『ゼルダの伝説 ティアーズオブザキングダム』とは、任天堂が開発したオープンワールドなアクションアドベンチャーゲーム。
本作はゼルダの伝説シリーズの一作であり、シリーズ過去作の『ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド』の直接的な続編となっている。
シリーズ通しての時系列はあるものの、ゼルダの伝説シリーズは作品ごとに時代や世界設定が異なっていることが多い。そんななか本作は珍しく前作から物語が続いている。
本作はNintendo Switchでプレイ可能。

本作がどんなゲームか、そして実際にプレイして感じた感想と各要素の評価をネタバレなしでレビュー。本作に似たゲームも紹介する。
ちなみに、私は前作とその前日譚が描かれた『ゼルダ無双 厄災の黙示録』もクリアした状態でプレイしている。

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あらすじStory
お城の秘密
ハイラル城の地下へ降りていく主人公リンクとゼルダ姫。そこから物語は始まる。
ゼルダ姫は髪の毛を切ってイメチェンしており、前作のエンディングからしばらく経っているようだ。
前作についてざっくり書くと、厄災ガノンに一度負けた勇者リンクが、ハイラルの大地を転げ回った末に100年越しのリベンジを果たしたという物語だった。
そして、全く老けていないリンクとゼルダ姫は100年ぶりに再会して世界は平和になった。
しかし、めでたしめでたしとはいかなかったようだ。
前作後に生気を奪う瘴気が発生するようになり、リンクとゼルダ姫は、解決の手がかりを求めてハイラル城地下の調査に乗り出している。
ハイラル城は前作で厄災ガノンが100年間不法占拠していたラスボス戦の地だし、何らかの怨念が残っているのだろうか。

右腕がぁああ
地下を進んで行った2人が目にしたのは、一体のミイラ。そして、その胸にくっつている誰かの右腕。
ミイラは2人を待っていたかのように突然動き出し、瘴気を飛ばし始める。
「姫様、あぶなーい!」と有能護衛剣士リンクがゼルダ姫を庇って瘴気を受けると、リンクの持つマスターソードはボロボロになり、体力もがんばりゲージ(本作のスタミナ)も前作の初期値に戻ってしまった!
さらにミイラはとんでもない力を発揮し、ハイラルの大地中が揺れ、ハイラル城はボコォッと上空に浮かぶ。
その衝撃でゼルダ姫は地下に落ち、リンクは気を失ってしまう。
そして次にリンクが目を開けた場所は、空に浮かぶ島。
さらに驚くことに、リンクの右腕がミイラにくっついていた誰かの腕にすげ変わっている!

目的地はゼルダ姫
「腕が!」と驚くリンクの前に現れたのはラウルという半透明な人。人と言っていいのか分からないけど。
どうやらかなり昔に栄えたゾナウ文明の頃にいた種族らしい。
ラウルは、瘴気によって右腕が朽ちてしまったリンクのために、右腕を提供してくれたそうだ(ミイラにくっついていたのはラウルの腕だった)。
そして、姿は見えないものの、ゼルダ姫お得意の脳内直接メッセージが流れてくる。「リンク、私を探して」。
かしこまりました、姫様!
突然現れた空島とゾナウ文明、そしてラウルについても、あのミイラについてもよく分からない。
更にマスターソードはどこかに消えたし、ハイラルの大地は天変地異と瘴気まみれだし、体力もスタミナもなくなった。
無事に大地に着地できるかも分からないけれど、勇者リンクは戸惑うことなく新たな戦いへと、空島から飛び出していく。
そうリンクは勇者だから!

ゲームの特徴Features
空と大地と地底

本作はオープンワールドゲームであり、好きに探索してゲームを進めていく。
もちろんメインとなる物語があるけれど、メインミッションの攻略順も自由だ。
さらに、サブクエストやダンジョン攻略、ミニチャレンジなどもある。
冒険の舞台はハイラルの大地と空島が点在する空、そして地底の大きく分けて三層。超広大だ。
道中では、武器強化や料理に使う素材を採取したり、敵を倒したり、宝箱を見つけながら移動して行く。
また、地底や洞窟など暗い場所では、周囲を明るく照らしながら進まなければならない。
勇者アクション

リンクは、武器で戦う。
武器種はいくつかあり、弓での遠距離攻撃も可能。また、盾で防御も出来る。
ジャストガードやジャスト回避に成功すると、ラッシュが発動して一方的に連続攻撃もできる。
リンクは、各地にある祠と呼ばれる謎解きダンジョン(バトルのみの場所もある)を攻略することで強くなる。
ダンジョン攻略時に貰える祝福の光によって、リンクの体力上限やがんばりゲージ(スタミナ)上限値を上げることができるのだ。
しかし、攻撃力など他のパラメータは装備品によって強化することになる。
ただし、武器と盾には全て耐久値がある。いくら強い武器でも一定回数使用すると壊れてしまう。
基本的にはそこらへんに落ちていたり、敵から奪うなど、武器は現地調達しながら冒険する。
また、空中ではパラセールを使って滑空し、崖でもどこでもよじ登ることができる。どちらもがんばりゲージを消費するのでスタミナ切れに注意。
リンクの右腕

リンクは高性能化した右腕で様々なことが出来る。
物を自在に動かし、他の物と超強力接着剤でくっつけることが出来るウルトラハンド。
武器など装備品に他の武器やアイテムを付けて強化したり追加効果を付与できるスクラビルド。
天井を突き抜けて上方に移動できるトーレルーフや物の時間を巻き戻すモドレコなどだ。
また、風や炎などを発生させる機械のようなゾナウ文明のパーツを利用することもできる。それらを使用する際にはバッテリーを消費する。
こうしたスキルを使って乗り物を作ったりギミックを動かしてダンジョン攻略したり、険しい道のりを攻略していくことになる。
各要素の評価と感想Rating
物語の面白さ

5.0
続編だけど、全然違う物語。
ゾナウ文明とか新種族が出てきて「え、まだこんなに謎が詰まっている世界だったのか」と驚くくらい、同じ世界なのに別の物語が展開する。
一方で、前作からの驚愕の伏線回収もあってびっくりする。
また、物語の内容だけではなく、雰囲気も違う。
前作はリンク1人で「実は厄災ガノンを倒そうと思ってるんだよね」とひっそり奮闘していた印象があるけれど、本作は最初から物語の中心にいる感覚。
本作では、みんなリンクが勇者だと知っているし、NPC達も戦う気満々で、人々の先頭でハイラルを背負って戦っている気分だ。
そのせいか、物語はドラマチック。闘志湧く熱い展開も切なさもたっぷり。
前作やゼルダの伝説シリーズの過去作(特に時系列)を知っている方が確実に楽しめるので、本作で初めてシリーズに触れる人は予習してからのプレイがおすすめ。
キャラクターの魅力

超ポジティブな生粋の商人テリー
5.0
リンクは相変わらずの勇者だ。
カットシーンでは果てしなくカッコ良いヒーローだけど、普段は満面の笑みで自撮りして、転落死も多く、鼻歌歌いながら妙な料理をして、他人の家の柱によじ登る。
更に、ものすごく深刻な話を聞いている場面でも、手作り感丸出しの武器がチラチラ映って笑えてくる(作った私のせいだけど)。
NPCも個性的で、みんな笑える面もありつつ勇敢で魅力的。
また、本作では悪役が喋るので闘志も湧きやすく感情移入もしやすい。
英傑の子孫たち含め前作から続投しているキャラが多いので、「あいつがこうなったんだ!」と、前作の後日談が追えて楽しい。
操作性

4.5
アクションはキビキビしていて、ストレスなし。
よじ登ったりパラセールで滑空したり、思った通りに操作できるし、アクションが自然につながっていく。
上空から地底まで暗転なく自然に繋がっていくのは、それだけでも単純に凄い。
空島から滑空していくと、地表でほがらかに走り回っているボコブリンにちゃんと気づかれたり、地底に降りていきながら「暗くて底が見えないな」とぼんやり思っていたら地面に激突したり。
自然すぎて本当に大空から地底まで全部丸ごと冒険している気分だ。そのおかげで、より一層広大に感じるし臨場感たっぷり。
また、本作の目玉である武器や乗り物などを自作する能力は、ちゃんと物理法則に基づいていて、なんとなーく作っても上手くいかない。逆にヘンテコな形でも機能する。
これが本作の面白さを倍増させていて、もっと試行錯誤したい気になる。
ただ、出来ることが多い分、ボタン操作はやや複雑。また、ゲームが進行して仲間の力が使えるようになると、操作しづらく感じる場面もある。
難易度バランス

5.0
賢さが1番の武器。
バトルもダンジョン攻略も正解は1つではない。2つでもないし3つでもない。無限にありそう。
正解を探すのではなく、正解を作ってしまうゲームだ。
これはなかなか他のゲームでは味わったことがない面白さ。
バトルでは複数の敵に囲まれることも多くて、気を抜いていると結構すぐ死ぬ。
でも、アイテム選択中は時間が止まるし、素材さえあればいくらでも料理が作れるので、準備をしっかりしておけば料理を食い散らかしながらゴリ押しプレイもできる。
ただ、地底は難易度高め。瘴気を纏った敵に攻撃されると、体力最大値が減ってしまうのでゴリ押しは危険。
空島では落下してしまう恐れがあるし、場所ごとに違った難しさがあるので飽きない。
ただ、賢者たちの力を手に入れると、探索もバトルもかなり楽になる(共闘もしてくれる)ので、苦戦するようならメインストーリーをある程度進めてから探索に出るのもおすすめ。
ゲームシステム

5.0
ゲームで同じ世界が舞台の続編というとエリアが変わることが多い。あとは仲間や操作キャラが変わるとか。
しかし本作では同じ。
多くの人が長時間プレイし(私も前作は100時間以上プレイした)、隅々まで見せてしまっているオープンワールドゲームで、前作と同じ世界を使うってすごい思考回路だ。
それなのに、何なんだ、この新鮮さと、際限なく夢中になっていく感覚は。
もちろん空や地底が加わった違いはある。でも、それだけではない。
前作は役立つ物を見つけてサバイバルする感覚だったけれど、本作では使える物を作り出すという世界全体で謎解きをしている感覚だ。
そう、プレイ感覚が違うので新鮮に感じるわけだ。
夢中にさせた世界に更に夢中にさせる、しかも飽きさせない。あまりにも自然すぎて忘れてしまうけれど、とんでもない工夫とゲーム作りの巧さだ。
前作との比較してしまいがちだけど、前作未プレイの人にとってどうかと言うと、それも最高に違いない。もはや羨ましく思う。
物語を楽しむには前作をプレイしておいた方がいいけれど、ゲームプレイだけ見れば、予備知識なく自分の発想でどうとでもなる広大な世界に放り出される体験は前作以上に最高なはず。
前作をプレイしていると、どうしても「前作であれができたから、きっと」という知識が自由な発想を邪魔してしまう時があるからだ。
やりこみ要素

5.0
やり込み要素として分かりやすいのはサブクエスト。
本作では、リンク以外の人々もハイラルの大地を守ろうと奮闘していて、討伐隊などと共闘するクエストもある。
祠をどれだけ攻略するか、各所に隠れているコログを見つけたり、防具を全て揃えて強化したり、強敵討伐に出かけたり、色んな料理レシピに挑戦したり、やり込み要素は盛りだくさんだ。
やり込むほどリンクを強化出来るし、世界のことをより詳しく知れるし、サイドストーリーも楽しめるのでやる気が湧きやすい。
というか、やり込み要素の方に熱中してメインストーリーを放置しがちになるほどだ。
もはや姫の行方もラスボスもどうでもよくなるほど世界を満喫するのが楽しい。
グラフィック

5.0
前作と同じくトゥーンレンダリングなグラフィック。
最先端の高解像度なフォトリアルとは違った良さで、キャラクターが魅力的。
そして、前作と同じく、風景が綺麗。
細部まで緻密に描かれているというのではなく、風景の繋がりが美しい。
ここは火山だから火山関係の景色だけ、ではなくて、遠くにある草原や雪山まで見えて風景になっている(しかも、実際にそこに行ける)というのが良いところ。
あと、個人的に気に入ったのが、スクラビルドで武器に物をくっつけても形がそのままなところ。
剣に石を付けても、石が突然武器っぽくカッコ良くなったりせず、本当に剣に石がブッ刺さっているだけというのが良い。
「俺の考えた最強の武器!」という手作り感。
とんでもなくダサい乗り物で敵の拠点に乗りつけたりして、自作ながら笑ってしまう。
サウンド

5.0
BGMはほんのり。聞こえてくるのは、ほとんどが環境音。
たまーにピアノ音だけのBGMが流れるくらいで、心地良い。
特に祠や浮島は、枯山水のような場所もあり、琴や雅楽っぽい音が鳴ったりして、もはや禅でも組むかという気分になってくる。癒しだ。
また、リンクが走ると武器が揺れてカチャカチャ音がするんだけど、装備しているものが木製の武器なら木の、金属製の武器なら金属の音になるといった作り込みの細かさが嬉しい。
バトルでは、雑魚敵戦ではちょっと盛り上がったBGMになり、ボス戦ではカッコ良い壮大な曲が流れる。
この緩急によって、ボス戦での気持ちの盛り上がりが倍増する。
総合評価Summary
5.0
物語の魅力
ゲームプレイの快適さ
ゲームとしての面白さ
芸術性
良いところ
プレイヤーの発想や試行錯誤が活きる
同じ舞台の続編にも関わらず新鮮
縦にも横にも広大
夢中になる物語
残念なところ
仲間との共闘時に
操作が煩雑になる時がある
オススメな人
自由度が高いゲームが好き
色んなアイデアを試したい
オープンワールドゲームが好き
前作にハマった
オススメではない人
ボリュームが大きすぎると圧倒されてしまう
自由度が高すぎると迷ってしまう
前作の途中で飽きた

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ゼルダの伝説 スカイウォードソード HD
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ゼルダの伝説 ティアーズオブザキングダム
常軌を逸している続編
空から地底まで、広大な世界を自由に冒険できるオープンワールドゲーム。
自分で武器も乗り物も自由に組み立てて作るといった世界丸ごと謎解きのようなシステムが魅力で、プレイヤーごとに正解を作ってしまう脅威の作り込みと面白さ。
物語とぎっしり用意されているやり込み要素にも夢中になり、冒険したい気持ちが止まらなくなる最高傑作。
ゼルダの伝説 ティアーズオブザキングダム
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