『The Cub』レビュー: 地球は誰のもの? 『ザ・カブ』
切なく考えさせられる物語と美しい雰囲気に魅了されつつ、しっかりパルクールアクションが楽しめる『The Cub ザ・カブ』をネタバレなしで要素ごとに詳しくレビューする。
本作をプレイする上で欠かせない関連作や似ているゲームも紹介する。
The Cub製品情報
タイトル | The Cub ザ・カブ |
---|---|
開発元 | Demagog Studio |
対応機種 | PS5, PS4, Nintendo Switch, PC |
ジャンル | 2D横スクロール, プラットフォームアクション |
シリーズ | 前作『Golf Club Nostalgia』 |
本作は、『Golf Club Nostalgia (旧題: Gold Club Wasteland)』と同じ世界での別の物語が描かれる。前作の「一方その頃、こっちではこんなことが起こっていた」みたいな感じだ。
順番はどちらからでも問題ないけれど、前作と本作はセットでプレイするのがおすすめ。
本稿では、PC版をレビューしている。
The Cubの攻略
ストーリー
捨てられた地球
本作の舞台は、そんなに遠くはないかもしれない未来の地球。
未来で、人類は地球を捨てていた。自然環境が崩壊し、地球はもはや人間が住むことができない惑星になってしまったのだ。
えっ、人類は全滅?
いや、実は、人間は火星への移住を成功させていた。環境崩壊が起こることが分かっていたかのように、用意周到にロケットを準備していたのだ。
しかし、この移住成功の裏には醜い真実が隠されている。
実は、火星へ脱出できたのはお金持ちだけだ。そして、ロケットに乗れなかった人々は、残った資源を巡って争い、そして環境変化に対応できず死に絶えてしまった。
生き残った子供
そんなポストアポカリプスで不毛になったと思われた地球には、なんと、人類がいた!
親とはぐれ、火星へ出発出来なかった少年だ。彼は、森の狼に育てられて、たくましく成長していた。
あれ?狼?少年が成長?
そう、実は、動植物はミュータント化しつつ地球で逞しく生きている。
そして、少年はなんらかの免疫を獲得したのか、もしくは彼もミュータント化したのか、様変わりした地球環境に適応してすくすくと育ってきたのだ。
人類と新人類の戦い
そんな新たな生態系を育む地球に、いつからか防護服に身を包んだ人間が現れるようになった。
火星に移住した人間たちが、地球を偵察しに戻って来たのだ。故郷が忘れられない人間は、地球がどうなっているのか気になるらしい。
そして、悪い予感は的中する。少年は偵察部隊に見つかってしまった。
「この地球で防護服なく生きている子供!?連れて帰って検査しよう!これは大手柄になるぞ!」と、防護服の人間たちは大喜びだ。
こうして、火星に行こうが相変わらず図太い人間と、地球で進化した少年の危険な鬼ごっこが始まる。
攻略のポイント
ひたすら逃げろ
本作は、いくつかの章に分かれており、章ごとにエリアも変わっていく。
各章では、ほぼ地続きになっているステージを画面右へと進んでいく。それと共に物語も進行する。
基本的に後戻りは不可能だけど、クリア済みのチャプターは選択してリプレイが出来る。
パルクールアクション
本作のメインは、プラットフォームアクション(足場から足場へとジャンプするマリオのようなゲーム)だ。
主人公は、2段ジャンプや箱を押し引きしたり、瞬間的なダッシュも出来る。更に、ツルを掴んでスウィングしたり、坂を滑り降りたりしつつ、足場から足場へとジャンプして進んでいく。
本作には機数のシステムはなく、落下したり、動物に攻撃されるなどミスしたら一発アウト。ゲームオーバーになると、1番近場のチェックポイントからやり直しとなる。
また、各所では偵察部隊から隠れて進むステルスパートや飛んでくる網を避けて走り続けるパートなどもある。
ちなみに、少年が偵察部隊を殴り返すといったバトル要素はない。あくまでも鬼ごっこだ。
人類の歴史
道中には様々な物が落ちている。
本や新聞、誰かが残したメッセージなどを見ることができる。これらは収集要素であり、本作の世界で何が起こったのかを紐解くヒントになっている。
収集した物は、メニュー画面から「洞窟」を選択すると確認する事ができる。洞窟とは、少年のお家だ。彼は興味を持った物を溜め込んでいるらしい。
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The Cubの評価
物語の面白さ
プラットフォームアクションゲームなので、物語の描写自体は軽めだ。
それでも物語をしっかり味わうことができるのが本作の大きな魅力。
章のはじめには、少年による状況説明と彼自身の意見がナレーション付きで流れる。
そして、収集物の内容を繋ぎ合わせていくと、なぜ地球が崩壊したのか、そしてその前後で何が起こったのかを知ることができる。それぞれは断片的な内容だけど、そこから真相が導き出されていく過程が楽しい。
ちなみに、私は前作を攻略済みの状態でプレイしたけれど、とある場面でボロ泣きしてしまった。
どちらからプレイしても良いので、本作と前作はセットでプレイするのが絶対おすすめ!
キャラクターの魅力
主人公の少年は元気いっぱいだ。
偵察部隊をおちょくったり、人間が暮らしていた頃のテレビ番組をじっと見つめたり、彼にとっては何の価値もない金塊の前でお尻をポリポリ掻いたり。遠くからでも分かるくらい、自然を楽しみ、たくましく生きている。
そんな少年は火星人のヘルメットを拝借して被っている(火星から戻って来た人間は火星人と呼ばれる)。
実は、このヘルメットからは火星で暮らす人々が聞いているラジオが流れている。
「火星人は身勝手だな」と感じる場面が多いけれど、ラジオでは火星で暮らす人々の事情が語られており、切なくなってしまうエピソードも多い。
強欲で利己的で繊細で優しく愛情豊か、人間の良くも悪くも面倒くさい姿が上手く描かれている。
操作の快適さ
操作は移動とジャンプくらいで、複雑な操作は登場しない。ある程度の場所に飛べば、少年は自動でツルを掴んだり、段差の縁に手を引っ掛けてよじ登ってくれる。
主人公は常に走っているけれど、移動スピードはそんなに速くないので落ち着いて操作できる。
気になったのは、少年が立てる足場なのか背景なのかが視認しにくい場所が少しあったことぐらい。
滑らかとまでは言えないけれど、操作性は概ね良好。
難易度バランス
ミスしたら一発ゲームオーバーになるので、ミスなく走り抜けていかなければならない。
ギリギリのタイミングになっているところもあり、正確な操作を求められることもある。
初見殺しも多い。でも、チェックポイントが小刻みに設定されているので、やり直しは苦にならない。
難易度設定はできないけれど、アクションが苦手な人でも繰り返していれば攻略出来る程度の難易度だ。
ゲームシステムの面白さ
ゲーム自体はオーソドックスなプラットフォームアクションゲームだ。バトル要素はなく、出来るアクションはシンプルで、常人離れしたアクションが加わるわけでもない。
でも、偵察部隊が登場する場面では、前景と後景から追いかけて来るのはちょっと新鮮で面白い。
ステルスパートもあるけれど、ステージ構成は分かりやすく、物語を楽しみつつ攻略しやすいゲームだ。
ゲームボリュームはコンパクトで、数時間でエンディングに辿り着ける。
やりこみ要素の楽しさ
やり込み要素は、様々な収集物を集めること。
新聞や本やぬいぐるみなど様々な物がある。特にラグジュアリーと呼ばれる芸術品など価値のある物は、「洞窟」に置かれていくので集めた甲斐があって楽しい。
上述もしたけれど、本作の物語は収集物によってより理解できるようになっているので、見つけたら片っ端から読んでおくのがおすすめ。
もちろん分かりにくい場所に置かれていることもあるので、画面左に引き返してみることもお忘れなく。
グラフィックの芸術性
本作は、イラスト調のグラフィックで描かれる。
廃墟と化した都市の風景と、そこでたくましく生きる動植物のコントラストが美しい。淡い青色とピンク色が効果的に使われていて幻想的でもある(ピンク色の正体は危険なものだけど)。
また、各章冒頭での少年による語りの場面では、少年の手描きと思われる落書きが使われている。
で、ゲームオーバー時にも死因が落書きで表示される。
これが面白い。いや、ゲームオーバーになってるので面白がっている場合ではないけれど、おしゃれなゲームオーバー画面だ。色んな方法でミスをしてみたくなる。
サウンドの魅力
本作の魅力の1つがヘルメットから流れてくる火星ラジオ。
音楽だけでなく、DJの語りやお便り紹介もあって、本当にラジオを聴いている気分でプレイできる。このDJの口調が穏やかで落ち着いていて、追っ手に狙われつつも癒される。
様々なジャンルの曲が流れるけれど、どの曲もどこか切なさを感じるおしゃれな曲ばかり。
プラットフォームアクションというと元気でにぎやかなゲームが多いけれど、本作の切なく美しい雰囲気は音楽によるところが大きい。
プレイ後にもサントラを聴きたくなる良曲揃い。
サントラはこちら
本作と似ているゲームや関連作は更に下へ
The Cubレビューのまとめ
おすすめな人
- プラットフォームアクションが好き
- 雰囲気重視
- 『Golf Club Nostalgia』をプレイしたことがある(今後プレイするつもり)
おすすめではない人
- 多彩なアクションを楽しみたい
- ハイスピードなアクションを求めている。
- 収集要素にやる気が湧かない
総合評価良いところ&残念なところ
- 物語もプラットフォームアクションも楽しめる
- 風景や音楽など切なさを感じる良い雰囲気に浸れる
- 小刻みなチェックポイント
- 足場を視認しにくい時がある
- アクションの種類は少ない
The Cubが好きならおすすめゲーム
関連ゲーム
Golf Club Nostalgia
前作であり、本作の別視点からの物語が描かれている。
廃墟でゴルフをするというユニークなゲームプレイが楽しめる(本作的なゴルフゲームというわけではない)。
こちらも物語を楽しみながら進むゲームになっており、本作とセットでプレイすると感動量が倍増する。
似ているゲーム
Gris
切なさ漂うプラットフォームアクションなら、こちらもおすすめ。
とある女性の精神世界を進んでいくパズルアクションアドベンチャーゲーム。
ドレスを変形させながら攻略する滑らかで気持ち良いアクションが大きな魅力の高評価作。
スーパーマリオブラザーズ ワンダー
プラットフォームアクションが好きな全員におすすめしたい2Dマリオ。
ワンダーフラワーを取るとステージ構成が一変するなど驚きと新鮮が楽しめる人気作。
マリオならではの楽しくにぎやかな雰囲気は、やはりいつの時代も最高。
The Cub
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