になるまでには、相当な紆余曲折があった。
まず、冷戦時代に地球はもはや安全ではないと考えた人々が宇宙船フェドラを作り、宇宙へ飛び出した。
それから約200年間、フェドラに乗った人々は様々な惑星に立ち寄りながら、住むことができる新たな惑星を探していた。
ところが、とある惑星近くを航行中にフェドラは太陽嵐に巻き込まれ、その惑星の海中へと墜落して沈んでしまった。幸か不幸か水盛りだくさんの惑星だったのだ。
それから約50年間、フェドラは海中から抜け出せないまま、乗客たちはフェドラの船内で生活を続けていた。
雑用係のハロルド
本作の主人公は、フェドラで暮らすハロルド・ハリバット。フェドラで日々研究を続けるマロー博士の助手を務めている。
助手とはいっても、ハロルドは研究者ではなく博士の雑用係という感じだ。
掃除や、誰かへの荷物や伝言を運ぶといった難しくはないけれど面倒くさいことを言いつけられることばかりだ。
しかも、博士からだけではなく、他の住人にもハロルドは面倒ごとを頼まれることが多い。ハロルドの頼まれると断れない遠慮がちな性格は、皆んなも知っているのだ。
再出発へ
こうして皆んなの便利屋さんとして暮らしていたハロルドだけど、ある日ハロルドだけではなくフェドラに住む全員にとっての大事件が起こる。
なんと地球からのメッセージが届いたのだ。フェドラの人々にとっての地球はとっくに戦争で壊滅してしまった先祖の故郷だけど、メッセージによると地球は無事だという。
フェドラは地球に帰るべきなのか、いや、そもそも海中に沈んだままのフェドラは飛び立てるのか?
そんな疑問が渦巻くフェドラの船内で、ハロルドには更なる事件が起こる。見たこともない色鮮やかな知的生命体と遭遇したのだ。
こうして「ヘマをしなければ御の字だ」と思っていたハロルドの毎日は、彼の予想を超える方向へと動き出した。
攻略のポイント
あっちへこっちへ、便利屋ハロルド
本作は物語主導型のアドベンチャーゲームで、いくつかの章に分かれている。
何をすべきかは明示され、そこかしこでNPCに話しかけて会話を楽しみつつメインストーリーを辿っていく。
ほんのりパズルも登場するけれど、移動と話しかけるくらいしか操作はない。
フェドラ内はいくつかのエリアに分かれており、オールウォーターチューブと呼ばれるフェドラ内交通網を使ってエリア間を移動することになる(フェドラは一隻の船という形ではなく、大小様々なカプセルのような部屋が繋がって形成されている)。
PDAで確認
NPCに話しかけるとサブクエストが発生することがある。
メインクエスト含め発生したクエストは、ハロルドが持つPDAで確認することができる。
PDAにはNPCからメッセージが入ることもある。メッセージを読むことがクエスト発生条件になることもある。未読無視しないようにご注意を。
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Harold Halibutの評価と感想
物語の面白さ
本作は物語を観るゲームであり、その物語はしっかり面白い。
まず、設定から興味がそそられる。SFっぽくなりそうな設定ではあるけれど、レトロフューチャーであたたかい雰囲気だ。
フェドラの行く末や不思議な種族など壮大な冒険譚になりそうだけど、プレイしてみると内省的な物語という印象だった。
あくまでもハロルドの視点から物語が描かれており、彼が何を考え、どう感じているかに主眼が置かれたハロルド物語だ。
自分って何だろう、人生をどう生きればいいんだろう。宇宙に行こうとも何百年経とうとも、人間の悩みは変わらない。
ある程度先が読める普遍的なテーマが描かれているので、驚愕の展開に椅子から転げ落ちるなんてことはなく、穏やかな気持ちで含蓄に富んだセリフを味わいながら楽しむゲームだ。
キャラクターの魅力
ハロルドは間違いなくゲームの主人公タイプではない。脇役のなかの脇役だ。
ハロルドは自他共に認める不器用マンで、ヘマをしていないか常に心配している。それでもドジを踏んでしまうけれど。
「明日は何事も起こりませんように」と願って眠りにつくハロルドの姿には胸がキュッとなった。いつしか「大丈夫、大丈夫、うまくやれてるよ」とハロルド応援隊として物語を見守るようになっていた。
一方で、ハロルドは空想も好きで、「こんな僕の人生にもドラマが起こらないかな」とも思っている。特定のイベントを見た際にハロルドがノートに描く絵を見ると、素晴らしい想像力を持っていることも分かる。
決して注目はされないし、取り立てて得意なことがあるわけでもない。でも、ハロルドは人間としてはかなり魅力的だ。ハロルドの誰に対しても真面目に耳を傾ける姿勢は、ヒーローにだって負けない能力だと思う。
もし強気で元気な主人公だったら本作の良さは半減しただろう。ハロルド自体が本作の大きな魅力だ。
操作の快適さ
移動と人に話しかけるくらいしか操作することはない。
移動スピードはゆっくりめだけど、走ることは出来る(それでもあまり速くはない)。
全体的にゆっくりしたゲームで、オールウォーターチューブでの移動でも乗り換えが必要だったり面倒に感じることもある。
でも、めちゃくちゃ爆速で快適移動だったら、本作の雰囲気がぶち壊しになってしまう。ゆったりした気持ちでプレイするのがおすすめ。
ただ、会話で選択肢を選ぶ際にテキストが表示されない部分があったので今後の修正に期待したいところ。日本語翻訳自体はかなり良い。
難易度バランス
物語を観るゲームなので、難しく感じることは何もない。
やるべきことは全てPDAに書かれている。
ただ、「〇〇に会いに行く」とだけ記載されるので、キャラの名前やその人がいる場所はある程度覚えていないフェドラ内を右往左往することになる。
とはいっても、そんなにキャラが多いわけではないので、自然と覚えられるはずだ。
ゲームシステムの面白さ
上述した通り、本作は物語を見るゲームだ。
ゲームとしてはかなりテンポがゆっくりで、謎解きやバトルももちろんない。
本作はストップモーションの手作りグラフィックと、その細部までの作り込みや芸術性の高さが最強の魅力。触って体験できるアート作品だ。
ゲーム画像を見て「わぁ!もっと見たい!」と思ったなら、是非おすすめしたい。本当にもの凄い手作業で出来上がっているグラフィックだけでも一見の価値のある作品だ。
逆に言えば、物語やグラフィックにハマらなかった場合、ゲームとしてだけ楽しむのは、やや厳しい。
やり込み要素の楽しさ
ハロルドが自由に動ける時は、特に目的がなくとも各地を回るのがおすすめ。
NPCのセリフが変わっていたり、サブクエストも発生する。 サブクエストを通して各キャラの事情も分かるので、積極的に話しかけていくのがおすすめだ。
そして、上述もした通り、特定のイベントを見るとハロルドはノートに落書きを描いていく。
サブクエスト以外でも、ある時点で特定のキャラに話しかけた際にしか描かれない落書きもある。どれも味のある良い絵ばかりばかりなので、より多くの落書きをアンロックするのが1番おすすめのやり込み要素だ。
また、PDAに表示されるクエストリストには、ハロルドの想いも書き込まれているので、クエスト確認しがてら目を通しておくとハロルドの気持ちをより理解することができる。
グラフィックの芸術性
本作最大の魅力がグラフィックだ。
実際に手作りした模型でストップモーションアニメーションのように製作されている。
本当に丁寧に作り込まれていて、そのまま短編映画になりそうだ。
レトロフューチャーな機械やインテリアも素晴らしくて、製作に使われた模型をじっくり眺めさせてもらいたいほど完成度が高い。もはやゲームというより芸術作品だ。
サウンドの魅力
物語が大きく動く時などにBGMが印象的に流れる。
その他の場面では、店内BGMや機械が動くガチャガチャとかピピピッという環境音が聞こえてくる。
また、ストップモーションではキャラの表情が乏しくなりがちだけど、セリフはフルボイス(英語音声)になっており各キャラに命が吹き込まれている。
本作と似ているゲームや関連作は更に下へ
Harold Halibutレビューのまとめ
おすすめな人
- 芸術性の高いゲームが好き
- 物語を楽しみたい
- NPCに話しかけまくるのが好き
おすすめではない人
- サクサク攻略したい
- ゲームとして楽しみたい
- 派手な演出を期待している
総合評価良いところ&残念なところ
- 完成度の高いストップモーションな手作りグラフィック
- 胸に響くセリフが多い
- 物語の設定がユニーク
- ゲーム性は低い
- テンポがゆっくり
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こちらも実際に手作りされた模型が使われているパズルアドベンチャーゲーム。
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Harold Halibut ハロルドハリバット
Harold Halibut™ & © Slow Bros. GmbH
https://slow-bros.com/harold-halibut
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