『Ultros』レビュー: 敵を食べて、植物を育てて、極彩色に溺れる
極彩色の理解不能な世界に閉じ込められたら、ガーデニングしてみよう!という超個性的なメトロイドヴァニア『Ultros』をネタバレなしで、攻略のコツと各要素の評価を交えてレビュー。
本作に似ているおすすめゲームや関連作も紹介する。
Ultros製品情報
タイトル | Ultros |
---|---|
開発元 | Hadoque |
対応機種 | PS5, PS4, PC |
ジャンル | 2D横スクロールアクション, メトロイドヴァニア, ローグライト |
本作で1番に目を惹く極彩色のグラフィックは、El Huervoさん(本名のNiklas Åkerbladとしても知られる)が手がけている。サイケデリックアートが得意なアーティストさんで、ゲームでは『Hotline Miami』のアートを手がけている。
本稿では、PS5版をレビューしている。
Ultrosの攻略
ストーリー
サルコファガスに不時着
ゲームが始まると目が醒めるような色が溢れる地に、誰かが倒れている。その倒れている人の後ろには、宇宙船のような乗り物が地面に突き刺さっている。
この倒れている人が本作の主人公であり、逗留者と呼ばれる。
逗留者は、サルコファガスと呼ばれる宇宙を漂う子宮に墜落したのだ。それは悪魔ウルトロスに繋がっており、ブラックホールのループに陥っている。
こうして序盤から全く理解不能の逗留者の旅が始まった。冒頭で本作の世界設定や物語が把握できた人は、おそらく何らかの能力者だろう。そのくらい謎の物語が始まる。
サルコファガスの謎
とりあえずサルコファガスを探索していると、逗留者は誰かの死体を見つける。その傍らには使い勝手の良さそうな短刀が見える。
じゃ、ちょっと失礼して短刀を拝借しましょうか。
ところが、主人公が短刀を持って立ち去ろうとすると、死体の人が現れた!化けて出た!ホラーゲームか?いや、そうではない。
化けて出た人は、短刀を盗ったことに怒っているわけではないようで、「今回も失敗した」とかブツブツ意味不明なことを言っている。
無限ループを断ち切る
その霊体の話によると、このサルコファガスは幻に包まれており、脱出出来なくなっているということ。そして、その幻を断つためには各地で眠るシャーマンを殺さなければならないそうだ。
さらに、霊体だけではなく、この謎空間には普通に(?)人が住んでいるので、サルコファガスの事情を教えてもらおう。
あれ?でも、さっき一度会ったはずの人が逗留者とは初めて会ったような口ぶりで話している。あれ?あの霊体が言った通り、本当にループしてる!?
これでは堂々巡りだ。やはり霊体の言っていた通り、ループを断ち切らなくては!
逗留者がどこからやって来たのかは素性は全く分からないけれど、脱出を目指してシャーマン巡りを始める。
攻略のポイント
ループしながら進む
上述した通り、本作では各地にいるシャーマンの命を断っていくのが目標であり、まずはそれによってゲームが進行していく。
シャーマンを1人殺す度に、本作の舞台サルコファガス全体がループして新たなサイクルに入る。つまり、物語冒頭のスタート地点に戻る。
単に主人公の現在地が戻るだけではなく、主人公のアップグレードや敵や落ちているアイテムも最初の状態に戻る。しかし、後述する引き継がれる要素もあるので、ローグライトっぽい感覚だ。
ただし、マップは変わらない(マップの開示状況は引き継がれる)ので、ランダムマップのローグライクというわけではない。敵やアイテムの配置も同じだ。
敵を食べて強くなる
主人公は、短刀で近接攻撃が出来る。敵の攻撃を回避してカウンター攻撃も出来る。
敵を倒すと、経験値やお金が得られるわけではなく、敵の肉体の一部がドロップする。ドロップしたものは「食べ物」と呼ばれる。そう、主人公は倒した敵をそのまま食べてしまうワイルドな狩人だ。
食べ物を食べると、体力が回復すると同時に、食べた物によって主人公の4種類の栄養状態が変化する。
セーブポイントでは、その時点での主人公の栄養状態に応じてスキルツリーをアンロック出来る。各スキルにはアンロックするために必要な栄養状態が定められており、アンロックするとその栄養素は失われてしまう。食べた栄養素がスキルアンロックのコストというわけだ。
どの食べ物を食べようが定められた栄養状態になっていればいいけれど、もちろん強い敵ほど栄養素が豊富に詰まった食べ物をドロップする。
強くなるには雑魚敵を偏食していては効率が悪く、様々な敵を倒してバランス良く栄養を摂らなければならない。ちなみに主人公に満腹という概念はないので、いつでも食べ物を食べまくることができる。
記憶菌糸体でスキルを残す
上述した通り、新たなサイクルが始まると全て初期状態に戻る。アンロックしたはずのスキルも習得していない状態に戻る。
しかし、各地で見つかる記憶菌糸体をアンロックしたスキルにセットしておくと、ループを超えて習得したままにできる。記憶菌糸体の付け替えは自由だ。
また、本作では抽出機と呼ばれる機械が主人公に同行し、2段ジャンプが可能になるなど探索範囲を広げてくれる。この抽出機が獲得した機能もループを超えて引き継がれる。
ガーデニング
探索中には種を拾うことがある。
種は食べることも出来るけれど、各地にある特定の場所に植えることができる。
植えた植物はループを超えて植えられた場所で生き残り、ループを繰り返すごとに大きく育っていく。ループしているけれど、サルコファガスの環境は時間が経っているというわけだ。
植えられた植物は食べ物となる実をつけるだけでなく、新たな足場になったり、障壁を取り払ってくれるなど、植えた植物の種類によって地形が変わっていく。
どこにどの植物を植えるかが探索上かなり大切になるし、各サイクルで手に入る種は有限なので、よく考えて植えた方がいい。
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Ultrosの評価
物語の面白さ
本作の物語は、すんなり理解できるようなものではない。
キャラの口調も語り口も硬めで、文章だけ読んでも何を意味しているのかさっぱりだ。
主人公にセリフはないので何を考えているのか分からず、プレイヤーだけ謎空間に取り残された気分になる。上下左右斜め全てが謎に囲まれている。
よし、じゃあ理解するのは諦めようと思っていたら、なぜか徐々に分かってくるという、これまた不思議現象が起こり始める。
NPCのセリフを聞いたり、各地で見れるサルコファガスの記憶からNPCの事情を知るうちに徐々に話が繋がってくる。
それでもすっきり解決!とは全くならないので、本作の物語は、考察するのが好きな人や訳が分からないほど燃える!という人におすすめだ。
キャラクターの魅力
上述した通り、パッと分かりやすいセリフではないけれど、NPCが1番の情報提供者だ。彼らのセリフを繋げていくと、本作の世界設定が見えてくる。
NPCは数は多くないもののよく喋ってくれるので、見つけたら話しかけておくのがおすすめ。
そして、ゲームプレイ上のアドバイスもNPCが教えてくれるので、よく話を聞いておいた方がいい。チュートリアルはかなりあっさりしているので、攻略上の有力な情報提供者もNPCだ。
操作性の快適さ
ハイペースとまではいかないけれど、主人公はキビキビ動く。移動していると徐々に走るスピードが上がって爆走できるので、スイスイ探索できる。
全体的に操作性は良好で、特にバグが発生することもなかった。
背景からキャラクターまで派手な色づかいなので、背景なのかゲームプレイ部分なのかパッと見て分かりづらいところもあるけれど、奇抜なグラフィックとは裏腹に快適な旅が出来る。
ただ、気になったのはボス戦でのカメラワーク。ボス戦中に相手の体力を一定量削るとボスの攻撃パターンが変わる。
その際に、ゲームプレイは継続しながら、カメラがボス中心の画角に移動してしまうのは困る。ボスから離れていると主人公の姿さえ見えなくなるので、攻撃を避けている最中だとタイミングが狂ってしまう。
難易度バランス
難易度選択は出来ないけれど、バトルの難易度はそんなに厳しくない。食べ物をしっかり準備しておけば、モリモリ食べながら戦えるのであまりゲームオーバーになることはない。
でも、敵からドロップする食べ物は、倒し方によって品質が変わる。
敵を通常攻撃など同じ攻撃だけで倒すのではなく、カウンターやドロップキックなど多彩な攻撃を当てて倒すと良い品質の食べ物がドロップする。品質が高いほどもちろん栄養素が高くて、スキルがアンロックしやすくなる。敵を倒すこと自体は難しくなくても、より多彩なアクションを操る難しさが味わえる。
そして、難しさというより本作の攻略しがいを感じる面白さは、ループを超えて残すものの選び方だ。計画性が大事だ。
より多くの菌糸を見つけて、役に立つスキルを見極めて記憶に残す。
どこにどの植物を植えれば次のサイクルで探索が楽になるかを考えなければならない。種は貴重だし、植えられる場所にも限りがあるので悩みどころだ。
こうしてループを超えて残るスキルや植物によって、攻略は格段に楽になる。逆に無計画にプレイしていると、ループする度に同じことを繰り返さなければならないし、探索できる範囲も変わらないため変わり映えのない面倒なゲームになってしまう。
ゲームシステムの面白さ
ローグライトのようだけど、そういうわけでもない。
ループで最初に戻されるけれど、植える植物や食べる物によって確実にゲームは変わっていく。
世界設定やグラフィックだけでなく、ゲームシステムも独創的だ。
最初は「一体何なんだ、このゲームは」と思わず独り言を言ってしまったくらい、全てが奇抜。
でも、ループを2回くらい超えたあたりで本作のシステムが分かってくると面白さが加速していく(2回ループするくらいはサクッと進めるので、理解不能状態が続くわけではない)。
探索する楽しさはもちろんだけど、お目当ての道に進むにはどうしたらいいかを考えるのが本作の面白さ。植物を植える場所を考えるパズル要素と、次のループに備えておくストラテジー要素も楽しめる。
個性的で本作ならではの面白さが詰まりまくっているゲームだ。
やりこみ要素の楽しさ
各地には、サルコファガスの記憶と呼ばれるキノコのような植物が生えている。そこでは各NPCの事情を見ることが出来て、これが本作で1番やっておくべきやり込み要素だ。
誰もご丁寧に簡潔に世界の事情を説明してくれないので、本作を理解するためには積極的に探したほうがいい。
また、どこでどんな植物を育てるかはプレイヤー次第だ。基本的にループを超えてもそのままになるので、場所ごとに何を植えたら良いかをよく考えてプレイした方が良い。
スキルツリーのアンロックももちろんやり込みとなる成長要素だけど、より多くの記憶菌糸体を見つけることがゲーム攻略上では一番大事なやり込み要素。
より多くのスキルを記憶に留めておけるようになれば、ゲームの難易度がかなり変わる。
グラフィックの芸術性
本作に興味を持った1番大きなきっかけはグラフィックだ。
なんという色づかい!アート作品みたいだ!と思ったら、本当にアーティストが手掛けており、それも納得の芸術性の高さ。
敵のデザインは絶妙に気持ち悪い(褒め言葉)し、背景も描き込まれまくっているし。
「もうずっと無限ループしててもいいじゃない?」と思ってしまうくらい見惚れてしまう。
ただ、サイケデリック度満点な分、目がチカチカして苦手な人もいると思う。その場合は、設定から映像の調整をすることができるので安心だ。
サウンドの魅力
BGMもサイケデリックかと思いきや、意外とおとなしい曲調が多く、美しく癒されるBGMまである。
オブジェクトを壊すとプチプチッと音がしたり、植物が蠢くように生える音や、敵の足音がグニョグニョだったり、効果音が気持ち悪くて気持ち良くて耳触りが良い。
本作と似ているゲームや関連作は更に下へ
Ultrosレビューのまとめ
おすすめな人
- 迷いながら進むのが好き
- 独創的なゲームをプレイしたい
- サイケデリックアートが好き
おすすめではない人
- スキルなど成長をリセットされるのが嫌い
- 感情移入しやすい物語が好き
- 取り返しのつかない要素があるゲームは苦手
総合評価良いところ&残念なところ
- ループしながらも新たな道が拓けていく独創的なメトロイドヴァニア
- 芸術性が高いサイケデリックなグラフィック
- 次のサイクルを見据えて植物とスキルを選ぶストラテジー要素も楽しめる
- どこにどの植物を植えて地形を変えるか考えるパズル要素が楽しめる
- チュートリアルが少なく、各植物の効果を把握しにくい
- 取り返しがつかない要素がある
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トレジャーハント エーゲ海の秘宝
一定時間経つと時間が巻き戻る無限ループが楽しめる2Dプラットフォームアクションゲーム。
パルクールで進みながら謎解きを攻略して、ループしながらも先へと進んでいくゲームプレイが楽しめる。
メトロイドヴァニアではないけれど、ショートカットを把握して効率的に進んでいく賢さも攻略の鍵となる個性的なゲーム。
Returnal リターナル
理解できない未知の惑星で無限ループを繰り返す高評価ローグライクゲーム。
弾幕攻撃を交わして戦うTPSで、不気味な雰囲気が味わえる。
徐々に明らかになっていく主人公や世界の謎などメインストーリーも楽しめる。
Loop Hero
ループを超えて戦略を考えるのが面白いと思ったら、こちらもおすすめ。
輪状になった世界の地形をプレイヤーが作りながら歩き続ける高評価ローグライクゲーム。
こちらもループを超えて地形の変化が残るので、先を見据えてプレイするストラテジー要素も味わえる。
Ultros
Ultros ©2024 El Huervo AB. “Ultros”, “El Huervo” and the Ultros and El Huervo logos are all trademarks of El Huervo AB. Published by Kepler Interactive Limited. All rights reserved.
https://www.ultrosgame.com/
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