『バルダーズゲート3』レビュー: マインドフレイヤー被害者の会 – Baldur’s Gate 3
何をどうしてどうなろうとも自分次第!圧倒的な自由度の高さと作り込みの激しさで、もはや訳が分からなくなるRPG『バルダーズゲート3 Baldur’s Gate 3』をネタバレなしで要素ごとに詳しい評価を交えてレビュー。
本作に似ているおすすめゲームや関連作も紹介する。
バルダーズゲート3製品情報Game Info
- タイトル
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Baldur’s Gate 3
バルダーズ・ゲート3 - 開発元
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Larian Studios
- ジャンル
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RPG, ストラテジー, ステルス
- 対応機種
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PS5, Xbox(日本語版追加は未定), PC
- シリーズ
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Baldur’s Gate バルダーズ・ゲート
バルダーズゲートシリーズは、TRPGのD&Dことダンジョン&ドラゴンズの世界を元にしたRPGシリーズで、本作ではシリーズ過去作から開発元が変わっている。
ダンジョン&ドラゴンズ自体はかなり歴史の長いTRPGで、映画など様々な派生作品が作られている。何回かルールブックの改定が行われており、本作はその第5版の世界が元になっている。
ただし、D&Dの内容やバルダーズゲートシリーズ過去作を知らなくても、本作を問題なく楽しむことはできる。
本稿では、PC版のレビューを行なっている。
バルダーズゲート3の内容Features
あらすじ
目から入ってくるマインドフレイヤー
ゲームは、もはやラスボス戦のような状態から始まる。
目の前には、どこからどう見てもマインドフレイヤーと思われる化け物がいる。イカ頭かタコ頭かはさておき、顎あたりから触手が生えていて、とりあえず見るからに禍々しい奴だ。
ゲーマーなら他のファンタジーなゲームでも会ったことがあるだろうマインドフレイヤーさん。本作でのマインドフレイヤーの正式な種族名はイリシッドだ。
いや、マインドフレイヤーの事情なんてどうでもいい。そんな場合じゃない。
主人公は、どうやらマインドフレイヤーに捕まってしまっている。
他にも被害者がいるようで、マインドフレイヤーは「何か」を捕らえた被害者達の目に入れていっている。
「何か」とは、なんとマインドフレイヤーことイリシッドの幼生(生きてる)。それを人の目に直接入れているのだ。
そんなもの目に入れちゃダメだろ!眼科に行かなきゃ!
マインドフレイヤー船の墜落
そして、遂に主人公の番だ。ピギャピギャしてる幼生が眼前に迫ってくる。
ぎゃー!目がぁああ!
目から入ってきた幼生は、主人公の脳へと潜り込んでいったようだ。これは、眼科じゃなくて、脳神経外科に行かなきゃ!
ところが、受診する診療科を考えているうちに、主人公が捕えられているマインドフレイヤーさんの空飛ぶ船がドラゴンに乗った何者かに襲撃を受け始める。
不幸中の幸いで、その衝撃によって主人公が捕らわれていたポッドが開き、主人公はやっと自由に動けるようになった。
死んでしまっては意味がない、他の無事な被害者と協力して、なんとか激しい襲撃を受ける船の舵を取ろうと奮闘することに。
しかし、船はあえなく墜落してしまった。
被害者達の旅
大破したマインドフレイヤーさんの船。しかし、主人公は奇跡的に生き残った。
他にも生き延びた被害者の人がいるようだ。
でも、無事に生き延びたとは言えないかもしれない。みんな脳にイリシッドの幼生が入っているのだ。
しかも、幼生のせい(おかげ?)で、幼生持ちの人同士でテレパシーみたいなことが出来るようになっている。
しかし、幼生は脳内で育ち、時が来れば宿主である主人公達は自我を失いマインドフレイヤーになってしまうという。そんなの怖すぎるし嫌すぎる。
被害者の会を結成した主人公と他の幼生持ちの人達は、腕利きの脳神経外科医を探す旅へと出発する。
ゲームプレイの特徴
選択で紡いでいく自分だけの物語
本作は物語に沿って進んでいくRPGだけど、その内容はかなり自由。
まず、主人公が自由。ゲーム側で用意されているオリジンキャラのなかから選択するか、プレイヤーが全て好きにキャラクリエイトできるカスタムキャラか選べる(私はヴァンパイアになってみたかったので、オリジンキャラのアスタリオンを選択した)。
選択しなかったオリジンキャラ達は道中で出会い、仲間にすることも出来る。
各キャラにはクラスがあり、覚えるスキルや装備可能なアイテムなどが変わってくる。オリジンキャラは最初はクラスが決まっているけれど、クラス変更は可能だ。
ゲーム上では「これをしろ」といった明確な指示はなく、行ける道を進んでいると何らかのイベントに遭遇し、そこでどう行動するかはプレイヤーの自由。
そこでのプレイ内容や選択によって物語が分岐して新たなイベントが発生し、そこでの選択によって更に物語が変わっていく。
本作はこの物語の分岐がゲームの大きな特徴であり、本当に幾重にも分岐していく。
ダイスで変わる運命
上述した通り、プレイヤーの選択によって物語が変わることになるけれど、完全に好き勝手に選べるというわけではない。
運要素がある。
いくつかの選択肢が提示された場合、その中のいくつかには難易度が設定されており、20面体のダイスを振ってその難易度より高い数字が出なければ成功とならない。
例えば、ケンカを売られた時に「話し合いで解決する」選択肢を選んだ際、ダイス振りに成功すれば相手を説得出来てバトルは避けられる。失敗すれば、強制的にバトルが始まる。
しかし、完全な賭けというわけではない。説得が上手くなるスキルを持っていれば、その能力値がダイスの出目に加算される。キャラの成長のさせ方によっても各選択肢の成功率が変わるわけだ。
一方で、お金で解決する、喧嘩上等で積極的に攻撃を仕掛ける、逃げるが勝ち!と立ち去るといった選択肢も登場するので、賭けには出ず攻略していくこともできる。
ストラテジーなターンベースバトル
バトルにつながる選択をした場合や、探索中でも敵に見つかればシームレスにバトルが始まる。
バトルはターンベースで、ターンが回ってきたキャラは、移動、アクション、ボーナスアクションを行うことが出来る。
移動では、ターンを終了するまでなら移動可能距離内の好きな場所へ移動できる。
アクションは武器攻撃や魔法を使うなど、メインの行動だ。魔法使用時には魔法スロットを消費する。
ボーナスアクションは補助的な行動が多く、アイテムを使ったり、高台へジャンプしたり、サポートスキルなどを使用できる。
野営地で交流する
連戦になってしまうと各スキルはバシバシ発動出来るわけではない。上述した魔法使用時に消費する魔法スロット含めスキルの使用回数は、戦闘が終了しても回復はしない。
本作には、小休憩と大休憩がある。
小休憩は、即座に体力回復やスキルの使用回数を補充出来る「ちょっとひと息」な休憩だ。しかし、小休憩出来る回数は限られている。
小休憩できる回数を使い切ったり、しっかり回復するなら大休憩だ。
大休憩では、拠点とも言える野営地で消費アイテムである物資を使用して全回復したり、小休憩では使用回数が復活しない強力なスキルの使用回数も補充出来る。
また、野営地では仲間との交流も楽しめる。
本作には各キャラに主人公への好感度があり、各イベントでの選択や各キャラとの会話などによって変動する。
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バルダーズゲート3の評価Review
物語の面白さ
本作には、世界についてのまとまった説明はほぼない。自分でゲーム内を見てNPCから話を聞いて徐々に理解していくしかない。
更には、やや硬めな口調のト書きのようなナレーションが流れるし、最初から専門用語も飛び交うし、正直なところ最初はとっつきにくかった。
でも、色々と分かり始めると面白さが加速度的に増してくる。
しかも右も左も分からない新参者にも、本作の世界の人々は良くも悪くも真剣に向き合ってくれる。
深く考えずに返答しても助言をくれたり、感謝してくれたり、ブチ切れてぶん殴ってきたりする。
どう選択しようが自然に物語が展開するので、正規ルートとか分岐ルートという概念を忘れてしまう。
物語が生きている。物語は自分次第でどんどん変わっていく。
プレイヤーによって体験が変わるため、筋書きがどうこうというのは評価しにくいけれど、とにかく濃厚な体験が出来るのは間違いない。めちゃくちゃ真剣に物語を紡いでいくゲームだ。
選択した結果が本気で跳ね返ってくるので、じっくり考えるのが楽しい。そしてその先が全く読めないから、余計に先が気になる。
私の脳内にもイリシッドが入り込んでしまった。
キャラクターの魅力
仲間になるオリジンキャラは、種族も生い立ちも性格も全く異なっていて、イリシッドの幼生が仲をとりもってくれなければ友達にさえならなさそうな強烈なキャラ揃い。
仲間全員を懐柔するのは大変だ。
でも、そんな癖の強いキャラが秘密を打ち明けてくれると、「あ、仲良しになれた!」とバトルとは違う達成感を味わうことができる。
NPC達も活きが良く、主人公が傍若無人な選択をしようとも、しっかりリアクションしてくれる。
ただ、なぜかみんな喧嘩っ早いし我儘な人も多いので、ファンタジーとはいってもなかなかに泥臭い人間関係が楽しめる。
操作の快適さ
カメラは、地形や位置を把握しやすい俯瞰視点から背中越しの臨場感あふれる視点まで、シームレスに動かせる。見やすくて快適。
カメラ以外の操作は移動とコマンドを選ぶだけであり、シンプルだ。
しかし、そのコマンドが大量にある。
ゲームパッドだとコマンドが並んだリングから選択し、キーボード+マウスならコマンドが画面下部にズラッと並んでいる。
コマンドやキャラの選択は、キーボード+マウスの方が圧倒的に快適。
でも、移動やダイナミックなカメラ視点でのプレイはゲームパッドの方が快適だ。
また、スキルや選択肢のヘルプは常に確認できるので親切。
それでも最初からパッと把握しやすいわけではないし、チュートリアルは最低限しかない。自分で実際に試して学んでいなかなければならない。
難易度バランス
難易度は4段階から選択可能。私はデフォルトのノーマル難易度でプレイ。
どんな時でもどの選択肢を選ぼうとも間違いやミスになることはない。ただ、その後の展開が難しくなる選択肢はある。
ダイス振りという運要素があるので、自分が思った通りに選択できるわけでもない。でもダイス振りに失敗しても話が展開する。どれを選んでも、どう進んでも、物語は繋がっていく。これが本作の凄いところ。
ちなみに、いつでもセーブとロードが出来るけれど、特に初見プレイ時には、よっぽど挽回不可能な状況に陥った時以外はダイス振りに失敗しても続行するのがおすすめ。
自分自身の物語を歩んでいる気分が高まるし、失敗から学べることもあるし、意外な展開や活路を見出すこともできる。
一方で、バトル自体は歯ごたえがしっかりある。考えなしに突撃したら、確実に厳しい戦いになる。
移動時はステルスが可能なので奇襲を仕掛けたり、地形も利用したり、一戦ごとに全力投球する気合いが必要だ。
ゲームシステムの面白さ
本作は自由度がべらぼうに高い。
「自由度が高い」というのは最近の大作ゲームではよく聞く表現だけど、本作ではメインストーリーを自分で作っている感覚になるくらい自由度が高い。
ボスの攻略法が複数あるとか、好きな道を通っていくとか、NPCにちょっかいを出してみるというレベルではない。
自分がやったことの結果が全て世界に残り、みんな忘れてもくれない。それによって誰が敵になるかまで変わってしまう。
「はい、この選択でバッドエンドルートに入りました!」という分かれ道の分岐ではなく、メインストーリーを綴る文章ひとつひとつを選んでいく。そんな感覚だ。
好き勝手に進んでいるに物語が成立してしまうのが凄いし、明らかな正規ルートを見えなくしている作り方も上手い。
最初はしばらく学ぶ時間が必要だけど、それは自由を味わうための下準備だ。「物語が生きている」感覚を覚えてしまったら、もう本作から抜け出せなくなる。
やりこみ要素の楽しさ
とりあえず、あちこちを巡ること。それが、まず手始めのやり込み要素。
通りすぎる人との会話1つでも選択肢が登場するし、隠された道や宝箱も豊富だ。
そして、仲間との交流も大きなやり込み要素。逐一会話の内容が変わるし、NPCに対する受け答えを見て仲間は主人公に対する評価を変えていく。
意図せず好感度が爆上がりした仲間に甘いことを言われて困惑したり、逆に仲良くなれたと思って踏み込んだ質問をすると怪訝な顔をされて焦ることもある。仲間キャラは本当に活きが良い。
そして、本作最大のやり込み要素は周回プレイだ。
NPCに攻撃するなど傍若無人プレイは分かりやすいけれど、どんな時でも話し合いで解決する交渉マンと化したり、率先してイリシッドの力を使う人間辞めちゃうプレイや、NPCの問題は完全無視してエンディングへ最短距離で走り抜けるプレイなど、様々なプレイが出来る。
どれだけのパターンがあるか考えるだけで頭が痛くなるので、周回プレイは毎回新鮮な気持ちで楽しめるはず。
グラフィックの芸術性
高解像度で高精細の美しい3DCGだ。
プレイ中は遠めの視点から見ることが多いけれど、ふと視点をズームしても細部まで美しい。
会話時にはキャラの顔がアップになり、その表情は細かくコロコロ変わるので見ごたえたっぷり。
本作は、世界に入り込むほど楽しめるゲームであり、これだけ美しいグラフィックなら否が応でも惹き込まれてしまう。
また、装備品によって外見が変わるのも楽しいところ。
ちなみに、国内コンソール版は表現規制があるけれど、PC版は海外版と同じだ。バイオレンスな場面も生まれたままの姿も、ありのままを見たいならPC版がおすすめ(設定で自ら規制することも可能)。
サウンドの魅力
BGMはもちろんファンタジー。
壮大な曲調が多いけれど、あまり主張は強くない。
また、フルボイス(英語音声)なのも臨場感たっぷりで良いところ。
ボリュームたっぷりでテキスト量も多く、本当に豪華なゲームだ。
サントラはこちら
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バルダーズゲート3が
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ディスコエリジウム
こちらもTRPGのように楽しめる高評価RPG。
記憶をなくした刑事が、脳内にいる複数の人格と対話しながら事件を捜査していく濃厚な物語が楽しめる。
こちらはバトルよりも物語を読むようにプレイするのが特徴。
サイバーパンク 2077
こちらもTRPGを原作にしているオープンワールドなRPG。
細部まで作り込まれたサイバーパンクな都市で、プレイヤーの攻略方法により物語が分岐していく。
FPSやハッキングで攻略していくバトルも楽しめる。
トライアングルストラテジー
分岐要素が好きなら、こちらもおすすめ。
重要な場面で3つの選択肢から方針を決め、それによって物語が大き変わっていく。
位置どりや仲間との連携などタクティクスバトルも面白い高評価ストラテジーゲーム。
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バルダーズゲート3
レビューのまとめSummary
おすすめな人
- あれこれ考えて試すのが好き
- 分岐要素が大好き
- ハイファンタジーが好き
おすすめではない人
- 取り返しがつかないことが起こるゲームが苦手
- 分かりやすいゲームを求めている
- 運要素が嫌い
総合評価
- 自由に変化する分岐要素が豊富な物語
- 歯ごたえのあるストラテジーなバトル
- グラフィック含め作り込みが激しい
- 最初に覚えることが多い
- 口調が固く、世界設定を理解するまでとっつきにくい
Baldur’s Gate 3 バルダーズ・ゲート3
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