『Sable』レビュー: ゲームを超えてしまったゲーム
『Sable』とは、Shedworksが開発したオープンワールドなアドベンチャーゲーム。
バンドデシネの巨匠ジャン・ジローの代表作『メビウス』を彷彿とさせる手描きイラストな絵画調のグラフィックが特徴。
本作は、PS5、Xbox、PCでプレイ可能。私はXbox版をプレイ。
私がプレイした発売時には日本語版がなかったため、以下のゲーム画像は英語版になっているけれど、現在は日本語版が配信されている。
本作の特徴や魅力、そして実際にプレイして感じた感想と各要素の評価をネタバレなしでレビュー。本作に似たゲームも紹介する。
画像はタップもしくはクリックすると拡大して見ることが出来ます。
あらすじStory
独特な文化
本作の主人公はSable。彼女は砂漠にあるキャンプで暮らしている。
Sableが共に暮らしている一族(クラン)は遊牧民であり、各地を転々と移動して暮らしている。
あと、皆んな常にお面を付けている。そういう文化の世界だ。お面が当たり前。
旅立ちの時
今日はSableにとって特別な日。彼女がGliderとして一族から旅立つ日だ。
この世界では、ある年齢になったら一族から離れる掟がある。
「ちょっと修行してくるわ」じゃなくて、そのまま今生の別れになってしまうこともある。
で、遂にSableにもその日が来たわけだ。
みんなと離れるのは寂しいけど、広い世界にワクワク。ごちゃ混ぜ感情を抱えながらSableは旅支度を整える。
何者になるのか
準備万端になったSableは、お手製のホバーバイクにまたがり、広大な砂漠へと走っていく。
何者になるのか、自分の居場所は世界のどこかにあるのか。壮大な自分探しの旅が始まる。
ゲームの特徴Features
無限ツーリング
本作はオープンワールドなので、自由に好きな方向に進んでいい。
徒歩移動も出来るけど、基本はホバーバイクで移動する。
バイクの燃料やダメージなどのシステムはないので、本当に好きなだけツーリングできる。
世界は広大な砂漠で、いくつかのエリアに分かれている。エリアごとに地図屋さんを見つけて地図を買うとマップが開示される。
他のクランが暮らすキャンプを見つけてクエストを受けたり、遺跡などを探索して宝箱を見つけて服やお金を手に入れていく。
Sableアクション
本作にはバトル要素はない。探索とほんのり謎解きがメイン。
Sableは、どこでも登ることができる。建物の壁、崖、室内の柱でさえ、よじよじと登れる。
スタミナの制限はあるので残量に注意。
また、Sableは不思議な石の力で滑空が出来る。空中でジャンプボタンを押しっぱなしにすると、フォオオンと謎のオーラに包まれてゆっくり滑空していく。
滑空中はスタミナ制限はなく、地面に着くまでならいくらでも滑空出来る。
バッジと仮面
この世界では、自分自身を見つけることは「自分に合ったお面を見つけること」。
旅の道中で出会う人から依頼されるクエストをクリアすると、報酬としてバッジがもらえる。
同じ種類のバッジ3つを集めたら、Mask Casterという不思議な像の元に行き、新しいお面をもらう。
こうして様々なお面を集めて、自分にしっくりくる1つを見つけるのだ。
バイク整備
旅の相棒となるホバーバイク。バイクはパーツを取り替えてカスタマイズすることができる。
パーツによって外観だけでなく、スピードや操作性も変わるので、これぞ!という一台に仕上げるのも旅の楽しみだ。
各要素の評価と感想Rating
物語の面白さ
4.5
人間は思春期くらいから自分探しを始める。
Sableだって、そうだ。多感で興味津々で、でも自信はそんなにない。
別に「意識高い系」じゃなくて良い。カブトムシを採るのが「自分らしさ」だっていい。
そう思えてくるほど、とんでもなく心の自由を感じるゲームだ。
仮面やら独特な文化が登場するし、遠い架空の世界のお話。だけど、現実にも通じるテーマが描かれている。
特に故郷や親元を離れた経験がある人にはグッとくるセリフが多いはず。
壮大だけど何気ないことの連続でもある物語。Sableの旅日記を読んでる気分だ。
そこから何かを感じるなら、本作はめちゃくちゃ記憶に残る旅になる。
でも、逆に特に何も感じないなら「雰囲気ゲー」で終わっちゃう。
キャラクターの魅力
4.0
出会う人々は、みんな仮面とフードを被ってるので、「強キャラか!?」とつい身構えてしまう。
が、実際にはマヌケな人とか、ちょっと意地悪な人とか、Sableを諭してくれる人とか。「あ、こういう人いるよなー」って思うキャラばかり。
濃厚な人間ドラマではなく、旅の道中の出会いって感じ。
サラッと印象的な何かがあって別れていく。良い距離感。
会話中には選択肢も多くて、選んだ返答によって相手のリアクションも変わる。時々、相手をおちょくるような選択肢も登場するのも面白い。
操作性
4.5
本作の最大の魅力の1つがホバーバイク。これが、めちゃくちゃ気持ちいい。
アクセルを踏むと流れる。私は風になった。スィイイーーー。
ブルルルッと振動するわけでも、ゴォオオッと轟音が鳴るわけでもなく。摩擦ゼロでスーーーーーッと滑らかに動く。これは病みつきだ。
その他の挙動も問題ないけれど、どこでも登れちゃう系ゲームにありがちな壁大好き状態にはなりやすい。
角を曲がりたいだけなのに壁にしがみついたり、ジャンプして華麗に降りたいのに崖にへばりついてしまったり。まあ、仕方ない。
難易度バランス
4.0
本作にはミスとかゲームオーバーという概念はない。体力とか空腹ゲージがあるわけでもないし。
謎解きも考え込むようなものはない。高台にどう行こうかと試行錯誤するくらい。
じゃあ、面白みがないかというとそういうわけじゃない。
各クエストの解決方法が複数あったり、ザクザクとは手に入らないお金の使い道に悩んだり。考える面白さがある。
本作は思う存分自由に旅するというゲームなので、それを損ねない良いくらいの面倒くささになっている。
ゲームシステム
4.5
クエストクリアしたり、自由に探索したり。
正直ゲームとしての歯応えや複雑さはあまりない。派手な演出があるわけでもない。
でも、それで良い。本作に漂う圧倒的な雰囲気で十分お腹いっぱい。敵を倒したいとか難しいパズル解きたい欲は瞬殺される。
この雰囲気を堪能できるだけで良い。世界設定や雰囲気が極まってる独創的なゲーム。
ゲーム?ゲームなのかな?いや、ちゃんとゲームなんだけど。
ずっと瞑想してるみたいな、他のゲームでは味わったことがない感覚。
やりこみ要素
4.5
収集要素とかどれだけクエストをクリアするか、全てはプレイヤー次第。
バトル要素がないので、やり込むのは探索要素だけだ。
明確なメインクエストがないので、ひたすら自由。
たくさんクエストはあるし、宇宙船っぽい遺跡を探索すれば、この世界の謎も分かってくる。
ホバーバイクや服のカスタマイズも出来るけど資金不足になることが多いので、探索してお金を見つけたい欲も湧く。
まあ、でも、やり込みというか、この世界眺めてるだけでも十分なんですが。
グラフィック
5.0
細部まで描き込まれまくってる繊細な線とセンス炸裂してる配色。最高。
個人的に本作が影響を受けているバンドデシネ『メビウス』のアートスタイルが大好きなので、冒頭から鼻血噴出で舐めるように眺めてる。
どこまでいっても美しい世界。
ゲーム内ではずっと時間が流れてるんだけど、朝日も夕焼けも星空も、シンプルな線と色なのに泣けるほど綺麗。
本作では、暗い部分は彩度が低くなるという明るさの加減が色の鮮やかさで表されていて、主人公の挙動はカクカクッと低fpsのように見える仕様になっている。面白い。
でも、このアートスタイルが好みじゃない人にとっては単に見づらいだけかも。
サウンド
5.0
本作では、オープニングに印象的なボーカル付きの曲が流れた後は、ほぼ環境音と時々流れるポォンポォンという抑え目のメロディ。
これが果てしなく瞑想感を高めてくれる。
ホバーバイクと聞くと、めちゃくちゃうるさそうな乗り物をイメージするけど、エンジン音はしなくて、ひたすら静寂を感じる。でも寂しいわけではない。
砂の上を走るザクザクッという音、風に鈴がたなびくリィンリィンという音。癒しだ。
もし、寝不足状態で本作をプレイしたら即寝してしまうだろう。
サントラはこちら
総合評価Summary
4.5
物語の魅力
ゲームプレイの快適さ
ゲームとしての面白さ
芸術性
良いところ
圧倒的な癒しの雰囲気
芸術性が高いグラフィック
自由度の高さ
心に刺さる物語
残念なところ
無駄に壁にへばりつきがち
オススメな人
芸術性が高いゲームが好き
癒されたい
個性的なゲームをプレイしたい
自分探しをしている
オススメではない人
バトルや歯応えのあるパズルなど苦戦したい
雰囲気ゲーが苦手
本作のアートスタイルが好みではない
癒される旅路を体験するなら、こちらもおすすめ。海中探索するバトル要素はないアドベンチャーゲーム。海中の美しさと泳ぐという独特の操作感で果てしなく癒される。
オープンワールドで癒される風景を満喫するなら、こちらもオススメ。崖上りや滑空など本作と同じアクションも楽しめる。こちらはバトルや謎解きも盛り盛り。
Sable
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