『Jusant』とは、Don’t Nodが開発したアクションアドベンチャーゲーム。
Don’t Nodは高評価アドベンチャーゲーム『ライフイズストレンジ』シリーズ開発元として知られている。

ちなみにタイトルのJusantとは、フランス語で引き潮のことを指す単語だ。
本作は、Xbox、PCでプレイ可能。私はXbox版をプレイ。
『Jusant』とはどんなゲームか、そして実際にプレイして感じた感想と各要素の評価をネタバレなしでレビュー。本作に似たゲームも紹介する。
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あらすじStory
白い砂漠
どこまでも続く白い砂漠。
太陽の光がまぶしいけれど、静寂に包まれる世界で聞こえてくるのは誰かの足音。
サクッサクッサクッ。
サラサラの砂の上を歩く人が1人。旅人と呼ぶのがぴったりな出で立ちだ。
旅人がどこから来たのかは分からないけれど、目的地があるらしく、迷いなくしっかりとした足取りで真っ直ぐ歩いていく。

タワー
旅人が足を止めた。
目の前には頂上が見えないほど高い巨大な柱(タワーと呼ぶらしい)がそびえ立っている。
旅人はタワーを見上げ、じっと見つめ続ける。
すると、旅人が背負っているバッグから何か可愛らしい鳴き声が聞こえる。ペットかな?
背中の「誰か」に向かってフフッと微笑んだ旅人は、タワーへ向かって歩き出す。
どうやら、タワーが旅人の目的地らしい。

誰かの記憶
タワーに辿り着いた主人公は、なんとまさかの、その身一つで岩肌を登り始める。
切り立った岩の壁を上へ上へ。
とはいっても旅人は、何らかのロッククライミング世界記録を目指しているわけではない。
このタワーには人々が住んでいた痕跡がいくつもある。
そして、そこかしこに朽ちた船が何隻も打ち捨てられている。地表のはるか上方だというのに船が引っかかっている。
このタワーで、いやこの世界で一体何が起こったのか。
そして、旅人が目指すタワーの上には一体何があるのか。
旅人は少しずつ、でも着実に登っていく。
そういえば、背中のバッグに入ってる生物は何なんだ?

ゲームの特徴Features
ロッククライミング

本作は、ロッククライミングの要領でタワーを登っていく。
Xbox版では、LTが左手、RTが右手で岩や出っ張りを掴む動作を行う。
右手で岩を掴みながら、左手を離して左スティックで次に掴む出っ張りに腕を伸ばす。届いたら左手で掴む。
そして右手を離して、また次の出っ張りに手を伸ばす。
という動作を繰り返しながら進んでいく。
少し離れた出っ張りにはジャンプして到達することが出来る。
スタミナゲージがあり、クライミング中は徐々に消費してしまうけれど、休憩して回復することはできる。
ただし、ジャンプしたり長時間続けてクライミングしているとスタミナ上限値が減っていくので注意。
しかし、足場に到達して、その上に立つことが出来ればスタミナが全回復する。
エコーの力

主人公が背負っているバックの中にいた不思議な生物。
こいつの正体は水で出来ているエコーと呼ばれる主人公の相棒だ。
エコーの力を借りると、一定距離内にある植物などが成長して、足場になる。
また、近くにある調べるべきものをを探知することも出来る。
エコーの力を借りなければ進めない場所も多いので、先に進む道が見当たらなくなったら、まずはエコーに頼ってみるのがおすすめ。
記憶を辿る

タワーを登っていくと、誰かが住んでいた家や使っていた物を目にする。
そこかしこには手紙や日誌などが落ちており、それを読むことで本作の物語が分かってくるようになっている。
また、特定の場所では壁画を鑑賞することできて、こうしたものはやり込み要素になっている。
各要素の評価と感想Rating
物語の面白さ

4.5
物語は、はじめは全く分からない。
主人公は喋らないし、相棒のエコーはキーキープープー鳴いているけれど意味は分からない。
しかし、各地で見つかる手紙を読んでいると徐々に分かってくる。
必ずしも「この世界はこういう仕組みだ」とか「原因はあれだ」とは書かれていない。あくまでも誰かと誰かの手紙のやりとりだ。
これが推理のように考察させる仕掛けになっていて、各手紙は同じ時期に書かれているわけではないことも分かってくる。
タワーの高度によって、そこに住んでいた人の事情も時代も異なるのがポイント。
語りすぎず語る。分からないけど分かる。派手な演出やセリフに頼らず、誰かがそこで生きていた息づかいを感じさせる物語の描き方が素晴らしい。
キャラクターの魅力

肩に乗っているのがエコー
4.5
主人公は黙々と登るのみ。
とんでもない腕力と持久力、そして命綱一本で谷間をジャンプする胆力に驚く。
たまに「フンッ」と力を入れたり、手を滑らせた時に「うわぁっ」と声を上げることはあるけれど、常に涼しい顔をしている。
その佇まいは、厳しい環境なのに静寂と癒しを感じる本作の空気感そのもの。
そして、とにかく謎が多い。プレイヤーとしては、主人公にあれこれ質問したい気持ちをずっと抱えながら登る。そう、ずっと主人公に興味津々なので、NPCがいなくてもずっと興味が湧き続ける。
一方で、相棒のエコー。ひたすら可愛い。
主人公の肩の上でゴロゴロ寝転がってたり、ロープに捕まって勢いよくスウィングするとピギャーーッと歓声(悲鳴?)をあげてたり、とにかく可愛い。
ちなみに意味なく撫でて愛でることも出来る。
操作性

4.0
本作の操作方法は独特だ。キャラの右手と左手が左右のトリガーに割り振られている。
最初は「右手がこっちで、左があっちで」と頭で考えていたけれど、すぐに何も考えなくとも操作できるようになる。
自分の指とコントローラーと主人公の手が一体化してしまったような、本当に手を動かしているような擬似体験が出来る。
よく分からない段差に引っかかったり、特定のギミックにアクションを行うボタンが有効にならなかったり、細かく気になるところはある。
だけど、臨場感高くプレイできる本作の操作方法はかなり面白くてハマる。
難易度バランス

4.0
本作の難しさは、本当のロッククライミングと同じだ。
次はどこの出っ張りや岩に手をかけるか、どのルートが効率がいいのか。
アクションの難しさよりは、先を見越して進む道筋を考える方が攻略の鍵を握っている。
時には中継ポイントを作ってスウィングしたり、ギミックもうまく活用する。
ゲームは章立てになっており、章ごとに新たなギミックが登場する。
動く岩のような虫に捕まって移動して行ったり、太陽が照っている場所ではエコーの力で成長した植物が一定時間で枯れたりスタミナ消費が激しくなるなど、様々なギミックに悩みながら進むことになる。
しかし、詰まってしまうほど難しくはなく、適度に脳が心地よく刺激されるので夢中になってどんどん登りたくなる。
ゲームシステム

4.5
一歩一歩ならぬ一手一手を丁寧に進む、最適な道筋を見出す。
それぞれが良いくらいに面倒くさくて、でもスムーズに進める。そのさじ加減が絶妙で「登れた!よし、あともうちょっと登ってみよう!」とどんどんハマっていく。
そして、プレイヤーと主人公の手が一体化したように感じる操作感も良い。
でも、そこまでなら楽しいロッククライミングゲームだ。
本作には、人々がいなくなった静寂さと物哀しさと、それでいて神秘的で癒される最高の雰囲気が流れている。
そして、手がかりをもとにタワーで起こったことを推測させるヒントが誰かの足跡のように散らばっていて、「あ、あそこにも、ここにも」と罠にかかる小動物のように誘われるがまま進み続けてしまう。
圧倒的に癒される雰囲気のなか、集中しなければならない登る作業に没頭する。そして、時々過去に思いを馳せる。
この緩急の付け方が上手いから、どんどん惹き込まれるんだと思う。
やりこみ要素

4.0
上述した誰かの手紙や手記、そして壁画などを見つけるのがやり込み要素。
それがそのまま本作の世界や物語を理解する助けになるので、俄然やる気が湧く。
特にビアンカという人の日誌が物語を理解する大きな鍵となっているので、積極的に探すのがおすすめ。
グラフィック

4.5
キャラはデフォルメされた3DCG。
素朴な表情で、近くにある調べ物ポイントを探知する際にエコーがまさに瞑想中という表情になるのも面白くて可愛い。
そして、やはり景色だ。
岩肌に独特な文化の住居や朽ちた農場などが広がっている。
眼下に広がるどこまでも続く白い砂漠。過酷で壮大なタワーの切り立った壁。
フォトリアルとは違った美しい風景に見惚れてしまう。
見惚れすぎて、うっかり岩から手を離さないように気をつけなければならない。
サウンド

その場の過去の音を聴くことができる
4.5
本作の素晴らしい雰囲気は、サウンドに依るところが大きい。
通常時は環境音のみ。これが、もはやASMR。
風の音、静寂な廃墟に響く旅人の足音、ロープが擦れ合う音、時々聞こえてくるエコーの満足げな鳴き声。
癒される、耳が心地良い。
そして、特定の何かがある場所に来るとBGMが鳴り始めるけれど、これもまた癒される幻想的な曲ばかりだ。
総合評価Summary
4.5
物語の魅力
ゲームプレイの快適さ
ゲームとしての面白さ
芸術性
良いところ
静かで癒される雰囲気
やみつきになる独特な操作方法
進む道筋を考えるパズル要素
残念なところ
段差に謎に引っかかる
物などにアクションを行うボタンが効きにくい
オススメな人
何かに無心で没頭したい
癒されたい
物語を考察するのが大好き
オススメではない人
テキストを読むのが面倒くさい
細かい操作の繰り返しが苦手
ゲームであろうと高所恐怖症
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Jusant
鳥よりも雲よりも空よりも高く
本当のロッククライミングのように高くそびえるタワーをひたすら登っていくアクションアドベンチャーゲーム。
操作方法や効率の良い道筋を考えるのが面白くて夢中になる。
一方で、残された記録を辿って物語を推測したり、静寂と癒しに包まれる抜群の雰囲気も大きな魅力で、静と動の匙加減が絶妙。
Jusant
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